悠木碧が再発見した『薬屋のひとりごと』の魅力 猫猫は「みんなに平等だからカッコいい」

悠木碧、『薬屋のひとりごと』の魅力を再発見

台詞は“作業しながら聞いても内容がわかる”

——第2期は衝撃的な結末を迎えたなかで、猫猫にとっても子翠とのやり取りなどでは強く心を動かされるところもあったのではないかと思います。それまでの過程で猫猫の中で何か変化や成長があったと感じることはありましたか?

悠木:成長や変化という形ではないけど、“そういう一面も持っている人だったんだな”と新たに見えたところはあるかもしれません。今まで猫猫がここまで切羽詰まったり、すごく仲良しの友達に二度と会えなくなるようなことはきっとなかった。ただ、衝撃的ではあったけれど職業柄、人の生死に対する感覚は十分にある子だから、自分が最後にしてあげられることをきちんとやろうと思って送り出したのだと思います。あれが彼女を大きく変えたということではなく、そういう一面をもともと持っていたし、あえて人にひけらかすわけではないけど本当は愛情深いんだということが、視聴者にも伝わる展開だったのかなと思っています。

——猫猫を演じてきたことで、悠木さんにとって新しい演技のアプローチになったことはありますか?

悠木:新しいアプローチというわけではないですが、『薬屋のひとりごと』のようにモノローグが長い作品に携わるにあたって、“作業しながら聞いても内容がわかる”ように演じることはすごく意識しています。一生懸命集中して観てほしいとも思うけど、みなさんがアニメをどういうタイミングで観るかはこちらでコントロールできることではない。そんななかで面白いと思ってもらうには、“ながら作業”の途中で聞いても何の話か頭に入ってくるような、心地いいリズムが作れたらいいなと思いながら猫猫を演じています。

——『薬屋のひとりごと』は特に主人公のモノローグが多い作品ですよね。

悠木:私はわりと長回しのキャラクターを演じることが多くて、最近特に増えたなと思います。たとえば異世界転生とかをすると、小説でいう地の文が全部主人公のモノローグになったりするので、どうしても主人公のセリフ量は増えますよね。『薬屋のひとりごと』ではたとえば“静かに生活している”猫猫も魅力的なので、その雰囲気もモノローグに乗せて彼女の頭の回転の速さも表現しつつ、淡々と世界観を説明される心地よさをお届けできたらいいなと。

——主人公のセリフ量が突出して多い作品ならではのプレッシャーを感じることはありますか?

悠木:足を引っ張りたくないという気持ちはありますが、かといってものすごい緊張感で挑むのも少し違う気がしていて。やっぱり人の温かさがミステリーに浸透していくところが『薬屋のひとりごと』のいいところだから、現場の我々も賑やかに温かく収録したいなと。緩めるところは緩めて、マイクの前では100点を出そうと切り替えられると、みんな働くのがどんどん楽しくなるだろうなと考えています。我々にとってアニメの現場はアートではあるけど、“職場”でもあるので、働きやすい場を作っていきたいという思いはあるかもしれません。もちろん皆さんの力もお借りしつつではありますが。

——悠木さんは現場では意識的に周りの雰囲気を盛り上げたり、ムードメーカー的な立ち回りをすることが多いのでしょうか?

悠木:そこまで意識していないけど、「せっかく時間があるならこの人の話聞いてみようかな」くらいの気持ちはあるかもしれません。どんなことを考えている人なのか知るのは面白いし、話してみるとそれぞれの考え方の違いがあったりして、それを知っていると「だからこの人のお芝居のアプローチはこうなっているんだ……!」と自分の中で繋がったりします。その人の情報を集めてみたいなと思って話しかけたりはするんですが、あんまりやりすぎても「怖いかな」「圧あるかな」と心配になるので(笑)、どのくらいまでがほどよい距離感なのかしらと思いながら現場にいます。

——大塚さんの人柄を知ったことで新たな発見が得られたことはありましたか?

悠木:ありますよ。いつだったかは忘れたんですけど、大塚くんに「大塚くん、好きな武器何?」って聞いたんです。

——好きな武器を……?

