「漫画村」はなぜ閉鎖しない? 弁護士と漫画編集者の見解を聞く
漫画の海賊版サイト「漫画村」が3月5日、ユーザー増加による維持費アップを理由に、月額500円の有料サービス「漫画村プロ」をリリースすると発表し、物議を醸している。
著作権違反が公然と行われているなかで、同サイトはなぜ閉鎖に至らないのか。不動法律事務所の小杉俊介弁護士は、次のように語る。
「漫画村が謳っているように、国交のない・著作権が保護されない国=万国著作権条約に加盟していない国で運営されている、というのが事実であれば、現状、法的責任を問うことができません。インターネット上の画像を表示しているだけだから違法ではない、という見方に関しては、いわゆる『リンク集』についても著作権違反を認めた例があり、同じ理屈で責任を問うことは不可能ではないという見解もありますが、裁判例がないので何とも言えないところです」(小杉氏)
漫画村が挑発的に掲げている予防線は、確かに法的追及を逃れる盾になっているようだ。月間のユニークユーザーは約1億人。日本の一大産業である漫画業界に深刻なダメージを与えつつあるなかで、これに対処する新たな立法は考えられるだろうか?
「閲覧者に対して何らかの罰則をつける、という新たな法律ができればこの問題にも対処できるとは思いますが、別の問題を多くはらみますし、海賊版サイトの問題でそうした議論にはならないでしょう。例えば、フィルタリングでサイトの閲覧自体ができないようにするなど、別の方向からの対策が必要です」(小杉氏)
一方、大手漫画誌編集者からは、「そもそも出版社が『訴訟』を視野に入れて動くのは難しい」との声も。
「出版社は作家さんと出版契約は交わしていますが、著作隣接権を持たず、また公衆送信権(編注:有線無線問わず、著作物を送信することをコントロールできる権利)も、契約上の特記がない限り著作権者自身が行使しなければなりません。いわゆる自炊代行サービスについて、東野圭吾さんや弘兼憲史さんなどが原告となって訴訟を起こしたことがありましたが、海賊版サイトに対してもそれと同様に、原則として作家が主体となって訴訟を提起する、という形式を取る必要があるんです。海賊版サイトとのイタチごっこのなかで、その都度、作家さん一人ひとりに協力をあおぐのは現実的ではなく、訴訟に名前を出すことを嫌う先生も多いので、悩ましい状況です」(漫画誌編集者)
同編集者は、「海外の漫画読者の9割以上は海賊版サイトで翻訳版を読んでいるとされ、運営者が取り締まられたケースはほぼない」、「日本でも、特に電子コミックにおいては売り上げが数割というレベルで落ちている、という話も出てきている」と、深刻化している状況を語る。