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格闘ゲーム専門フォトグラファー・大須晶が語る、ゲーマーの群像 「やつらのカッコよさを伝えたい」

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 3D格闘ゲーム『バーチャファイター』シリーズのスタープレイヤーとして全国に名を轟かせ、現在はファイティングゲームシーンを鮮やかに切り取るフォトグラファーとしても活躍している、大須晶氏。クラウドファンディングにより予定額を大幅に上回る支援を受け、「Red Bull Gaming Sphere Tokyo」(東京都中野)にて、写真展『FIGHTING GAME COMMUNITY』を開催している。本来は2月いっぱいの予定だったが、好評を受け、会期は3月3日(日)まで延長。この週末も、心を震わせる格闘ゲーマーたちの写真を見ることができる。

 リアルサウンドでは、そんな大須氏を直撃。カメラに関心を持ったきっかけから、格闘ゲーマーを撮影する上での理念、eスポーツフォトグラファーを目指す人たちへのアドバイスまで、じっくり語ってもらった。(編集部)

コミュニティを知らなければ、いい写真は撮れない

ーーあらためて、『バーチャファイター』シリーズの強豪プレイヤーである大須さんが、ファイティングゲームシーンの写真を撮り始めた経緯から聞かせてください。

大須晶(以下、大須):1996年にソニーから「サイバーショット」(DSC-F1)というデジタルカメラが発売されたんです。35万画素で、内蔵メモリは4MB。写真は一番きれいな画質だと数十枚しか撮れなかった。今からすると考えられないスペックですが、フィルムを使わずに写真が好きなだけ撮れる、というのが画期的すぎて、買うしかないなと。もともとカメラに興味があったと言うより、とにかく最先端のガジェットが好きだったんですよね。それで、特にゲームシーンというわけではなく、ただ友達と遊んでいるときにスナップショットを撮っていました。

ーーなるほど。まさに友人という距離感で、何気ないシーンでもプレイヤーの心情が伝わってくる作品の原点は、そこにあるのかもしれませんね。そこから、さらに写真にのめり込んだの、どんなきっかけがあったのでしょう?

大須:あるとき、キヤノン「パワーショット」シリーズの、ちょっといいコンデジを買ったんです。それで、当時住んでいた京都の嵐山とか、さまざまな撮影スポットに行ってみたんですけど、それまでとはまったく違うクオリティの写真が撮れて、これが本当にうれしくて。そんななかで、東京で『GODSGARDEN #1』(2009年)という『ストリートファイターIV』のオフライン大会があると。それで、イベント運営に許可を取って、写真を撮らせてもらうことにしたんです。ただ、そのときは納得いく写真が撮れなかったんですよね。と言うのも、格闘ゲームの大会はどうしても会場が暗いので、コンデジではきれいに撮るのがどうしてもしんどい。雑誌で見ていたような、背景がうまくボケていて、人にフォーカスしたよなカッコいい写真がなかなか撮れなくて。


ーー友人でもある格闘ゲーマーたちを、カッコよく撮りたかった。

大須:そうです。もともと、僕が中心的にプレイしている『バーチャファイター』シリーズの界隈は、メーカーも早くからプレイヤーにフォーカスしていて、雑誌でも大きく取り上げられていたし、プロのカメラマンが入っていい写真を撮っていたんです。けれど、『ストリートファイター』をはじめとする2D格闘ゲームの業界では、プレイヤーはあくまで大会参加者、という感じで、写真もレポートの一環でしかないように見えました。しかも、『ストリートファイターIV』が出るまで、ゲームセンターでは同シリーズが冬の時代だった。マルチゲーマーなら、当時盛り上がっていた『バーチャファイター』シリーズや『ギルティギア』シリーズをプレイすればよかったのですが、特に『ストリートファイター』シリーズのプレイヤーは、カプコン作品しかプレイしない人が多かったので、すごいスキルや個性を持っているのに、表に出てこない時代が続いたんです。

