Apple Music、なぜアメリカでSpotifyを抜いた? 音楽の聞き方から考える、両サービスの特性

 米国のApple Music有料会員数がSpotifyを上回ったことを、7月5日に米メディア『Digital Music News』などが報じた。米国では近年、Spotifyがシェア1位の座を占めていたが、ここにきて初めてApple Musicが逆転した形だ。

 日本では、かねてより有料会員数はSpotifyに比べApple Musicの方が多かった。しかし、2017年のICT総研の調査によると、国内で最も有料会員数が増えたのはSpotifyであるとのこと(参照)。さらに、雑誌『POPEYE』がSpotifyと提携して「ぼくの好きな音楽。」特集を行うなど、国内メディアでも取り上げられることが増えており、改めて注目が集まっていることが伺える。

 現在、Apple MusicとSpotify、それぞれのサービスにはどんな特性があるのか。そのユーザビリティを探るべく、Apple Musicがアメリカでシェア1位になった理由を、音楽サブスクリプションサービスに詳しいデジタル音楽ジャーナリストのジェイ・コウガミ氏に話を聞いた。

「Spotifyが世界最大の利用者数の音楽サブスクリプションサービスに成長した背景には、いち早く世界各国に拡大させた海外戦略と、フリーと有料両方のオプションを提供したフリーミアム戦略が大きな要因でした。米国では、ラジオ型音楽ストリーミングサービスのPandoraなどの競合がありましたが、Spotifyは音楽ファンに向けて充実したサービスを展開し、アメリカの特殊なマーケットでも勝ち抜いてきました。こうした中でApple MusicがSpotifyを米国で追い抜くほど成長した理由は2つ考えられます。

 1つはサービス開始以降、アメリカ人向きなアーティストの新作プロモーションをサービス全体で行ってきた効果が出てきたことです。Apple Musicでは、ヒップホップなど昨今の音楽シーンで話題になるジャンルや、コアなファン層を持つアーティストの最新作を紹介することを強みとして成長してきました。今年では、ドレイクやザ・ウィークエンド、J・コールなどのヒット作がその代表例です。そのため、米国音楽カルチャーのファン層を取り込み、利用者へコンバージョンできたことがSpotifyを抜いたとされる成長要因だと予想されます。

 もう一つの成長要因として、Apple Musicは今年3月から、最新MVやMVのプレイリストが見れるように動画フレンドリーな仕様を導入したことも考えられます。Spotifyは今も動画を配信していませんので、動画配信もApple Musicのユーザーの利用拡大に貢献したのでは」

 一方、日本でSpotify利用者数が増えている理由については、「日本ではSpotifyが広告を使ってフリーオプションをアピールしていることが利用者増加につながったのでは」と予想。日本と米国の音楽の聴き方についてこう述べた。

「日本と米国の違いは、米国では話題性あるアーティストの作品がリリースされた瞬間に、Twitterでトレンド入りするほど瞬間的に聴かれる傾向が強くなっています。日本では、人気のあるアーティストの作品がいきなりサブスクリプションサービスから話題を作ることはまだ起きにくいです。最新作のリリースをリアルタイムで楽しんでいるのが米国の聴き方になってきています」

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