『LOST10』奥寺佐渡子×塚原あゆ子が目指した新たなサスペンス 「同じことはやりたくない」

『Nのために』(TBS系)、『最愛』(TBS系)など数々の名作を生み出してきた脚本家・奥寺佐渡子、監督・塚原あゆ子、プロデューサー・新井順子が、TBS金曜ドラマ『LOST10』で再びタッグを組む。横浜流星が主演を務め、北海道の大自然を舞台に描くのは、遭難事故を発端に次々と姿を変えていく完全オリジナルのヒューマンサスペンス・エンタテインメントだ。
長年の信頼関係で結ばれた奥寺と塚原に、二転三転した企画の裏側、横浜や小栗旬によって思いがけず変化したキャラクター、そして『LOST10』に込めた思いまで、たっぷりと語ってもらった。
奥寺脚本と塚原演出の絶妙なバランス感

――脚本の奥寺佐渡子さん、監督の塚原あゆ子さん、プロデューサーの新井順子さん、3人での久しぶりのタッグになります。
塚原あゆ子(以下、塚原):『下剋上球児』(2023年/TBS系)が終わった後には、もう「次、何やろうか」みたいな話がありましたからね。
奥寺佐渡子(以下、奥寺):「この年にやりましょう」みたいな感じで。
塚原:“金曜日”(TBS金曜ドラマ枠)に向けてと思いだしたのはもっと後ですけど、もともと“金曜日”がスタートにあったので、奥寺さんとちゃんとしたサスペンスをまたやれるのがうれしいなという感じでした。
――脚本を作るにあたってはどのような話し合いを重ねていったのでしょうか?
奥寺:どうでしょうね。でも大体、新井さんと塚原さんがやりたいことを奥寺が書きますみたいな感じで、いつもやってるので。
塚原:本当にごめんなさい(笑)。サスペンスをやろうということになって、二転三転する誰が犯人かみたいな、1つの事件を10話で追うということではない企画書を考えていて、それを新井に相談し、奥寺さんに打診してみたら、引き受けてくださったという流れです。
奥寺:2人とならやりますよということなんですけど、だいたい打ち合わせのときに、2人が無茶苦茶なことをリクエストをしてきてですね(笑)。「じゃあ、奥寺さんよろしくお願いします」みたいな。打ち合わせが終わって、帰りの電車の中で「何がよろしくだよ……」って帰るという感じです(笑)。
――そういうときには、腹が立ったりはしないですか?
奥寺:たまにキレてます。たまにキレてますけど、「一回持ち帰って書いてみます」となるんで、その場ではあんまり。持ち帰って「ふざけんなよ」ってメールを出してます(笑)。
――塚原さんにとって奥寺さんの脚本の一番の魅力はどこですか?
塚原:山場のところは言葉が少なく、ト書きも少なく、「やってね」みたいな書き方なんですよ。“普通”が何を指すのかは知らないですけど、気合が入っているシーンは言葉が多くなるし、こういうところにこういう人がいて、ここのセリフが立っているとか、大きく書かれることも多いので、ある先生はここを大事にされているのかなと思いながら受け取るんです。奥寺さんの場合は逆に引き算をされるので、『夜行観覧車』(2013年/TBS系)のときから、「わー! このシーン、めっちゃ書いてないから怖いよー!」となる。そこが楽しいんですけど、スタッフも「これ2行しか書いてないですね! 危ないですね!」という感じで、気合を入れていかないと。想像力が求められるシーンが膨らんだかどうかが、真価を試される感じの本ですね。第1話で、小駒(横浜流星)がある人を助けるまでのストロークはもちろん書かれていないので、「でもあそこを盛り上げるんでしょ?」というのは何となくあるので。何も書かれてはいないけど、「ここはやるしかないぞ!」とみんなが理解するという感じです。

――奥寺さんはあえてそういったメッセージの出し方をしてるんですか?
奥寺:書きすぎると緊張感がなくなるなあ、と。そういうことを読み取ってくださるチームでないとなかなかできないことですよね。だいたい「あんまり書いてないね」とか「もうちょっと書き足して」と言われることが多いので、細かく書かなくてもたった2行だけでも豊かなシーンにしてくださるのは毎回ありがたいことです。
――奥寺さんが塚原さんの信頼できる部分はどこでしょうか?
奥寺:私が言うまでもなく名実ともにエース監督ですし、でもなんかね、人間的に好きというのはありますよね。
塚原:私は奥寺さんが好き。
奥寺:打ち合わせ楽しいですもんね。山岳事故からして「そんなの撮れる?」って、まず思いますね。ここまで丁寧に撮れるんだって。
塚原:ありがとうございます。続々と「どうやって撮るんだろう……」とスタッフが頭を抱える設定が出てきますが、乗り越えられました(泣)。撮影最後の1カ月くらいがずっと雨で、小栗さんに「お前が雨女だからだ」と責められながらやりました。
横浜流星と小栗旬がもたらした“人間味”

