『波うららかに、めおと日和』はなぜこの時代に“純愛”を描けるのか? 舞台設定から考える

うぶな夫婦の恋物語が始まった。
群雄割拠の秋ドラマのなかで『波うららかに、めおと日和』(フジテレビ系)の続編がどのように受け入れられるものになるかを冷静に見守っていたはずが、第1話を見ていたときにいつの間にかニヤニヤしている自分がいた。我々は“瀧なつ”の強力な引力に抗えないのだ。
今さらだが『波うららかに、めおと日和』は、近年まれに見るど直球の純愛ドラマだ。昨年大ヒットした前作では、お互いに写真しか知らなかったなつ美(芳根京子)と瀧昌(本田響矢)の結婚から始まり、相手の気持ちがわからないままでの夫婦生活を経て、ちょっとずつちょっとずつ気持ちを伝え合いながら、2人は距離を縮めてきた。ただまっすぐに相手を思い合う2人の様子は、続編でも変わらない。

『めおと日和』は昭和前期を舞台にした広い意味での時代劇だが、そもそも時代劇は、現代劇よりも“カセ”を作りやすいと言われている。カセとは、登場人物の行動や選択を制限する物語上の要素だ。本作で言えば、相手を知らずにお見合いから始まる結婚生活という設定自体がカセになる。続編の第1話では、なつ美がすぐに届く手紙を望んでいたが、連絡が取りにくい点も時代劇ならではのカセだ。
同じく10月期に放送している『いろはの恋は時代をかける』(TBS系)第2話でも、江戸時代から現代にやってきたいろは(上白石萌音)が、携帯を渡され「飛脚はいらねえんだなあ」と驚く場面があった。『いろはの恋は時代をかける』に関しても、江戸からやってくるいろはをメインに据えていることで、江戸と現代の違い、そしてそれに対するいろはのリアクションが、物語の面白さにつながっている。
物語の舞台を過去に設定するだけで、現代では生まれにくい制約が自然と生じる。その制約が登場人物の前に立ちはだかることで、複雑な設定を加えなくても、恋愛に十分なドラマ性を持たせられるのだ。
これを踏まえると、『波うららかに、めおと日和』が純愛ドラマを貫けるのは、時代劇だからだと言える。なつ美と瀧昌に、複雑な設定や重い悩みを与えなくても、2人が生きる時代そのものが、夫婦にとっての障壁になっているのだ。

一方現代劇では、時代設定だけで恋愛の障壁を作ることは難しい。だからこそ、登場人物に複雑な生い立ちを与えたり、社会問題と結びつく事情を設定したりすることで、恋愛に障壁を設けている。現代劇の恋愛ドラマが複雑に見えやすいのは、このせいだろう。
『波うららかに、めおと日和』前作放送時、似ていると言われることが多かった『逃げるは恥だが役に立つ』(TBS系)も、みくり(新垣結衣)と平匡(星野源)の心情をモノローグで描きつつ、根底には社会問題やジェンダーにまつわる課題が織り込まれていた。現代劇の純愛ドラマは、社会との接続を通して、登場人物たちの壁を描く必要があるのだ。
もちろん社会性がにじむ恋愛ドラマはおもしろい。私たちの生活に通ずる問題を真摯に描くドラマはいくらあってもいい。
ただ、現代劇でもなんのしがらみもない純愛ドラマが見たいと願ってしまうのは、私だけだろうか。
『波うららかに、めおと日和』続編第1話のラストで描かれた現代パートがこれからどのように続いていくのかはわからないが、瀧昌となつ美の性格を引き継いでいるであろう2人が、現代でどんな恋愛をしていくのか楽しみだ。
■放送情報
『波うららかに、めおと日和』(続編)
フジテレビ系にて、毎週木曜22:00~22:54放送
出演:芳根京子、本田響矢、生田絵梨花、小関裕太、小宮璃央、咲妃みゆ、小川彩(乃木坂46)、戸塚純貴、森カンナ、高橋努、紺野まひる、生瀬勝久、和久井映見
原作:西香はち『波うららかに、めおと日和』(講談社『コミックDAYS』連載)
脚本:泉澤陽子
音楽:植田能平
主題歌:Da-iCE「うららか」
挿入歌:BE:FIRST「夢中」
演出:平野眞、森脇智延(FILM)、國武俊文(FILM)
プロデュース:宋ハナ、貞松瑠南
制作プロデュース:古郡真也(FILM)
制作協力:FILM
制作著作:フジテレビ
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