ーープロゲーマーの代名詞的存在である梅原大吾さんも、ゲームから離れていました。

大須:そう。僕は『バーチャファイター』でチヤホヤしてもらっていましたが、めちゃくちゃカッコいい2D格闘ゲーマーの連中に陽の目が当たらないのが悔しくて。だから、『ストリートファイターIV』が出て盛り上がりつつあるタイミングで、やつらのカッコよさを写真で伝えたいと思ったんです。それで『GODSGARDEN #1』を撮ったんですけど、言ったように満足行く写真が撮れなかった。それで、ちゃんとした一眼レフを買ったんですよ。そうしたら、単焦点レンズを使うと、腕がなくても異次元の写真が撮れる(笑)。それで、肩慣らしに『バーチャファイター』シリーズの人気大会『ビートライブカップ』などで写真を撮り、再びカメラを持って臨んだ2011年の『GODSGARDEN#4』(競技タイトル『スーパーストリートファイターⅣ アーケードエディション』)では、自分が思ういい写真が撮れて。ああ、これは楽しいなと。別に使命感でやっていたわけでなく、基本的には楽しから続けてきた、という感じですね。

(C)Akira Ohsu

ーー確かに、当時はゲーム雑誌でも、あくまで記録としての写真が多かったと思います。そのなかで、大須さんのエモーショナルな写真は衝撃でした。

大須:自分は選手寄りの人間なので。写真を撮っている側がコミュニティのことを知らなければ、それはいい写真を撮るのはなかなか難しいですよね。メディアさんと違う写真が撮れるのは僕としても楽しかったです。

ーーシーンを知らなければ、プレイヤーやファンが盛り上がるタイミングもそうですし、誰と誰がどんな構図で写っているのがエモいのか、ということもなかなかわかりませんからね。ちなみに、大須さんが撮っていて楽しいプレイヤーはどんな人ですか?

大須:やっぱり人間くさいプレイヤーは楽しいですね。勝ったら喜ぶし、負けたら悲しむし、悩むときは思い切り悩む。逆に、勝っても負けてもずっとポーカーフェイスの人は難しいです。ただ、例えばハイタニ(攻撃的なプレイスタイルで人気のプロゲーマー。Fudoh所属)はポーカーフェイスだけれど、写真を撮っていると、特に目に内面がにじみ出てくることがあって。それはそれで、いい瞬間を収められたときはうれしいですね。

ーーそれも大須さんがプレイヤーの心理を知り、また実際に交友関係もあるからこそわかることかもしれませんね。

大須:自分が撮っていて一番楽しいのは、団体戦なんですよ。それこそ、普段は超ポーカーフェイスで何の感情も出さないプレイヤーが、団体戦だと全然違う表情を見せるんです。個人戦だと喜びも悔しさもひとりのものだけど、団体戦では3人とか、5人でそれを共有するから、何倍にも感情が増幅する。特に、仲間同士で喜び合っているシーンは、めちゃくちゃ幸せな写真になりますね。今年は『ストリートファイターV』がアーケードで稼働開始しますし、ゲームセンターで団体戦が行なわれる機会も増えると思うので、そのときに写真を撮るのがたのしみです。

(c)Akira Ohsu

ーーときどさんの『EVO』(毎年夏、ラスベガスで行なわれる世界最大級の格闘ゲーム大会)での優勝シーンを始め、有名プレイヤーの名シーンを収めた写真も胸を打ちますが、観客やまだ無名のプレイヤーの写真も、シーンの面白さ、熱気が伝わってきて素晴らしいと思います。

大須:去年の『TOPANGAチャリティーカップ』もそうですが、特に『ストV』がテレビも含めたメディアに度々取り上げられて、新規のプレイヤーが増えていますよね。そのなかで、まだ勝ちに慣れていない若いプレイヤーたちが団体戦で盛り上がっているシーンは、いま撮っていて一番楽しいです。

      

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