悠木:そんな質問を唐突にしたらすごく真面目に考えてくれて。「手で掴むタイプのブレード、カッコいいと思います」「えー、めっちゃ意外!」みたいに話したんですが、こんなにくだらない質問にこんなに真面目に答えてくれるんだ、この人誠実だな、申し訳ないなと思った記憶があります(笑)。あと、漢字の読みやアクセントを私は失念しがちなんですが、彼は非常に真面目にそこを覚えていてくれるので、「これはイ↑カンだっけ? イカ↑ンだっけ?」「イ↑キョクだっけ? イキョ↑クだっけ?」などと話し合って助けてもらっています。

——そういう細かいアクセントの違いがたくさんあると台本を読むのも難しそうですね。

悠木:作品によって変わるんですが、『薬屋のひとりごと』では全部の漢字にルビを振っています。本当に「一」とか簡単な漢字にも振っていて。

——日本語の漢字にもルビを振っているということですか?

悠木:そうです。というのも、長文のモノローグを頭の中だけで「どこを強調して、どういう絵に合わせて……」と処理していくと、どうしても漢字の読みと口の動きが甘くなりがちなんです。たとえば「一」と書いてあっても「イチ」なのか「ヒト」と読むのか、時には「イ」だけになる場合もある。「空」と書いてあっても「ソラ」なのか「カラ」なのか、パッと見たときに一瞬で判断できないと、後半になればなるほどミスが増えてしまうから、それを補うためにとにかく全部の漢字にふりがなを振っています。あとは強調したいところの立てどころに丸をつけたり。逆にワンセンテンスがすごく長いんだけど、途中で切ってしまったりどこかにアクセントを付けたりすると意味が変わってしまうから、一息で同じ調子で言い切りたいフレーズにはカッコをつけたり。といってもこれは猫猫のモノローグによってストーリーが進行する『薬屋のひとりごと』だからこそやっていることであって、たとえばアクションがメインの作品ではアクションが入る部分にチェックを入れるだけだったりする台本もあります。もう少し身体の勢いで演じたほうがいいときもあるので使い分けていますね。

——大変興味深いお話です。我々も書き言葉を扱う仕事をするうえで、読点の位置で文章の意味が変わってしまうことなどを日々意識するので。

悠木:そうですよね。同じ台詞だとしても、「原作ではこの位置に読点があるんだけど、アニメではそれがないものとして発声するほうが伝わりやすいな」という場合があったり、逆に読点を追加しなきゃ絶対に伝わらないニュアンスもあったりするので、スタッフさんたちと相談しながら取り組んでいます。モノローグ中心の作品だからこそ大事なこだわりですよね。

■放送情報
TVアニメ『薬屋のひとりごと』第3期
日本テレビ系「FRIDAY ANIME NIGHT」にて、毎週金曜23:00〜放送
キャスト:悠木碧(猫猫役)、大塚剛央(壬氏役)、小西克幸(高順役)、橘龍丸(馬閃役)、豊永利行(羅半役)、内山昂輝(陸孫役)、藤原夏海(趙迂役)、上田麗奈(白娘々役)、島本須美(ナレーション)
原作:日向夏(ヒーロー文庫/イマジカインフォス刊)
キャラクター原案:しのとうこ
監督:筆坂明規
副監督:中川航
シリーズ構成:長沼範裕
脚本:柿原優子、千葉美鈴、小川ひとみ
キャラクターデザイン:中谷友紀子
美術監督:髙尾克己
色彩設計:相田美里、岡崎菜々子
CGIディレクター:永井有
撮影監督:鈴木麻予
編集:今井大介
音響監督:はたしょう二
音楽:神前暁、Kevin Penkin、桶狭間ありさ
オープニングテーマ:ヨルシカ「雲を抜け風下へ私だけ」
エンディングテーマ:Eve「AIYOU」
アニメーション制作:OLM
製作:「薬屋のひとりごと」製作委員会
©日向夏・イマジカインフォス/「薬屋のひとりごと」製作委員会
公式サイト:https://kusuriyanohitorigoto.jp
公式X(旧Twitter):@kusuriya_PR

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10月23日(金)

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