黒田隆憲の楽器・機材キュレーション

自分の声から生活音まで……サンプリング機能で“世界に一つの音”が作れるガジェット楽器たち

microGranny

 アート集団・STANDUINOのメンバーが立ち上げた、ハンドメイド電子楽器のブランド「Bastl Instruments」。同ブランドから発売された、モノフォニックのグラニュラーサンプラー「microGranny」もユニーク。microSDカードからのWAVファイルを再生し、グラニュラーアルゴリズム(サンプルを細かく切り刻み、様々な方法で再生するアルゴリズム)やスタート/エンドポイント、 サンプルレート、クラッシュ、エンベロープ(アタック、リリース)などを調整しながら作り込む。ガジェットらしいチープな音がフェティシズムをそそること必至。MIDI入力を装備しているので、外部MIDI機器からの操作も可能だ。

Organelle

 そして最後に、NYブルックリンはブッシュウィックに工房を持つCritter & Guitariから2016年に発売された、「Organelle」を紹介。同メーカーの人気シンセ「Pocket Piano」と同じボタン式鍵盤を採用した、オシャレで可愛らしいフォルム。初期状態でもシンセサイザーやドラムマシンとして楽しめるが、あらたな「パッチ」(Pure Data パッチ・プログラム)を読み込むことで、全く異なる楽器へと変身させられるのが最大の特徴だ。マイクを本体に接続しレコーディングすればサンプラーになり、ギターを接続すればエフェクターとしても威力を発揮。ガジェット鍵盤楽器の域を超えたポータブルハードウェアといえよう。

 なお、パッチはCritter & Guitariのサイトからダウンロードできる。随時、新しいパッチが追加されているので、好みの楽器にカスタマイズして楽しめるのだ。

 日常に溢れる様々な音や、自分の声を加工することによって、世界でたった一つの音色を作り出せるのがサンプラーの醍醐味。ガジェット感覚で、気軽にサンプリング機能を楽しんでみてほしい。

■黒田隆憲
ライター、カメラマン、DJ。90年代後半にロックバンドCOKEBERRYでメジャー・デビュー。山下達郎の『サンデー・ソングブック』で紹介され話題に。ライターとしては、スタジオワークの経験を活かし、楽器や機材に精通した文章に定評がある。2013年には、世界で唯一の「マイ・ブラッディ・ヴァレンタイン公認カメラマン」として世界各地で撮影をおこなった。主な共著に『シューゲイザー・ディスクガイド』『ビートルズの遺伝子ディスクガイド』、著著に『プライベート・スタジオ作曲術』『マイ・ブラッディ・ヴァレンタインこそはすべて』『メロディがひらめくとき』など。

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