『スピナーベイト』は今夏イチのダークホース! 此元和津也原作の映像化、怒涛の展開を総括

複数の物語が交錯する、此元和津也の巧みな群像劇

 本作は此元和津也が2010~11年に月刊誌『コミックバーズ』(幻冬舎)で連載していた同名漫画をドラマ化したものだ。漫画『セトウツミ』(秋田書店)の作者として知られている此元だが、近年は脚本家として活躍しており、2025年に放送された連続ドラマ『シナントロープ』(テレ東系)が絶賛され、第44回向田邦子賞を受賞した。謎に満ちた群像劇が少しずつ進行していき、やがて一つの物語に収斂し、全てが明らかになる伏線回収のカタルシスが『シナントロープ』の面白さだったが、それは初の連載漫画となった『スピナーベイト』の時点から健在だった。

 劇中ではスピナーベイトの高校生たちの物語と、亀貝組の組員同士の内部抗争、三井に接触してきた謎の男・吉見の殺人犯探し、三井の友人の上田大悟(吉田晴登)と、なぜか三井のことを引きこもりの兄・順平だと思い込んでいる父親の伸二(山中聡)の親子の物語が同時進行で描かれるのだが、やがて、連続殺人犯だと思われる通り魔・ハルオ(久獅)が現れ、スピナーベイトの少年たちを次々と襲うようになる。激闘の末、三井たちはハルオを捕まえ、亀貝組に引き渡す。しかし、ハルオの財布を調べたことで三井は真犯人が別にいることに気付く。

 ハルオを筆頭に、本作には平然と暴力を振るう人間が次々と登場する。

 彼らは社会から見れば異常者に見えるが、暴力を振るう根拠となる自分だけのルールが心の中に存在する。

なぜ彼らは「ルール」に縛られてしまうのか

 第9話で、連続殺人犯であることが明らかとなった吉見健太郎もそうだった。彼が、妻を死に追いやった高橋に復讐するためだった。

 高橋は個人情報を握った犯罪者を脅して当たり屋をやらせることで無理やり犯罪者を作り出していた。連続殺人事件で殺された2人は、吉見の妻を殺した当たり屋で、ハルオを操っていたのも吉見だった。高橋に制裁を加えた吉見は姿を消し、亀貝組が壊滅したことでスピナーベイトは自然消滅した。しかし、ポイントを稼ぐために自ら通り魔となり、自作自演を繰り返していた内新次郎は行方不明だった。そして、上田大悟の元に突然、吉見が現れ、彼をある場所に連れて行く。

 上田大悟の引きこもりの兄の正体など、まだまだ謎は残されており、残り2話でどのように明かされるかがミステリードラマとしての見どころだが、それ以上に強く感じたのは、復讐に囚われた吉見の悲哀だ。

 通り魔となった内進新進次郎もそうだが『スピナーベイト』には、自分自身が作り出したルールに縛られてしまった男たちの悲哀が描かれている。

 

 ルールに縛られて自滅していく彼らの姿を他人事と思えないのは、我々視聴者もまた、社会のルールだけでなく、自分自身が作り出したルールに縛られて生きていることに気付かされるからだろう。

 ルールに縛られることの恐ろしさと悲哀を描いた屈指の青春ドラマである。

■放送・配信情報
『スピナーベイト』
フジテレビ(関東ローカル)にて、毎週火曜25:30〜放送
FODにて独占見放題配信
TVerにて無料見逃し配信
出演:加藤清史郎、駿河太郎、萩原護、南琴奈、奥野壮、高橋侃、吉田晴登、吉澤要人(原因は自分にある。)、伊藤あさひ、桃児、仲野温、吉村界人、山中聡、中村梅雀、長田拓郎、久獅、福松凜、タカハシシンノスケ、吉田伶香、校條拳太朗、白鳥晴都
原作:此元和津也『スピナーベイト』(幻冬舎コミックス刊)
監督:平瀬遼太郎
脚本:大久保ともみ(1話、10話・11話)、西垣匡基(4話・5話、8話・9話)、三谷伸太朗(2話・3話、6話・7話)
音楽:西村大介/DUNK
主題歌:THE SPELLBOUND「Spinner」(Warner Music Japan)
制作プロダクション:セディックドゥ
製作:NBCユニバーサル・エンターテイメントジャパン
©此元和津也/幻冬舎コミックス/NBCユニバーサル・エンターテイメントジャパン
公式サイト:https://www.nbcuni.co.jp/jcon/spinnerbait/
公式X(旧Twitter):@spinnerbait_drama

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