『ういらぶ。』『銀魂』『HIGH&LOW』......増加するスピンオフ配信作品の楽しみ方とは?

 これらを比較すると、ひとくちに「スピンオフドラマ」と括っても、それぞれに意味合いが異なっていることがわかる。『銀魂』はもっぱら作品のファンに向けたおまけ的な要素であり、『ちはやふる』は映画を観るための予備知識としての役割を果たす。その点で、今回の『ういらぶ。』のように映画本編での主人公のすぐ近くにいる人物にフォーカスを当てて、別の視点から作品の世界観を裏付けていくタイプは、5月に公開された『恋は雨上がりのように』のスピンオフ『恋は雨上がりのように〜ポケットの中の願いごと〜』と重なる部分があるといえよう。

『恋は雨上がりのように』(C)2018映画「恋は雨上がりのように」製作委員会 (C)2014 眉月じゅん/小学館

 いずれにしても、映画の世界観をより豊かにするスピンオフが配信ドラマとして制作される背景にあるのは、それだけ動画配信サービスというものが主流になっているからに他ならない。ひとつひとつのエピソードに時間の枠が設けられていないことが奏功し、気楽に作品の世界に入り込める短い物語を展開できる。それをきっかけに劇場に足を運んでもらうというのももちろん、すでに本編映画を観た人にとっても、今度は異なる視点で作品を観ることができるだけに、リピーターを生み出すという重要な役目も果たしているのだ。

 とはいえ、この『ういらぶ。』のスピンオフドラマは、映画本編中で不器用すぎる凛と優羽を優しく見守るクールな暦とオカンキャラの蛍太の、映画では描ききれなかった魅力が発揮されているだけに、一度映画を観てから観ることが望ましいだろう。映画劇中ではニュアンスを感じさせるに留まった暦と和真(伊藤健太郎)の関係(原作では描かれているが)や、蛍太の恋愛観と幼なじみ4人組の将来についての想い。すべて観ても30分にも満たない中に、集約しきれないほどのドラマ性が込められているといえるだろう。

■久保田和馬
映画ライター。1989年生まれ。現在、監督業準備中。好きな映画監督は、アラン・レネ、アンドレ・カイヤット、ジャン=ガブリエル・アルビコッコ、ルイス・ブニュエル、ロベール・ブレッソンなど。Twitter

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