『テラスハウス』東京編:第5~8話にみる、春花と莉咲子の“バチバチな関係性”

ずっと一緒にいることで見えてくる

 「週に1回しか会えない人より、週7で会っている人のほうが色々知れるし、その人の良いところがだんだん見えてくる」(春花/第6話にて)。これは悪いところも含め様々な面を知れるようになるという意味の発言だと思うが、恋愛することにおいてテラスハウスで生活するメリットを春花はいつの日か話していた。そして春花だけでなく、こうした意見をみんなが漏らしだし、好意の対象に変遷が見られるようになったのが、最近の数話での出来事だ。流佳は香織への尊敬の念と興味を強め、翔平は春花の接し方に安心感と好意をもつようになる。香織にしても、唯一自分の悩みを話せる存在として、翔平への想いを強めてきたのかもしれない。長く接していると何もかもが見えてくるのだ。良いところも、そして悪いところも。そうすると、あの人とは絶対にわかりあえないという“差異”も、徐々に肥大化していく。

 ここで第8話終盤の出来事へと話を進めよう。他人(莉咲子)の口から、意中の相手(ケニー)に向かって自分(春花)の心情が伝えられる、あの悲劇的なシーン。発言の意図が不明で、ぜんっぜんわかりあえないことに驚いて、春花は思わず泣いてしまう。ただ実際のところ莉咲子は、「ケニーくんといると緊張する」と発した春花に対して「私は好きな人とどっか行くと緊張するよ~」とやんわり遠回しに応答しただけ、とも取れる場面。その結果全員が気まずくなってしまい、変な空気が流れて誰も発言できなくなってしまうという、誰が悪いとかではない問題のようにも見えた。苦しさを増幅させるのはむしろその後の会話の方にあるのではないか。春花と莉咲子の意見は徹底的にすれ違い、心と心は離れていく。

 わかりあえなさすぎて泣けてきてしまう、という経験。多くの人が共有できる感情なのかはわからないが、少なくとも筆者は似た経験を持ち合わせていたので、春花に少し共感してしまった。そういう気の合わない相手がいても、普段であれば遠ざけていたかもしれないが、ここはテラスハウス。気にくわない相手がいても、一緒に暮らさなければいけない。過去シーズンという前例が示しているように、大人のわかりあえなさというのは案外溝が深いもの。人と人がぶつかる瞬間を客観的に見られるのも、このコンテンツの醍醐味であるが、2人の関係性が今後どういう方向に向かっていくのか、気になるところだ。

 女子会で持ち上がった男子の消極性への不満を経て、男性陣のスピード感も増してくるのではないかと予想される今後の展開。ケニーをめぐるいざこざにも決着がつきそうだ。過去シリーズでも類を見ないほど恋愛への熱が強い東京編。現時点の恋の矢印を整理すると、【流佳→香織→翔平→春花→ケニー←莉咲子】というおもしろい状況になってきている。家族感の強かった軽井沢編(とくに最初のほう)とはまた異なる月9ドラマ的な恋愛模様の変遷に、第9話以降も心を踊らされるに違いない。「気になる」が「好き」のレベルに到達する瞬間を、ぜひ見せてほしい。

■原航平
1995年生まれ。ライター/編集。映画やドラマ、演劇などのカルチャーをこよなく愛する。テラスハウスは日々の癒し。Twitterブログ

■番組情報
『TERRACE HOUSE TOKYO 2019-2020』
2019年5月14日よりNetflixにて毎週火曜に新エピソード先行配信(4週に1週休止)
2019年6月11日よりFODにて毎週火曜深夜0時に配信予定(4週に1週休止)
2019年7月よりフジテレビにて、地上波放送予定
(c)フジテレビ/イースト・エンタテインメント

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