Aphex Twin「T69 Collapse」MVはどう作られた? 映像作家・WEIRDCOREに聞く
Aphex Twinが9月14日、最新作『Collapse EP』を世界同時リリースし、話題を呼んでいる。特に、同作のリリースに先駆けて公開された収録曲「T69 Collapse」は、その映像表現も斬新であり、大きな注目を集めた。今回、リアルサウンド テック編集部では、MVを手がけたクリエイター・WEIRDCOREにインタビューを行い、同作のコンセプトや制作プロセス、映像表現の可能性についてまで様々な話を聞いた。(編集部)
「T69 Collapse」MVができるまで
ーー「T69 Collapse」のMVはこれまでに観たことのない種類の映像作品で、非常に衝撃的でした。いったいどんなコンセプトでこの映像を制作したのでしょうか?
WEIRDCORE:まずコンセプトに関しては、何をしたいかがハッキリするまでにだいぶ時間がかかったんだ。去年の『FUJI ROCK FESTIVAL '17』で僕たちが日本にいる時、ショーの後に東京に戻って、その時にリチャード(リチャード・D・ジェームス a.k.a. Aphex Twin)がビデオの話をオファーしてきて、そこからシミュレーション仮説(人類が生活しているこの世界は、すべてシミュレーテッドリアリティであるとする仮説)の話になった。リチャードがその仮説が大好きでね。それで、映像で試してみてどうなるか様子をみてみようということになったんだ。僕はそれが天地創造説に繋がると思った。そして、結果的に最初がAI、次のパートがシミュレーションの崩壊、そして3つ目のパートでシミュレーションが次のレベルへと進むといった流れになったんだ。
もう一つ僕が挑戦したかったのは、すでにあるリチャードのビデオのアップデート・バージョンを作ること。彼のビデオに「On」というのがあるんだけれど、あのコラージュ感をモダンにしたものを作りたかったんだ。あとは、Autechreの「Gantz Graf」のビデオにインスパイアされたから、コラージュのモダンバージョンと「Gantz Graf」の中間のような作品を作りたかった。さらに、そこにシミュレーション仮説が加わったもの(笑)。難しいけど、それがコンセプトだね。
だから、結構時間がかかったんだ。彼から去年、日本で依頼されて、出来上がったのは一年後だからね。それには一つ理由があって、普通は、アーティストがレーベルにトラックを渡して、レーベルがトラックを選んでこっちに渡してくるんだけれど、今回の場合は、リチャードが直接自分にトラックを渡してきて、レーベルを通さないまま予算の話もせず計画だけが進み、去年の12月になって、僕が「このビデオは、結局どうなるんだい? 締め切りとかはあるの?」と〈Warp Records〉に聞いたんだ。そしたら、〈Warp Records〉は何も知らなくてさ(笑)。その時、リチャードは彼らに音源さえ送っていなかったんだ。そこから予算が決まり、締め切りが決まり、ビデオが作品になった。それまではトラックを聴いたことがあるのは僕だけだったんだ。
ーー制作過程に関しても詳しく教えてください。
WEIRDCORE:さっき「On」のアップデート・バージョンを作りたかったと話したけど、あんな感じで3Dのアニメのようなものを作りたかった。だから、3Dスキャンを使って、そこにあのビデオでみられる合成のテクスチャを加えていったんだ(weirdcore.tvの最初に出てくるpress picのようなテクスチャ)。あれは楽しかったね。今後は、あのテクニックをもっと探求して次のレベルに進んでいきたいと思っているよ。
ーー使ったソフトウェアは?
WEIRDCORE:フォトグラフィのために使ったのはAgisoft PhotoScan、置き換えのテクスチャに使ったのはSubstance Designer、それからCINEMA 4Dと3D。Octane Render、Redshift、Cycles 4Dをレンダリングエンジンのために使った。あと合成に使ったのはAfter Effects。そのほかにもプラグインとか色々あるけど、主に使ったのはこんな感じ。