生田絵梨花、『風、薫る』再登場で“芯の強さ”を示す 多江役に感じる俳優としての現在地

 こうした振れ幅のある人物は、現在の生田だからこそ説得力を持って映るのかもしれない。ミュージカルをはじめ数々の舞台に立ち続けてきた生田には、声や身体を使って人物の感情を明確に届ける力がある。一方、近年の映像作品では、『アンメット ある脳外科医の日記』(カンテレ・フジテレビ系)で感情を表に出さない西島麻衣を演じ、『素晴らしき哉、先生!』(ABCテレビ・テレビ朝日系)では感情を爆発させる主人公・笹岡りおを演じるなど、役柄にあわせて表現の強度を細かく変化させてきた。『明日はもっと、いい日になる』(フジテレビ系)でも、児童心理司・蒔田向日葵として静かな佇まいや視線で人物の感情を伝えている。舞台で培った“届かせる力”を持ちながら、カメラの前ではそれを必要な分だけ引き算できることが、今の生田の俳優としての大きな強みだろう。

 多江は、まさに生田のそうした表現の幅が活きる役でもある。直美と張り合う場面や、父に自分の意思をぶつける場面では、声の強さやまっすぐな佇まいによって、多江の負けん気や芯の強さを際立たせる。一方で、迷いや不安を抱える場面では、その強さを少し緩めることで、多江の不器用さや脆さを見せてきた。感情を大きく振り切るだけではなく、その揺れを丁寧に見せることで、多江という人物の変化に説得力を与えている。

 帝都医大病院で働き始めてからも、多江らしい上昇志向は変わらなかった。初任給の低さに驚けば、「出世してもっと高給取りになる」と意気込み、りんが病院を離れる際には、この国の看護のトップを目指すと宣言する。ただ、養成所に入ったばかりの頃と比べれば、その言葉が持つ意味は変わっている。医者になれなかった自分を証明するためではなく、看護婦という仕事で上を目指したい。多江の強さが、自分を守るためのものから、自ら選び取った仕事への誇りへと変わってきたのだ。

 だからこそ、陸軍予備病院で生田が見せる険しい表情にも目を奪われる。今度、多江の前に立ちはだかっているのは、患者が体調不良すら口にできない軍隊の価値観であり、看護婦に向けられる偏見だ。捨松に対して多江が口にした「一人でも多くの人を助けたい」という言葉はシンプルだが、医者になれなかったことに苦しみ、看護される側を経験し、それでも看護婦として生きることを選んだ多江が口にするからこそ重みがある。

 強さだけではなく、その奥にある迷いや脆さまで見せながら、多江という人物を形作ってきた生田。陸軍予備病院で新たな局面を迎える多江を、これからどのように演じていくのか。第22週は、多江という人物だけでなく、俳優・生田絵梨花の現在地を改めて感じられる週にもなりそうだ。

■放送情報
2026年度前期 NHK連続テレビ小説『風、薫る』
NHK総合にて、毎週月曜から金曜8:00~8:15放送/毎週月曜~金曜12:45~13:00再放送
NHK BSプレミアムにて、毎週月曜から金曜7:30~7:45放送/毎週土曜8:15~9:30再放送
NHK BS4Kにて、毎週月曜から金曜7:30~7:45放送/毎週土曜10:15~11:30再放送
出演:見上愛、上坂樹里
脚本:吉澤智子
原案:田中ひかる『明治のナイチンゲール 大関和物語』
制作統括:松園武大
プロデューサー:川口俊介
演出:佐々木善春、橋本万葉ほか
写真提供=NHK

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