Momoチャレンジはデマだった? そして、あの“自殺ゲーム”にも新たな検証記事が……

「青い鯨」ゲームでさえも……

 以上のMomoチャレンジについて報じられる時、決まって言及される過去のゲームがあった。それは、ロシアで起こった「青い鯨」ゲームである。このゲームの仕組みはほぼMomoチャレンジと同じものなのだが、実際に自殺者も出ている。AFPが伝えたところによると、独立系メディア『ノーバヤ・ガゼータ』は2015年11月から2016年4月のあいだにおこった130件の自殺のうちに数十人は10代で、青い鯨ゲームの犠牲者であったと報じたのだ。そして、2016年11月、ゲームの首謀者とされるフィリップ・ブデイキン容疑者は逮捕され、最終的に有罪判決を受けた。

 しかし、イギリス国営メディアBBCは、2019年1月13日、同ゲームに関する検証記事を公開した。その記事では、 ノーバヤ・ガゼータの報道に使われた資料の信憑性が疑わしいとして、調査記事を執筆したGalina Mursalieva氏に直接取材した。取材された同氏は、記事で言及した130件の自殺の原因について、本当のところはよくわからないと答えたのだ。そして、同ゲームに関する記事を執筆したのは注意を喚起したかったから、とも言った。同氏はちょうどMomoチャレンジにおけるキム・カーダシアンの役回りを担った、というわけなのだ。

 BBCの検証記事を根拠として、フィリップ・ブデイキンは冤罪であると主張することはできない。オカルトをテーマにした音楽活動をしていた彼は、自殺教唆を含む反社会的な発言をしていたのは事実なのだ。その一方でBBCの記事は、10代の自殺という極めて難しい問題を一連の「青い鯨」ゲームだけが原因とするのは問題をあまりに単純化しすぎている、と述べて記事を結んでいる。

 以上のMomoチャレンジと青い鯨ゲームから得られる教訓があるとすれば、センセーショナルな報道とは諸刃の剣である、ということではないだろうか。善意からそうした記事を報じたとしても、時には結果的に社会に不安を広げることになってしまう。ましてや「裏取り」が不十分な場合は、拡散する過程で話が誇大になる可能性もある。そして、現在とはSNSを活用すれば誰でも「報道」できる時代である。Momoチャレンジの火種は、いつもどこかに潜んでいるのかも知れない。

■吉本幸記
テクノロジー系記事を執筆するフリーライター。VR/AR、AI関連の記事の執筆経験があるほか、テック系企業の動向を考察する記事も執筆している。Twitter:@kohkiyoshi

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「コラム」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる