空間演出ユニットhuez「3.5次元のライブ演出」 tofubeats『RUN』release partyの仕掛けを解説(後編)

 tofubeats『RUN』releas party 演出解説【後編】

技能集団というチームの特色

 YAVAOの言うとおり、”huezの特異性はステージ上で光っているものを一括で管理できること” だと思います。そしてhuezという一つの作家性で完全に統一したプランニングができる。それが明らかに特異だと思います。特にステージ業界だと。

 普通huezのなかで持っている技術って、全部バラバラのチームの全部バラバラの技術なんですね。照明屋さんは照明屋さん、というように、映像屋さん、VJ屋さん、いわゆる映像出力屋さんもいるし、システム屋さんもいる。それにレーザーも、電飾も、本来なら別々に入るのが、huezという空間演出チームではすべて一括化されている。

 空間の演出をするときの表現方法として、映像だけに絞ってみても、LEDディスプレイか、普通のテレビモニターか、それともプロジェクターなのか、あるいは透過スクリーンなのか、プロジェクションマッピングなのか、というのだけでも見え方は全然違ってきます。それを選ぶということ自体が、演出の一要素だったり、プランニングだったりするわけですね。

 huezは、そもそも「フレームの変更」というチームのコンセプトが下地にあって、今回だと、映像の出力の仕方について考える、そして面白い出力の仕方をしてみよう、というのが当然出てくる。なるべく、ある機材を、違った使い方してみない? というノリの部分が、ライブにおいて、基本1個は絶対に出てくるから、それは珍しいなと思います。

 特にYAVAOは、出力のさせ方を変更する、というのにすごく特化している人間で、それがそもそも面白いのと、huezは特化した発想や能力がある人を面白がって、僕やYAVAOが集めているので、そういった提案が必然的に強くなるのかなと思います。しかも近い距離で、お互いに経験値を積んでいく。するとメチエが溜まるから、だんだん速度も上がっていくという。そういう意味で、そこはすごく特異性だと思いますね。

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照明置き 電源 信号図面 (上) / 照明吊り図面 (下) 

ライブ演出において、演出家とは何者か?

 いまhuezのなかの演出家は基本的に僕一人だけど、僕は自分の作家性を出す演出と、プランナーを立てて、プランのクオリティを上げるための調整をする演出の両方が取り扱えるので、チームとしても、さまざまな種類の演出プランが出せる、というのが面白い部分かなと思います。

 プランナーからプランをもらったとき、まずチェックするのは“意図”です。何を立てたいのか、何を見せたいのかを掌握する。細かさでいうと、まず立てたいアイコンが何なのか──アーティストを立てたいのか、空間を立てたいのか、お客さんを立てたいのか、そのなかでも、楽曲の音に対してどう立てたいのかとか、それでその色味が合っているのかどうか、ということをチェックします。

 今回の場合は、もらったプランを、より鮮明にというか、よりきめ細やかに実現するために僕が言ったのは、YAMAGEのピークの「THIS CITY」のプランについて、周りがどれだけ引くべきかを指示をしました。具体的には、照明で、後ろから客席に向かって、逆光になる照明をドンって出す、というのをよく決め打ちで使うんですけど、それを一切使わずに、全部YAMAGEにしてくれ、という指示をしました。そうするとYAMAGEがよりピークで立つようになるからです。

 でもひとつのセクションを立てるとき、ほかの要素を全部ゼロにするわけにはいかないんです。例えば、ステージ上に乗せられる要素を10だとした場合、レーザーを10にして、それ以外は何も見せないというのはあり得ません。最低限照明はついてなきゃいけないし、映像も最低限は出なきゃいけなかったりすることがある。だから、レーザーを7で、ほかを3にするのか、それとも、一瞬だけ10 : 0にするのか、というところのさじ加減を慎重にとるんですね。

 プランニングを出してもらったとき、それを僕は演出家として受け取っています。そのプランが現場で成立するかどうかの一線を引くことが演出なんだと、僕は思っています。

(構成=渋都市)

■ tofubeats (トーフビーツ)
1990年生まれ、神戸在住。在学中からインターネット上で活動を行い、2013年にスマッシュヒットした “水星 feat.オノマトペ大臣“ を収録したアルバム『lost decade』を自主制作で発売。同年『Don't Stop The Music』でメジャーデビュー。森高千里、藤井隆、DreamAmi等をゲストに迎えて楽曲を制作し、以降、アルバム『First Album』(14年) 、『POSITIVE』(15年) をリリース。2017年には新曲 “SHOPPINGMALL” “BABY” を連続配信し、アルバム『FANTASY CLUB』をリリース。SMAP、平井堅、Crystal Kayのリミックスやゆずのサウンドプロデュースのほか、BGM制作、CM音楽等のクライアントワークや数誌でのコラム連載等、活動は多岐にわたる。
https://tofubeats.com/

■ huez (ヒューズ)
2011年結成。アート、演劇、工学、映像、身体表現、デザインなど、様々なバックグラウンドをもつメンバーからなる空間演出ユニット。「フレームの変更」をコンセプトに、レーザーやLEDなどの特殊照明によるライブ演出から、MVやガジェットの制作まで、アーティストやオーガナイザーと同じ目線に立ち、その世界観や物語を重視する領域横断的な演出を強みとする。
http://huez.shibucity.com/
https://twitter.com/huez_official

■ としくに
ステージディレクター・演出家。渋都市株式会社代表取締役市長。演劇領域での舞台監督や、メディアパフォーマンスの「インターネットおじさん」などの活動を経て、2016年に渋都市株式会社を設立し、代表取締役に就任。「笑い」と「ホラー」をテーマとして、既存の枠組みを越えた映像・空間演出のディレクションを手掛ける。

■ YAVAO / 小池将樹
VJ・LJ・ステージエンジニア。「身体的感覚の混乱」をキーワードに、デジタルデバイスやゲームシステムの企画・制作をおこなう。2011年にhuezを立ち上げた人物でもあり、現在は、huezのライブ演出の中心人物として、レーザーやLEDなどの特殊照明のプランニングおよびエンジニアリングを担当している。

おまけ:さっぱりぱりぱりぱりじぇんぬ

(Drawing=Sanae Sugai, Text=としくに)

■ Sanae Sugai
https://www.instagram.com/sugaisanae/

 

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