バーチャルYouTuberは音楽を“見せられるか” 「ときのそら」の新たな挑戦と可能性
例えばギターを「運指再現技術」で再現できるかといえばまず無理だ。何故ならギターはMIDI情報の入力機器ではないからである。ギターは弦楽器であり、ピアノの鍵盤のように「情報をソフトウェアに伝えること」ができない。やろうと思えばできなくはないが、その場合鳴らされた"音そのもの"を認識してMIDIに変換するというプロセスが必要になり、そしてこの方法では和音(音が複数鳴っている状態)を認識できない。さらに言えばギターの指板上には「全く同じ音がなる場所」があるため運指の対応は難しくなるだろう。同様の理由でベースなどの弦を振動させる楽器は全て厳しい。もしどうしても「運指再現技術」を用いてギターやベースの運指を再現するなら、指板の至る所に感知センサーでもつけなければいけなくなってしまう。次点で希望があるとすればドラムなど打楽器の類だが、ドラムは腕に加え足も使う上に動きが大きい。要するに誤魔化しがあまり効かない。違和感を拭うのは難しいと思われる。
こうして見ると、むしろピアノこそがバーチャルYouTuberにとって最も演奏しやすい楽器だったことがわかる。しかしMIDI規格を応用した「運指再現技術」は筆者にとって目から鱗であった。何故こんなことに気がつかなかったのだろう、と思うほどに。ギターやベースの表現も、存外、気がつけばあっさりとクリアされていくものなのかもしれない。
■じーえふ
1995年生まれ。大学中退フリーター。バーチャルYouTuberに真剣。