『いろはの恋は時代をかける』いろはの思いに胸が締めつけられる 光る大森元貴の“表現力”

第4話でいろはが触れたのは、蓮司が直也と暮らす日々だった。母親が家を出ていき、父一人子一人で支え合って生きている蓮司と直也。決して余裕のある生活ではないが、そこには親子で重ねてきた確かな時間がある。
そんな直也をめぐり、学校で騒動が起きた。体育の授業中、彼が投げたボールで娘の美羽(池田稚菜)がけがをしたとして、木崎道雄(竹財輝之助)が謝罪を要求したのだ。ところが、蓮司と顔を合わせると、木崎は母親の不在や家庭環境にまで話を広げ、親子を見下し始める。娘を大切に思うことと、相手の子供を傷つけることは別の話。「それだけで全てを決めつけるんじゃねえよ」と怒るいろはの言葉に、こちらも頷かずにはいられない。

一方で、蓮司も言い返し、ついには木崎に殴りかかろうとしてしまう。子供同士は仲良くしているのに、大人の間では争いばかりが膨らんでいく。その場を止めたのは、ほかでもない子供たちだった。直也は父親をかばって謝り、美羽はけがなどしていないと告白。美羽が求めていたのは、相手への抗議ではない。ただ、忙しい父親に自分の話を聞いてほしかったのだ。子供を守ろうとする大人が、その肝心な気持ちを置き去りにしてしまう。子育ての知識を語る木崎が、娘の思いを聞けていなかったことも皮肉だった。
そして、直也に駆け寄って抱きしめる蓮司。この瞬間、彼にとって何より大切で、守るべき存在が誰なのかが伝わってきた。関と蓮司は、服装や髪型だけでなく、立ち姿からして違う。関は背筋が伸び、穏やかな物腰と柔らかな笑顔の中にも、先生としての風格が漂っていた。対する蓮司は、どこかだるっとした佇まいを見せる。他人に対しては簡単に心を開かず、いろはへの受け答えにも距離を感じさせた。妻に去られ、お金にも苦労するなかで、世間に期待しなくなっているのかもしれない。大森は、そんな日々の疲れや警戒心をにじませながら、直也には優しい顔を向ける。だからこそ、感情のままに息子を抱きしめる姿に、蓮司の思いがあふれて見えた。

いろはもそこで、関に似た面影の向こうに、直也の父親として生き着ける蓮司を見たのではないか。彼には彼の人生があり、自分の知らないところで大切にしてきたものがある。「本当に瓜二つだったけど、全然違う」。同じ顔をしていても、会いたかった人ではない。その違いを大森元貴の演技が自然に感じさせるからこそ、いろはの寂しさが身にしみる。別人だとわかっても、関への思いまで消えてくれるわけではないのだ。「みんな別の人間で、当たり前にてめえだけの人生を生きてんのに」と思えばこそ、自分が彩葉として暮らしていることにも戸惑いが募る。「帰りてえな」とこぼした涙には、関への恋しさも、自分の居場所に戻れない心細さもにじんでいた。
そんないろはを生琉は思わず抱きしめるが、「一ノ瀬先生、何するんですか」と拒絶されてしまう。いろはの意識が戻ったのだろうか。彼女に対して、いつしか恋心にも似た感情を抱き始めていた生琉。目の前に同じ顔があるのに、会いたい人がいない。その切なさを、今度は彼が味わうことになるのかもしれない。
■放送情報
火曜ドラマ『いろはの恋は時代をかける』
TBS系にて、毎週火曜22:00~22:57放送
出演:上白石萌音、向井康二、山中柔太朗、大森元貴、剛力彩芽、大西礼芳、白山乃愛、YOU、イモトアヤコ、保田圭、竹財輝之助、柳ゆり菜ほか
脚本:長田育恵
演出:田中健太、福田亮介
音楽:Ken Arai
主題歌:MISIA「さよならばっか」
プロデューサー:宮﨑真佐子、松本明子
協力プロデューサー:阿部愛沙美
編成:渡邊晏夏、関川友理
製作:TBSスパークル、TBS
©TBSスパークル/TBS
公式サイト:https://www.tbs.co.jp/koitoki_tbs/
公式X(旧Twitter):@koitoki_tbs




















