『メリーベリーラブ』の“韓ドラ演出”になぜ賛否? 異言語ならではの男女のすれ違い描写

 こうした言葉の問題は、もうひとつ指摘されている「展開の急さ」にも影響しているだろう。たしかに、初対面から最悪の印象だったはずのユビンを、夏凛がいちご畑の働き手として採用し、共同作業をしながら恋心が芽生えるまでがだいぶ早すぎるとは思う。おそらくは、セリフのニュアンスや行間から感情の機微を読み取る恋愛という行為を、母国語の違う者が言葉の積み重ねや会話劇で作り上げるのが困難だからではないだろうか。ただし急展開のポジティブな理由としては、「限られた時間」という隠れたテーマのためでもあると考えられる。夏凛には持病があり、気持ちが昂ると気を失ってしまう。また、いちごの露地栽培は、ビニールハウスと違い温度管理ができないため、収穫できる時期が春先の1カ月ほどと限られている。夏凛が人生の中で恋愛できる時間もエネルギーも、他者より短く少ないのだ。

 『冬のソナタ』ブームからすでに20年以上が経ち、韓国ドラマは配信を通じてワールドワイドなコンテンツとなった。ゆえに現在では、既存のファン以外にも韓国ドラマの王道、つまりその頃からあるなんとなくの“韓ドラっぽさ—ここには不治の病や余命と言った人生のリミットが含まれる—”が共有され、同時に“韓ドラっぽさ”が批判の対象とされてしまう。しかし、たとえば夏凛が治癒不明な持病を持っているという要素や「限られた時間」というテーマは、現在大ヒット中の邦画『ママがもうこの世界にいなくても 私の命の日記』にだいぶ近いものがある。現時点で『メリーベリーラブ』に起きている「どうしても乗り切れない」という批判は結局、国籍に限らず人間の情緒に訴えかける“王道”と、国を越えた情緒の交歓をどう描くかが鍵の作品において多言語をどうさばくかという“変化”の要素が噛み合っていないから起きているのではないか。

 最新の第4話では、力を合わせて取り組んだ農産物フェスタを成功裏に終えたユビンと夏凛がようやく2人きりになり、そのとき翻訳アプリのちょっとした誤訳をきっかけに、話題はつらいときに気持ちを休めようと訪れる大切な場所についての話になる。普段は触れたことのなかった、お互いが抱えたつらさを分かち合ったとき、ロマンティックな瞬間が訪れる。このようなぎこちなさや差異から生まれた感情のすれ違いが、うまく行きかけている2人の恋にどう揺らぎをもたらすのかが、王道の展開の積み重ねよりもむしろ本作の面白さになっていくのではないか。

参照
※ https://www.cinematoday.jp/news/N0157353

■放送情報
『メリーベリーラブ』
日本テレビ系にて、毎週水曜22:00〜放送
ディズニープラスにて配信
出演:チ・チャンウク、今田美桜、ナム・ユンス、久間田琳加ほか
監督:キム・スジョン、ノ・ヨンソプ
脚本:イ・ジェユン
エグゼクティブ・プロデューサー:イ・サンファ
プロデューサー:パク・チェウン、イ・スジ、キム・クンシル
チーフプロデューサー:江成真二
スタジオセンター:池田健司、能勢荘志、久保真一郎、岩見怜音
メインテーマ:SEKAI NO OWARI 「Supermarket」(Capitol Records / ユニバーサル ミュージック)
制作:CJ ENM Japan、日本テレビ
©︎日本テレビ
公式サイト:https://www.ntv.co.jp/merryberrylove/
公式X(旧Twitter):https://x.com/mbl_ntv

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