『豊臣兄弟!』 [Alexandros] 磯部寛之が体現した姫と鬼の二面性 「好きじゃき」が結んだ絆

 NHK大河ドラマ『豊臣兄弟!』第36回「姫若子と鬼若子」では、秀長(仲野太賀)を総大将とする四国攻めが開戦となる。相手は、四国一統を悲願とする長宗我部元親(磯部寛之)だ。

 秀長は、世に秀吉の力を誇示するため、天然の要害・四国を1000隻の船という圧倒的な力で攻め落とす大規模作戦を実行。元親の家臣・谷忠澄(堀部圭亮)の守る一宮城は総崩れとなり、為す術もなかった。

 今回、特筆すべきなのは週タイトルにもある姫若子と鬼若子。これは元親の異名で、内気で頼りない様子から姫若子と呼ばれていた彼が、初陣となった「長浜の戦い」にて敵兵を次々と討ち取る鬼神の如き活躍を見せたことから鬼若子と呼ばれるようになった。本格登場を果たした第25回より、その強く優しい二面性は垣間見えていたが、今回ははっきりと演出も加わり描かれる。

 秀長との間の仲立ちとして元親の籠城する白地城へとやって来た谷。書状に書かれていたのは、今降伏すれば土佐一国の領有を許すということ。雷雨の中、稲妻が光るたびに、サブリミナル的に映し出される般若の仮面。「またしても土佐一国。であれば、わしのこれまではなんやったがじゃ? もう、じゅうぶんじゃ!」と谷を相手に鬼の形相でじりじりと詰め寄っていく。書状を投げ捨てる際の元親のセリフが聞き取りづらいものの、それが“生っぽい”セリフで怒りを露呈しており、緊迫した雰囲気を作り出しているように思えた。

 そして、一方の姫若子としての一面が、秀長が元親を説き伏せるきっかけとなる。秀長が送ったのは、華やかな女物の着物。秀長と初めて会ったあの日、「なぜか穏やかな心持ちになれるがじゃ」と答えた“誠の自分”を思い出し、元親は秀吉(池松壮亮)の元に降ることを決める。鮮やかな装束を着た元親と秀長が対面。美しいものに身を包むことで心の中に潜む醜き鬼を封じてきた元親は、秀長のおかげで“誠の自分”を取り戻すことができた。なぜそこまでしてくれるのか――その問いかけに秀長は「好きじゃき」とあの時の元親の言葉を用いて答える。今からでも友として、そして共に天下一統を目指すことはできる。秀長と元親の間にはこれまでの時を取り戻すかのような永遠で温かな時間が流れていた。

 一方で、秀吉は、宗易(千利休/吉岡秀隆)のいる京・妙顕寺城を訪れていた。目的は近衛家の前当主・近衛龍山(前久/前野朋哉)に会うためであり、狙うは関白の座だ。なぜ将軍ではなく関白なのか、そう問われた秀吉は帝の代わりとなって、全ての民の上に立つものになりたいと答える。つまりは、関白の地位を得ることで、朝廷の権威を借り、全国支配を正当化しようとしたのだ。一介の小百姓が国の最高権力者へと上り詰めた奇跡の瞬間。ここから秀吉は豊臣姓を得て、関白職を豊臣家の世襲に近づけることとなる。

 第37回「秀長の国」からは「大和郡山編」がスタート。秀長が領国で自分ならではの治世を実現していく姿が描かれ、新キャストも続々と登場する。第36回では元親の“誠の自分”を引き出す相手として秀長がいたが、秀吉を前に弟を思うこと、初心を取り戻させようとしたのが蜂須賀正勝(高橋努)だった。前野長康(渋谷謙人)と共に、兄弟を誰よりも近くで見守ってきた正勝の別れが近づいている。

■放送情報
大河ドラマ『豊臣兄弟!』
NHK総合にて、毎週日曜20:00〜放送/毎週土曜13:05〜再放送
NHK BSにて、毎週日曜18:00〜放送
NHK BSP4Kにて、毎週日曜12:15〜放送/毎週日曜18:00〜再放送
出演:仲野太賀、池松壮亮、吉岡里帆、浜辺美波、白石聖、坂井真紀、宮澤エマ、倉沢杏菜
大東駿介、松下洸平、中島歩、要潤、山口馬木也、宮﨑あおい、小栗旬ほか
語り:安藤サクラ
脚本:八津弘幸
制作統括:松川博敬、堀内裕介
演出:渡邊良雄、渡辺哲也、田中正
音楽:木村秀彬
時代考証:黒田基樹、柴裕之
プロデューサー:高橋優香子、舟橋哲男、吉岡和彦(展開・プロモーション)、国友茜(広報)
写真提供=NHK
公式サイト:https://www.web.nhk/tv/pl/series-tep-P52L88MYXY
公式X(旧Twitter):@nhk_toyotomi
公式Instagram:@nhk_toyotomi

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