Instagramが動画配信アプリ『IGTV』をリリース 「縦長」の動画をテレビ感覚で見る新スタイルは定着するか

 それでは、IGTVの今後の課題とはなんだろうか。ローンチしてから現在まで、IGTVを使用してみて感じたのは、参入するハードルの高さと、スマートフォンで長編動画を見るのが意外と疲れるということだ。

 ストーリー機能はその場で撮影した動画や写真に簡単に文字を打ち込んだり、絵やスタンプでデコレーションできたことが魅力である。専門知識などなくても誰でも気軽に友達と日常を共有することができ、機能が追加された当日から、多くの一般ユーザーが使いこなしていた。「試しにやってみるか」という感覚で誰でも参加できたのが、ここまで普及した大きな理由だろう。一方、IGTVはカメラロールにある動画を投稿することはできるのだが、オシャレなフィルターやデコレーションできる機能があるわけではない。目の前の日常を切り取るためではなく、事前にちゃんと準備した動画を投稿するためのアプリなのだ。これによって、一般人が投稿するハードルは上がる。

 もちろんそれは意図的であり、一般人よりクリエイターや企業が多く投稿したほうが高クオリティな動画が増え、IGTVの狙い通りテレビに変わるエンターテイメントになれるのかもしれない。しかしそれゆえに周りにIGTVを使いこなす人が増えるのにも相当時間がかかりそうだ。「友達がやってるから」という軽い理由で見るストーリーや、目的の動画があるからアクセスするYoutubeに比べると、どうしてもIGTVを起動するのは億劫に感じてしまいそうだ。

 そして最長1時間の動画まで投稿できるIGTVだが、長い動画の需要がどこまであるのかも今後の注目点である。始終スマートフォンを眺めてはいても、ひとつのアプリに長く留まらないスピード感のある若者に、テレビのように時間を忘れさせ、IGTVを見続けさせることができるのか。TV番組、映画・ドラマなみに資金を投じた、惹き込まれるコンテンツがIGTVに増えたら解決なのかもしれない。しかしIGTVに本格的に参入する、質の高いクリエイターや企業を増やすには、やはりマネタイズの仕組みが必要になってくる。現在IGTVは広告表示などは一切ないのだが、今後なんかしらの形で収入を得られるようにするとCEOのKevinは言及している。

 IGTVはローンチしてさっそく国内外の様々な著名人がチャンネルを作成し動画を投稿している。日本では、渡辺直美や木下優樹菜、ひょっこりはんなどの芸能人や様々なインフルエンサーがIGTVでファンに向けた動画が配信しはじめ、海外ではニュース番組、料理番組、ゲームショウなど様々な番組が登場している。今後もIGTVを使いこなす有名人や企業が増え、縦長の動画をスマホでザッピングする光景が当たり前になるのか、興味は尽きない。

■小林一真
1995年生まれの上智国際教養学部学生。インディーエモバンドBearwearのボーカル。たまにライブカメラマン。就職先探し中 Twitter

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