――予想外に化けたというようなキャラクターはいましたか?
塚原:小駒も直(小栗旬)もああいう感じだと思ってました?
奥寺:ううん。
塚原:私もあんまり思ってなかったから、こうなるんだという感じ。2人がやったからこその柔らかさとか人間味。
奥寺:人間味の部分は大きい。本当に生活している人の感じがします。
――映像を観てからまた浮かんでくることというのは出てきたりするのでしょうか?
奥寺:今回ちょっと残念だったのは、いつもは完パケを観ながら書いていくんですよね。今回は撮影前に全部書き終わっていたので、反映ができずもったいなかったです。
塚原:どっちの良さもあるんですけど、まとめて書いてなかったら、北海道3週間のロケはできなかったと思うんですよ。だから、地方に行くために10本書いていただいたのは助かったという部分はあるんですけど、思わぬことにはならなかったけど、思わぬことになったとき、取り返しがつかないことにもなりかねない。そうではないふうに俳優さんの思いの中で転がっていった場合、どうするんだろうとは思いながらやっていましたね。
――先ほど、小駒も直もお2人のイメージとは違ったとおっしゃっていましたが、本来はどのようなイメージがあったのでしょうか?
塚原:田舎の刑事で出世したいというのが、うだつが上がらないに近い感じなのかなと思っていたんです。だけど、横浜さんが身体能力に長けていらっしゃって、山をぐんぐん登るのでうだつが上がらないというよりかは、出渋ってるというか、優秀な部分はきっとあるだろうに惜しいなみたいな感じになったかなという気はしますかね。
奥寺:私も身体能力の高さは見ていて楽しかったです。小栗さんも身体能力が高い方なんですけど、あくまでも2人は普通の人として書いていたので。
――小栗さんや横浜さんと現場ではどのような会話がありましたか?
塚原:本の読み方で、奥寺さんはどう思っているのかなということをよく聞かれます。このシーンの直は、最終的に明るいのか、暗いのかとか、どっちも選べるような余白、行間が非常に豊かな本なので、読み方が間違ってるということはないと思うんですけど、奥寺さんはどっちのつもりなのかなとか、最終的に奥寺さんはここで何を言いたいのかなとかいうのを、3人で想像して話すのが楽しいです。
奥寺:ありがとうございます。本当にすべてが素晴らしくて、撮影も音も編集も私はこのチームの大ファンなので、玄関先しか映らなくても部屋の奥をちゃんと作り込んでくれていたり、衣装も借りてきてすぐ着せるみたいな感じではなく、何度も何度も洗濯してクターッとしていたり、人が生きていく細かいところを作ってくださるチームなので、ファンとして楽しみに観ています。
『最愛』チームだからこそ生まれた強みと喜び

――改めてこのチームだからこその強み、チャレンジできることはありますか?
塚原:『最愛』のチームでもあるので、サスペンスが繰り返しになっていないことをチームが喜んでいます。「湊かなえ三部作のチームが送る」みたいなことになると同じような内容に陥ることをみんなが心配していて。それが「被らなかった」と言っていただけたのでよかったです。いつもであれば一つの事件に対して10話で紐解いていくフォーマットにサスペンスでは陥りがちなんですけど、今回はそうではなく、ゴロゴロ転がっていくような形になっています。フォーマットとしての新しさにスタッフ一同、ウキウキしながら北海道に飛んだ感じですね。次に向かってのブリッジが鮮やかにかかっていく本で、昨日も第3話の編集だったんですけど、「おー!」となるので楽しみにしてください。
奥寺:同じことはやりたくないということを打ち合わせで言ってましたよね。
塚原:近似的にしていくとね。書けなくなっていっちゃうので。
――長年ご一緒されてきた中で、他のチームを経たからこそ感じる部分は何かあります?
塚原:奥寺さんは進化していっていらっしゃるなと思います。ご一緒してないときの監督たちとのセッションからも吸収されて、単語が時代に寄り添うんだけど、もともと奥寺さんが持っている単語の豊かさを失わずバージョンアップされていくので楽しいですし、それをスタッフ一同ウキウキしながら読むんです。『最愛』のときはこういう単語だったけど、今回はこういう単語ですねとか、言われてなるほどと思ったりしますし、スタッフが誰よりも奥寺さんのファンなので読み込むのが楽しいですね。
奥寺:連続ドラマはこのチームとしかやってないんですよね。映画かこのチームかなので、特に連ドラは塚原さんと新井さんのほうが先輩なので、毎回教えてもらうことのほうが多いです。「こういうときはどう書いたらいい?」とかよく言ってますね。

















