陰謀論を超えた未知との遭遇 『ディスクロージャー・デイ』はスピルバーグの素敵な妄想映画
世界最高を、お届けしたい(USJのCMでのスピルバーグのコメント)! そんなわけでスティーヴン・スピルバーグの新作である。『ディスクロージャー・デイ』(2026年)は多くの映画ファンを悩ませつつ、暖かい気持ちにさせるはずだ。
まず大前提として、本作は決して万人にオススメできない。文句なしの傑作とは言わない。ただ、妙に記憶に残るタイプの映画だとは思う。ちなみに、本作がアメリカで興行的に伸び悩み、「Z世代にスピルバーグはウケないのでは?」という見出しの記事を見たけれど……当たり前である。それは部活終わりの男子高校生に白湯で喜べというようなものだ。胃にはやさしいけれど、無理があろうかと思われます。そこは2万本シュート合宿の桜木花道ばりに、カツ丼大盛り、コロッケ、サンマ、焼きそば、ホイコーロー、ラーメンと牛乳を出すべきである。
しかし二日酔いの朝など、胃に優しい白湯が嬉しい時もある。本作は『ロズウェル/星の恋人たち』とか『X-FILE』、もしくはそれ以前か……とにかく「宇宙人」や「UFO」という言葉にロマンを感じた人間に向けての映画だ。途中のサスペンスもアクションも、すべてはラスト20分への前フリだとすら思う。それくらい最後に全てがある。以下、大幅なネタバレがあるので、気になる方は避けてほしい。
お話は古式ゆかしいサスペンスものだ。何やら陰謀に立ち向かっている男・ダニエル(ジョシュ・オコナー)は、何やら世界レベルで大事そうなものを盗み出し、何やらドえらい組織に追われている。一方でアメリカンお天気お姉さんとして働くマーガレット(エミリー・ブラント)は、報道の仕事をしたいと思いつつ、動画サイトでウケを狙うダンスを名物にして、なんとか日銭を稼ぐ日々。そんな生活を変えたいと思っているさなか、突然の謎の能力が開花する。習ったはずのない言語を使いこなし、おまけに生放送中に奇行まで……。いったい自分に何が起きているのか? 陰謀に追われる男と、謎の現象に悩む女。ふたりの逃走劇と未知との遭遇が始まる!
繰り返しになるが、本作は変な映画である。お話としてはスパイ映画的な追跡劇と、「ここではないどこかへ」を求めるヒューマンドラマを足して二で割ったら割り切れなかったような雰囲気だ。全体的に駆け足感がある。予告の時点で宇宙人の話であると思い切り明かしてしまっているので、「この陰謀はいったい!?」という物語の最初のミステリーが「でもこれ宇宙人の話なんでしょう?」と分かってしまっている点もあるだろう。
それでもどっこい、スピルバーグである。ビックリドッキリなカメラワークは相変わらずで、ジェームズ・ワンくらい疑似ワンカットが炸裂し、マイケル・ベイくらいカメラがグルグル回る。カーチェイスのシーンもキレがあるし、エンタメ監督としての生涯現役感は健在だ。明日、いきなりMCUの新作を任されても、そつなく作ってしまうはずだろう。
しかし、本作の肝はやはり終盤だ。タイトル通り「ディスクロージャー・デイ=開示の日」が描かれるのだが、このシーンが素晴らしい。スピルバーグは御年79歳だが、きっと現在でも「宇宙人が存在するってことがテレビで流れて、こんな感じになんないかな?」と真剣に妄想しているに違いない。まるで本当にそういう時を経験しているような、迫真の空気が描かれるのだ。ニュースキャスターの人のリアルすぎるリアクションも素晴らしい。映画というより放送事故や緊急放送を見ているような感覚に陥った。束の間、本当に開示の日を迎えた世界にいるような気分になること必至だ(もちろん、これは私が『X-FILE』などで育ったからだろうけれども)。そしてダメ押しのごとき、ご本人登場である。劇場で「マジかよ」と声が出そうになった。おおらかな、しかし優しい気持ちになれた。スピルバーグは70年代から……つまりは半世紀を経た今も根柢の部分は変わっていない。未知と遭遇し、世界が変わる瞬間を体験したいのである。
一歩間違えば、本作は陰謀論を肯定する映画になりかねなかった。それは陰謀論によって実害が出まくっている今の時代には厳しいものがある。しかし最後の圧倒的にリアルな緊急生放送感によって、本作は陰謀論映画から突き抜け、ロマンの映画として着地した。本作はスピルバーグ、御年79歳の素敵な妄想映画である。映画の世界に飛び込もう!
■公開情報
『ディスクロージャー・デイ』
全国公開中
出演:エミリー・ブラント、ジョシュ・オコナー、コリン・ファース、イヴ・ヒューソン、コールマン・ドミンゴ
監督:スティーヴン・スピルバーグ
脚本:デヴィッド・コープ
原案:スティーヴン・スピルバーグ
製作:クリスティ・マコスコ・クリーガー、スティーヴン・スピルバーグ
製作総指揮:アダム・ソムナー、クリス・ブリガム
配給:東宝東和
©Universal Studios. All Rights Reserved.
公式サイト:https://disclosureday.jp
公式X(旧Twitter):https://x.com/universal_eiga