生田絵梨花、『風、薫る』再登場で“芯の強さ”を示す 多江役に感じる俳優としての現在地

 りん(見上愛)や直美(上坂樹里)とともに看護婦を目指し、帝都医大病院を経て、NHK連続テレビ小説『風、薫る』第22週「明るい未来」では陸軍予備病院で働いている多江(生田絵梨花)。初登場時から気の強さと向上心を前面に出してきた人物だが、物語が進むにつれて、その“強さ”の意味も少しずつ変わってきた。そして、その変化を細やかに見せているのが生田絵梨花の芝居である。

 第106話では、りんと直美に送られた多江からの手紙の中に、彼女が軍人と不適切な関係にあるとして注目されていることを伝える新聞記事の切り抜きが入っていた。上下関係が絶対的な軍隊において、看護婦に弱みを見せることをよしとしない軍人たち。多江が看護している磯部(友永杏慈)も上官の目を気にし、自身の体調を伝えられずにいる。そんな状況を見かねた捨松(多部未華子)が助け舟を出し、磯部はようやく悪寒がすると口にすることができた。

 第22週でまず印象に残るのが、いつになく険しい表情を浮かべる生田だ。ただ、多江が厳しい顔を見せること自体は珍しくない。養成所に入った当初から、豊富な知識を持ち、自分の意見をはっきりと口にする優等生。直美ともたびたび衝突してきた。しかし、生田は多江を単に“気の強い女性”としては演じてこなかった。

 その意識は、生田の表情や声の使い方にもよく表れている。背筋を伸ばして相手の目を見据え、少し早いテンポできっぱりと言葉を返す。多江がその場にいるだけで空気が引き締まるような明瞭さがありながら、予想外の言葉を向けられたときには、一瞬だけ視線が揺れたり、言葉に詰まったりする。強さの奥にある焦りや脆さを説明的に見せるのではなく、ほんのわずかな“間”で感じさせるのだ。

 その多江が大きく変わるきっかけとなったのが、父・仙太郎(吉岡睦雄)との衝突だった。医者になる夢を叶えられず、さらに父から縁談を勧められた多江は、看護婦養成所を辞めようとする。しかし、その直後に高熱で倒れ、今度は自分が看護される側となったことで、看護婦という仕事の意味に気づいていく。そして父を前に、「私、看護婦になります」と自らの道を宣言する。涙を浮かべながらも視線をそらさない生田の姿には、それまで多江を動かしていた“負けたくない”という思いとは違う、自分の人生を自分で決めようとする意志が宿っていた。

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