『テラスハウス』東京編:第5~8話にみる、春花と莉咲子の“バチバチな関係性”
水面下での攻防戦、衝突の予兆
第5話(あるいは第4話の終盤)を振り返るとまるで大昔の出来事かのようで驚いてしまうが、そこでは春花と莉咲子が流佳を取り合うという構図がたしかに存在していた。莉咲子がパルクールの練習場へと車で送ってほしいと流佳を誘えば、次の場面では春花が流佳に予定を聞き、クルマ屋さんへ行く約束を取りつけている。第8話終盤の“あの出来事”への助走段階にはすぎないものの、それなりに激しい水面下での争いが、流佳の取り合いによって展開されていたのだ。
しかし思い返してみると、春花も莉咲子も、流佳が好きだということを明言していたわけではない。春花の場合は「気になる」で、莉咲子の場合は「気があう」くらいが、実際のところだったのだろう。そうしたなかで、ふたり同時にして徐々に深まっていく、ケニーへの想い。好きな人には自分のことを聞いてもらいたくなるという莉咲子はケニーにパルクールと仕事との両立について相談し、一方の春花は、ケニーと話すのが一番緊張するーー要するに男性として意識してしまうと、第5話の時点で明らかにしている。春花に関しては自分で「他人のものがよく見えるタイプ」と言ってしまっているのでどうしても後追いであるように見えてしまうのだが。
彼女たちの感情が流佳からケニーへと向けられていたことに視聴者がはっきりと気づくのは、テラスハウス第1話の放送を6人がそろって鑑賞し、そのあと現状の心境を確認し合うという場面(第6話)でのことだった。香織が翔平を気になると発言したことも驚きだったが、それ以上に、2つのベクトルが同時に回れ右していたことが一番のサプライズに。そうした流れを経て、第6話終盤でのケニーをめぐる戦いの火蓋が切って落とされる。
臆面のない性格からやはり最初に仕掛けたのは莉咲子のほう。(偶然ではないだろうが)春花がいない隙にケニーとデートに行く約束を取りつけることに成功。それを受け、先手を取られたくなかった春花は香織に手伝ってもらいながら、すかさずケニーへとアタックする。屋上と1階を行き来するという、あの家を余すことなく使ったダイナミックな運動も後押ししてのことか、サスペンスドラマを見ているかのようなハラハラ感満載の展開を見せた、第6話のハイライト。水面下での誘い合いのあと、春花と莉咲子、ケニーの3人が屋上に取り残される瞬間の気まずさと恐ろしさと言ったら……。地鳴りすら聞こえる、崩壊への予兆に感じられた。