『LOST10』の巧みな脚本に唸らされる “信じること”さえ疑わせる極上のサスペンス

『LOST10』の極上サスペンスの魅力

 あれほど捜索しても見つからなかった遭難者が、渋谷の防犯カメラに映っていた――。

 金曜ドラマ『LOST10』(TBS系)第3話のラストには、思わず息をのんだ。大自然と、大都会。野生動物が息づく雄大な光景と、目が回るほどの人の数とビル群。山奥では何十人という人間が祈りを込めた捜索を続けた一方で、たった1台のカメラが記録する無機質な映像が遭難者を見つけ出す。“生きていてよかった”と安堵しながらも、“なぜそんなところに?”という不信感。組織の方針と、個人の信念。「どうしたら信じてもらえる?」という切実な訴えと、「すべてを疑え」というフレーズ。こうした鮮やかな対比の畳み掛けこそが、『LOST10』の面白さだ。

 事実は一つ。でも、そこから生まれる物語は一つとは限らない。私たちはいつだって一つの物事を、信じたい側から見つめている。本当は真逆の側面から見ることだってできるのに。公務員の刑事・小駒(横浜流星)とフリーの保険調査員・直(小栗旬)。対照的な二人の関係が、私たちの視野を広げてくれるのもまた楽しい。

 物語の始まりは、登山ツアーの遭難事故。過疎地で出世欲をくすぶらせていた小駒にとっては、大きなチャンスとも言える。だが、そのツアー客のなかに、かつての恩師・亜矢(中村アン)がいたことから、疑念と信頼の間で揺れ動くことになる。

 遭難した6名のうち、救出されたのはツアー客の亜矢と登山ガイドの田畠(飯豊まりえ)のみ。そして、遺体で発見された二階堂(金子昇)には多額の保険金がかけられていたことが判明。ほかの3名の捜索が続くなか、ツアー客全員の山岳保険金の受取人がなぜか亜矢名義になっていることが明らかになる。

 さらに、二階堂の体内からは睡眠薬の成分が検出され、誰かが意図的に飲ませた疑惑が深まる。二階堂にペットボトルを渡したのは、亜矢か、田畠か。それぞれが自分ではないと主張し、証言が食い違う。どちらかが嘘をついているのか。それとも、まだ見えていない事実があるのか。証言の食い違いを解き明かす記録はない。そんな状況のなか、田畠は何者かに怯え、マンションから飛び降りてしまうのだった。

一つの証拠から生まれる、真逆の解釈

 亜矢の指紋がついたペットボトルがある。だから、犯人だと見るのか。それとも、犯人ならば、そんなにわかりやすい証拠を残さないと考えるべきか。一つの証拠を目の前にしても、そこから見えてくる意味は180度異なる。

 これは、保険金というお金の流れにも言えるのだ。田畠はシングルマザーだった。ガイドの仕事をする上で、万が一のことがあったとき、たったひとりの娘・乃々(木内天奏)に残すため保険に入っていた。そこには、遺される娘を思う母の愛情が見える。そんな親子が寄り添うように生きてきた話を聞く前と後では、二階堂の妻・ハルネ(斉藤由貴)の印象も少し変わってくるから不思議だ。

 二階堂にかけられていた保険は、つい最近増額されていた。見るからにハイブランドで着飾り、夫の死を知るやいなや、二階堂が経営していた飲食店のレジから現金をかき集めるハルネ。何やら見られては困る情報が詰まっているのか警察の手に渡らないようにデバイスを処分したり、事情聴取の最中にトイレに駆け込んで不審な動きをしたりと、とにかく怪しい。にもかかわらず、保険金の増額は二階堂が「死ぬまで一緒にいる」という約束の代わりにしてくれたものだと涙を流すと、この夫妻なりの愛の証だったのだと信じたくなってしまう。

 「すべてを疑え」とは、きっと誰も信じるなという意味ではないのだろう。人は何かを信じたくなったときにこそ、それを裏付けるものばかり探してしまうことを思い出せ、ということなのではないか。変わらない事実に向ける眼差しが変わるだけで、見えてくるものが変わる。

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