『踊る大捜査線 N.E.W.』は“第1話のセルフリメイク”だった? 長年のファンにとっての成功点

 『踊るFINAL』の時代から14年が経ったことで、湾岸署の仲間はバラバラになり、退職したものも大勢いる。そのため『踊るN.E.W.』の青島はこれまでと同じように明るく振る舞っていても、どこか寂しそうに見える。

 だが、彼は決して一人ではない。かつての仲間たちはそれぞれの現場で頑張っており、連絡を取り合うことで、独自のネットワークを築いている。

 思えばそれは和久がやっていたことだが、刑事を長年続けてきた青島には立場を超えて個人として繋がる仲間たちが大勢存在することが次第にわかってくる。

 その繋がりとは、警察官僚の上下関係とも、ネットで繋がる匿名の関係とも違うもので、長い時間をかけて青島が積み上げてきた個人的な関係ゆえにとても強固な絆である。

 『踊るN.E.W』は、『室井慎次』が示した「老い」というテーマを青島を主人公に描いており、その際に『踊る』の歴史をフル活用しているのが、本作の面白さとなっている。

 劇中には過去に『踊る』シリーズに出演した俳優が年齢を重ねて同じ役で再登場しているのだが、一人ひとりの人生が感じられるものとなっており、感慨深かった。

 中でももっとも強く人生を感じたのが、青島が田中文夫(近藤芳正)と再会する場面だ。田中は『踊る』のテレビドラマ第1話に登場した、青島が初めて湾岸署で取り調べをした犯人だ。仕事が退屈で刺激を求めて窃盗を繰り返す中で殺人事件を起こしてしまった田中の姿を見て、同じように営業の仕事が嫌で脱サラして刑事になった青島は、自分も田中のようになっていたかもしれないと思った。その意味で田中はもう一人の青島と言える存在だったが、あれから長い年月が経ち、社会復帰してタクシー運転手として働く田中が青島と再会する姿は、出演俳優が演じる役と一緒に年齢を重ね、我々と同じ時代を生きてきた『踊る』シリーズだからこそ実現できた名シーンだったと言える。

 テレビドラマや映画は長く続けば続くほど面白いと筆者は思っているのだが、それは「時間の流れ」を物語の中に取り入れることができるからだ。

 同じ俳優が演じるキャラクターが老いて再登場したり、過去に出会った者同士が年齢を重ねて再会する姿には、ドキュメンタリー的な説得力と感動がある。

 この「時間の流れ」が生み出すドキュメンタリー的な面白さを『踊るN.E.W.』は最大の武器として見事に使いこなしており、だからこそ年老いた青島の姿がとても魅力的に映る。

 若いときに活躍した主人公が老いた姿を魅力的に描くことは「老い」そのものを肯定することに繋がるのだが、成功している物語は決して多くない。

 そんな中、『踊るN.E.W.』は老いた青島の姿をとても魅力的に描き出すことに成功しており、青島を見ていると、年を取るのも悪くないと感じる。

 そう思わせてくれた時点で、今回の映画は大成功である。

■公開情報
『踊る大捜査線 N.E.W. メトロポリスを駆け抜けろ!』
全国公開中
出演:織田裕二、趣里、白洲迅、佐々木蔵之介、増田貴久、野呂佳代、玉井詩織(ももいろクローバーZ)、藤吉夏鈴(櫻坂46)、齊藤なぎさ、佐藤二朗、ユースケ・サンタマリア、真矢ミキ、水野美紀、甲本雅裕、寺島進、伊藤淳史、滝藤賢一、松重豊、松下洸平、斉藤暁、小野武彦、北村総一朗
監督:本広克行
脚本:君塚良一
プロデュース:亀山千広
音楽:松本晃彦
主題歌:織田裕二「Love Somebody(CINEMA Version)」(ユニバーサル ミュージック)
配給:東宝
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