『君の好きは無敵』最終回直前に描かれた愛の危うさ “好き”は本当に無敵だったのか

 一方の瀬尾も、「夢中になるものがあって羨ましい」と言いながら自分を変人扱いする周囲の視線に傷ついてきた。正反対に見える2人だが、好きの熱量が周囲と噛み合わず、その気持ちを誰とも分かち合えない孤独を抱えてきた点では同じなのだろう。

 そんな2人に、杏奈は好きという気持ちに大小はあっても、優劣はないと語りかける。店先でチュエラを「かわいい」と言った女の子の関心が、すぐ別のキャラクターに移ったとしても、その平凡な好きを嬉しいと思えた。人生を懸けられるほど大きな好きも、ほかのものに簡単に負けてしまう小さな好きも、どちらも大切なのだ。

 だからこそ、好きレベル100の瀬尾と、好きレベル1の大三島は互いに必要なのだと杏奈は説く。瀬尾がアクセルなら、数字や現実を重んじる大三島はブレーキ。2人が力を合わせれば、チュエラが誰かにとって生涯の好きになる可能性も、ふと目に留めた誰かから一瞬だけ「かわいい」と思ってもらえる可能性も広げていける。

 瀬尾もまた、大三島の孤独に自分との共通点を見出した。「お前は好きが小さすぎて言えなかった。俺は好きがでかすぎて言えなかった」。そう寄り添ったうえで、瀬尾は大三島への“レベル1”の好きを臆することなく口にする。大きな好きも小さな好きも、誰もが堂々と言える世界を作りたい。その思いが大三島の心を動かし、出資が決定。佐々岡と廣瀬も、デザイン瀬尾に戻ってくることになった。

 すべてが丸く収まったかのように見えた矢先、杏奈は大三島に後を託し、デザイン瀬尾を去る。瀬尾からの好意が迷惑だったとし、「瀬尾さんのその独断的な好きが、私の好きな仕事を奪ったんです」とキッパリ別れを告げたのだ。

 好きは本人を強くする一方で、その強さゆえに、相手の気持ちや居場所を脅かすこともある。杏奈が告げた言葉は、瀬尾を遠ざけるために選んだ表向きの理由なのだろう。それでも、その言葉が指摘する好きの危うさまで否定することはできない。

 また、好きなものを守るとき、自分の損得を顧みないのが瀬尾だ。プールに落ちかけたモルコを身を挺して助けたように、杏奈が傷つけられれば感情をむき出しにして相手に食ってかかる。その結果、自分が炎上し、会社を窮地に晒したうえに、杏奈と一緒でなければ意味がないと、チュエラの未来につながる万博アンバサダーまで辞退した。

 瀬尾にとっては、そのすべてが自分の好きに正直に従った結果なのかもしれない。だが、杏奈からすれば、自分がそばにいる限り、瀬尾はまた自分を守るために何かを犠牲にする可能性がある。瀬尾が自分に向ける好きの大きさを知ってしまったからこそ、これ以上彼を暴走させないために、自ら離れることを選んだのではないだろうか。瀬尾から贈られた指輪を突き返し、あえて残酷な言葉をぶつけたのも、二度と自分を追いかけてこないようにするためだったと考えれば、杏奈の泣きそうな表情にも合点がいく。

 ただ、瀬尾の意思を確かめないまま、彼のためを思って関係を断ち切る杏奈の決断もまた、ある意味では独断的だ。互いを守ろうとするあまり、2人とも相手が本当に望んでいることを置き去りにしている。

 好きは、本当に無敵なのか。その思いに突き動かされるあまり、相手の気持ちや、自分が守ろうとしていたものまで見失ってはいないか。タイトルに投げかけられた問いに、杏奈と瀬尾はどのような答えを出すのだろう。次週、いよいよ迎える最終回を見届けたい。

■放送情報
火曜ドラマ『君の好きは無敵』
TBS系にて、毎週火曜22:00〜22:57放送
出演:松本若菜、佐野勇斗、小野花梨、金田哲(はんにゃ.)、中村隼人、白本彩奈、島崎和歌子、藤井隆
脚本:宮本武史
演出:竹村謙太郎、府川亮介、渡部篤史、尾本克宏ほか
主題歌:星野源
プロデューサー:岩崎愛奈
協力プロデューサー:小髙夏実
編成:吉藤芽衣
取材協力:株式会社サンリオ
製作:TBSスパークル、TBS
©TBS
公式サイト:https://www.tbs.co.jp/kiminosukihamuteki_tbs/
公式X(旧Twitter):@kiminosuki_tbs

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