サバイバルRPG『ザンキゼロ』制作陣が明かす“語りすぎない美学” 寺澤善徳&菅原隆行インタビュー
善人、悪人というイメージを固定化しないために
ーーやりすぎに思えるくらいドロドロしたエピソードもありますが、全体としてイノセントというか、ピュアなイメージが伝わってきます。秘密基地を作るような、懐かしい楽しさもありますね。
菅原:大人の『ぼくのなつやすみ』(ソニー・コンピュータエンタテインメント)というか。その割りには、グロい敵が出てきますけどね(笑)。
寺澤:あと、もともと彼らを取り巻いていた環境はドロドロしているんだけれど、彼ら自身はどちらかといえば純粋で、悪意があるわけではなかったりもして。
ーー取り巻く世界が取っ払われたときに、純粋さが際立つというか。
寺澤:そうですね。だから、いろいろありますけど、物語が終わるころには、みんなキャラクターのことを好きになってくれるんじゃないかと思います。
ーーグロテスクな表現もありますが、描かれている世界は明るく美しいものになっていて、そのギャップも面白いところです。
寺澤:でも、ギャップを作りすぎたかもしれないですね(笑)。「買ってみたらホラーだった!」「夜中にプレイできない!」という声もいただいていて。最初は爽やかなビジュアルしか出ていなかったので。爽やかで明るい無人島生活、というイメージが強かったんだと思います。
菅原:自分たちでは、そこまでホラー感があるとは思っていませんでした。むしろ、もっと怖くしたかったくらい(笑)。
ーー『ダンガンロンパ』に携わった人たちが作っている、ということをもう少し認識できればよかったですね(笑)。エンディングも含めて、プレイヤーの解釈に任されている部分も大きいと思いました。
菅原:そうですね。最後はいろいろと解釈できたらいいなと思いましたし、途中も、あまり全てを語りすぎないようにしたいなと。語りすぎると、悪人は悪人、善人は善人というイメージが固まってしまいますし、人間って、そんなに割り切れるものでもないじゃないですか。今回は大人たちの物語ということもあって、大人らしい嘘というか、煙に巻くような部分があってもいいのではと。
寺澤;僕らのゲームは、想像の余地を残したいんですよね。今の世の中、とにかくわからないことが嫌で、答えや説明を求めたがる、という風潮があると思うのですが、想像の余地があって、そのなかで自分なりの答えを導き出す、というのは生きて行く上でとても大切なことだったりしますよね。『ダンガンロンパ』シリーズもそういうふうに作っていて、そこはプラスに感じてもらえたらうれしいなと思います。
ーー本作はキャラクターも多いですし、人によっては「リフォームを頑張ってくれたキャラクター」「先頭に立って戦ってくれたキャラクター」と、登場人物の特性も変わると思います。
寺澤;そうなんですよ。ちなみに、強いキャラを前衛にする人がけっこういるみたいですが、僕は固定しないんですよね。
菅原:いろんなプレイスタイル、いろんな攻略法があるほうが楽しいかなと。
NGナシの「エクステンドTV」
ーーそして触れなければいけないのは、登場人物たちの行動を決める「エクステンドTV」です。MCを務めるマスコット・ミライを野沢雅子さんが、アシスタントを務める少年・テラシマ ショウを中尾隆聖さんが演じており、発売前から「孫悟空とフリーザだ!」と話題になっていました。
菅原:これは寺澤マジックですね(笑)。
寺澤:『ダンガンロンパ』のモノクマ(※同作のマスコット的キャラクター。初代CVを大山のぶ代が担当した)の反響もあり、同じようにさまざまなキャスティングを考えたなかで、一番ユーザーが喜んでくれそうで、面白くしていただけそうな方を選びました。オファーをしたら、快諾していただけたという感じです。ぶっ飛んだ内容ですが、お二方ともノリノリで演じてくださって(笑)。ちなみに、収録に来られるまで、お互いに演じるキャラクターは逆だと思われていたみたいです。
ーーネタバレは避けますが、ものすごいやりすぎ感、悪ノリ感があるシーンも多いですね。
寺澤:事前に内部で「これはやめたほうがいいね」というラインはもちろんあるんですけど、基本的にNGはなく、やりたいことは全てやっていただいた、という感じです。それならもっといけたね、という感覚もあったり(笑)。
菅原:本当は、もっと直したい部分もあったんですけどね。でも、あれくらいでちょうどよかったかなと。