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キズナアイ、ミケーラ・スーサ……バーチャルインフルエンサーが存在感を放つ理由

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 先日、4月1日はエイプリルフール。誰もが子供の頃から、嘘をつくことは良くないことだと当たり前のモラルとしてそう教わってきてはいるが、エイプリルフールだけは特別だ。とはいえ、ここ最近の各企業が嘘に躍起になる姿は愉快でもあり、滑稽でもある。しかしクリエイティビティとは虚構や妄想、嘘の連続。世界にはそんなクリエイティブという名前の「嘘」で溢れている。あらゆる創作は「空想」「架空」が生み出した大きな産物であり、そしてそれらの創作物を支えてきたのは間違いなくテクノロジーの発展だ。

存在しないファッションモデル、ミケーラ

 ブラジルとスペインのハーフとして生まれ、ロサンゼルスで暮らす「ミケーラ・スーサ」は感度の高いミレニアル世代の女の子だ。ファッションモデルとして活躍し、Instagramでは90万人近いフォロワー数を誇る彼女は実のところ、この世に存在しない。ミケーラはCGで製作された世界で初めてのバーチャルインフルエンサー。彼女は「PRADA」や「DIESEL」といった有名ブランドの衣装を纏い、Instagramの中で実在するファッションモデルと同じようにアンニュイな表情でポーズを決める。その姿はデジタルアートだと言われなければほとんど気がつかないほど精巧だ。

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 そしてもう一人、ミケーラのようにCGを駆使して作られた架空の黒人女性モデル「シュウドウ」は、一人の男性が独学で3DCGを学び、フォロワーを驚嘆させるほどリアルな虚構を作り上げている。ミケーラやシュウドウの登場が表すのは、実物と区別がつかなくなるほどのリアルな3DCG技術が、個人レベルでも手に入るようになったテクノロジーの進歩。そして、誰もが幾重にも重ねたフィルタを駆使し、光を操ることで自らを偽ることが容易になったInstagram時代への皮肉にも思える。

Flamingo 👛🎀🌸👄 . By @cjw.photo . . #3dart

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 生身の人間が、アンリアルな世界観を作り上げることに必死になる一方で、ミケーラやシュウドウはリアルであることを追求する。実像のない架空の存在である彼女たちが、誰よりもリアルに近づくことに「現実」と「虚構」がぐにゃりと捻れてしまっているような気さえする。テクノロジーの発展はそんな本来のスタンスさえ歪めてしまうくらいに多くの影響を与えている。

「バーチャルユーチューバー」という新世代のポップアイコン

 YouTuberという言葉が生まれ、そして浸透するまでにそう時間はかからなかった。特にスマホ世代であれば当たり前のようにYouTuberが投稿する動画を見て、可処分時間を費やす。YouTuberは時にバラエティのような娯楽を提供し、コマーシャルのように企業のプロモーションに貢献する。そんなYouTuberに新しい兆しが見えたのは2016年、「キズナアイ」という3DCG製のYouTuberの登場だった。キズナアイはこれまで生身のYouTuberが行ってきた配信を可能な範囲でモデリングされたCGの姿でトライする。ただ、全て同じように行うのは不可能なのでゲーム配信実況などに留まるが、キズナアイは3Dモデリングという新規性とそのかわいらしいビジュアルから瞬く間にYouTubeを代表するポップアイコンになっていった。

自己紹介】はじめまして!キズナアイですლ(´ڡ`ლ)

 現在、チャンネル登録者数は170万人以上、Twitterのフォロワーも40万人に迫る勢いだ。YouTubeにはそんなキズナアイに続くように、「ミライアカリ」「シロ」「輝夜月」など現在も多くのバーチャルユーチューバーが生まれている。これらのバーチャルユーチューバーの登場もテクノロジーによって「架空の存在」を生み出すことが容易になったからに他ならない。

いそうでいない「架空の人物」というエンタメ

 一方で、リアルな人物であるにもかかわらず、全く存在しないが、いないわけでもなさそうなキャラクターを演じるという、ある種の「嘘」を一つのコンテンツに落とし込んだのが、お笑い芸人のロバート・秋山竜次だ。彼が手がけるクリエイターズファイルという企画では、子役から清純派女優、ファッションモデルにバリスタ、宇宙飛行士にロックバンドのミュージシャンまでいそうでいない様々な職種で活躍する架空の人物に扮し、架空のインタビューを受けるという設定だが、そのほとんどすべてがアドリブで進行していき、一癖も二癖もあるキャラクターの絶妙なハマりっぷりが話題となっている。

ロバート秋山honto+連載「クリエイターズ・ファイル」第6回<トータル・ファッション・アドバイザー YOKO FUCHIGAMI>インタビュー映像1/3

 この「架空の人物へのインタビュー」というコンテンツがこれほどまで受け入れられたのは、前述までの3DCGなどの技術的な部分でのテクノロジーではなく、SNSという情報の流通網によって伝播していくように広まったおかげと言える。ほぼリアルタイムで進行するTwitterなどのSNSでは一つの強烈なコンテンツが拡散していくスピードはとてつもなく早い。それに加えて、「架空」というフォーマットは、“存在すること”が前提となっている世界において、「実は存在しない」というギャップの分だけ触れる人々にとって大きなインパクトを与える。そのため、SNSでのバイラルにはもってこいのコンテンツとして設計されている。

藤原采①(清純派女優)「透明すぎて目視できない。17歳」スクリーンでの輝き、そして、本当の素顔。【ロバート秋山のクリエイターズ・ファイル#34】

 ミケーラ・スーサにキズナアイ。彼女たちに共通するのは技術の発展によって生まれた架空の存在でありながらも、熱狂的に人々を惹きつける魅力があるというところ。そして嘘で盛り上がるカルチャーなどテクノロジーはリアルと虚構の境界を綯い交ぜに、曖昧にしながらもクリエティブを誰にもわからないその先の段階へと引き上げてくれるはずだ。

■げんきくん
UXライター。Webサービスとテクノロジー、あとオカルト、宗教、デザイン、アメコミに興味があります。
Twitter:@genkl_kun

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