吉田羊が明かす、人生の選択と“前向きな諦め” 「もしあのときあちら側を取っていたら」

南沙良との対峙で生まれた感情

ーー本作のテーマの一つに「組織と個人」の境界があると思いますが、俳優人生の中で「組織と個人」のしがらみを感じることはありますか?
吉田:考えの違う人の集合体が組織だとすれば、俳優の世界も同じです。物を作るときに俳優同士で解釈の相違があると衝突することもあります。建設的に解決できればいいのですが、稀にただの衝突と化してしまう現場もあって。そうした状況に直面すると、自分と意見の違う存在と共存していくことの大変さをすごく感じます。ただ今回の座組に関しては、本当に気持ちのいい共演者とスタッフの皆さんが集まってくださっているので、解釈が違うと分かった時点できちんとディスカッションし、お互いに納得する形で着地させるものづくりができました。遠慮なくトライアンドエラーができたことに感謝しています。
ーー対立するキャラクターを演じる南沙良さんとの共演はいかがでしたか?
吉田:沙良ちゃんは本当に目力がまっすぐで。台本を読んでいるだけでは生まれなかった感情が、彼女の目力によって生まれることが多々ありました。「この人には嘘つけないな、心の中まで見透かされるな」と思わせる目を持っていらっしゃる。だから英理子はるりと向き合うときにクールに見せているんだけれど心の中はすごく焦っている。あの感情は、実際に沙良ちゃんと対峙してみて初めて生まれましたね。

ーー本作ではハラスメントの描かれ方も非常に印象的です。吉田さんご自身は、ハラスメントへの意識についてどう感じていますか?
吉田:最近の作品は現場に入る前に「リスペクト講習」というものがあるんです。それを経て現場に入ると、何か声をかけたりアクションを起こしたりするときに、「これは相手にとってどう聞こえるだろう」と一回立ち止まって考えることができるようになりました。そういうきっかけ作りがなされるようになったのはとてもいいことですよね。ただ、その講習を受けても変わらない人は変わらない。でも、これをやり続けてスタンダード化していくことが大事だろうなと思います。英理子のように、声をあげなければいけないところで声をあげずにいる人にも、彼女なりの守るべきものがある。その両方の価値観が分かるから難しいなと思いつつも、私自身は声をあげられる存在でありたいなという思いは持っています。
「私は一回『結婚』を諦めたんです」

ーーこれまで様々な役柄を演じてこられましたが、吉田さんが「演じてみたい」と惹かれるのはどのような役ですか?
吉田:やっぱり感情がたくさん動く役は面白いですね。聖人君子や完璧な人ってつまらないですから。どこかほころびがあったりダメなところがあって、その中で奮闘して崖っぷちに立たされて悪態をついたり、醜態を晒したりする方が、より人間味があって面白い。「この人、本当はどういう人なんだろう」と興味が湧く役が来ると「やった!」と思います。
ーー本作への出演発表時「誰しも、生きていればままならないことも多い。諦めた方の人生を思い出して後悔することもあるでしょう」(※)というコメントが印象的でした。吉田さんご自身が人生で感じた「諦め」があれば教えてください。
吉田:すごくリアルなことを言うと、私は一回「結婚」を諦めたんです。この仕事を取るか、結婚してお相手の実家に入るかという選択肢を迫られ、私はこの仕事を取りました。あの時点で、私はきっと人間との結婚を手放し、仕事と結婚したんだなと思っています。でも私にとっては“前向きな諦め”だったんです。もちろんこの世界を選び取って得られた新しい出会いや喜びがたくさんあるので、結果的にこれで良かったと思っています。けれど、「もしあのときあちら側を取っていたら、今どんな人生だったかな」と思い返すときは、時々ありますね。
参照
※ https://realsound.jp/movie/2026/09/post-2522192.html
■放送情報
ドラマ10『会社員』
NHK総合にて、毎週火曜22:00〜22:45放送(全8回)
※毎週木曜24:35〜25:20再放送
※NHK ONEで同時・見逃し配信予定
出演:吉田羊、南沙良、加藤清史郎、小久保寿人、前川泰之、田中直樹、尾美としのり ほか
作:名嘉友美、松井周、あさか友恵、縦谷宗(WDRプロジェクト)
音楽:yuma yamaguchi
制作統括:上田明子、石村将太
演出:保坂慶太、大嶋慧介、西尾友希
写真提供=NHK
公式サイト:https://www.nhk.or.jp/wdr/





















