Spotifyの“ディスカバープレイリスト”から見えてくるものは? 柴那典が「My Summer Rewind」含め検証してみた
「Daily Mix」も、とても有用だ。こちらは自分が普段聴いている聴取履歴をもとに、その嗜好を反映してジャンルや雰囲気が近いリコメンドが自動生成されるエンドレスのプレイリストである。
こちらのサービスでは最大6個のオリジナルプレイリストが生成されるのだが、これを見ていると、普段バラバラに聴いている楽曲が、ジャンルや文脈によってチャンネルごとに自動でまとめられるような感がある。それを聴きながらハートマークやストップマークをタップしていくことで、チャンネルをより自分好みに調整していくこともできる。
先日には「My Summer Rewind」というプレイリストも提供された。これも聴取履歴に基づくプレイリストで、リスナーがSpotifyに登録してから最も多く再生した夏の定番曲が集められている。
昨年末には「My トップソング2017」というプレイリストも提供された。これは一年間の聴取回数に基づくプレイリストで、これも事後的に自分の「好き」がわかってくるタイプのものだ。(参考: https://open.spotify.com/user/spotify/playlist/37i9dQZF1E9HHkIqrGxIhD )
こうしたAIによる自動生成のプレイリストに加えて、自分で好きな曲をまとめたプレイリストを作っておくと、それに基づくおすすめの楽曲を知ることができるというサービスもある。
ここ数カ月、筆者はどこから頼まれるでもなく個人的に「We are not alone, but so lonely」と銘打ったプレイリストを作っていて、新曲を中心にメランコリックで耽溺できるような楽曲をまとめている。
そうすると、プレイリストの作成画面に「このプレイリスト内の曲をもとにしたおすすめ」が表示されるようになる。おそらくこれも協調フィルタリングとディープラーニングを活用したリコメンデーションだろう。この精度が意外に高く、ここから知った曲も少なくない。
ストリーミングサービスが前提になった世界では、音楽との付き合い方、向き合い方が、知らないうちに変わってきている。
そのことは、実は「自分の嗜好を再帰的に知る」という、とても深く新しい体験に繋がっているのではないかと思うのだ。
■柴 那典
1976年神奈川県生まれ。ライター、編集者。音楽ジャーナリスト。出版社ロッキング・オンを経て独立。ブログ「日々の音色とことば:」/Twitter