『風、薫る』“藤次”中村倫也が内務省衛生局と判明 りんに戻り始めた看護婦の自信

 NHK連続テレビ小説『風、薫る』第94話では、りん(見上愛)と直美(上坂樹里)、黒川(平埜生成)らの懸命な看護が、頑なだった村人たちを少しずつ動かしていく。

 当初は病人を遠ざけ、りんたちの看護にも不信感を向けていた村人たち。しかし、目の前で患者と向き合い続けるりんや直美、黒川の姿を見て、村の空気は変わりつつあった。とはいえ、病は村人たちの理解を待ってはくれない。アサ(美山加恋)が入院してから1週間が経っても、その容体はなかなか改善しなかった。

 直美が気にかけていたのは、アサの息子・長太郎(渋谷そらじ)のことだ。母に会えないまま、長太郎は不安な時間を過ごしている。感染を広げないためには、会わせないという判断が正しい。だが、もしものことがあった時、本当にこのままでいいのか。りんもまた、そのことに悩んでいた。

 りんが思い出したのは、自分の父のことだった。父と会えたのは、戸越での限られた時間だけ。会いたくても会えないまま別れることになった寂しさを、りんは知っている。だからこそ、長太郎の置かれた状況を他人事にはできない。「病気に腹が立つ!」とりんが口にするのも無理はない。誰かが悪いわけではないのに、大切な人を引き離し、伝えたい言葉まで奪っていく。怒りの向けどころがないからこそ、余計に苦しい。

 そんな中、アサの容体が急変する。りんたちは急いで黒川を呼び、処置にあたる。「ダメだ」と弱音を漏らすアサのそばで、りんは必死に励まし続ける。黒川も駆けつけ、なんとか危機を乗り越えるが、そこで明らかになるのは看護だけではどうにもならない環境の問題だった。このまま狭い場所に患者を押し込めておけば、治るものも治らない。

 そこで動いたのが太助(板橋駿谷)たち村人だった。彼らは村長の本間(大高洋夫)のもとへ向かい、村長の家に患者を収容できないかと持ちかける。本間は一度は断るものの、自分の妻も病にかかったことを知ると、渋々ながら了承する。身近な人が倒れて初めて動くのか、と言いたくもなるが、それでも村人たちが自分たちの問題として病に向き合い始めたことは大きい。りんたちが声を上げ続け、看護を続けてきた時間が、ようやく村を動かし始めたのだろう。

 一方、直美は様子をうかがっていた長太郎に声をかける。母に何を伝えたいのか。直美は、長太郎自身の言葉を引き出そうとする。そして長太郎は、看病されているアサに向かって大声で叫ぶ。「おっかぁー!」「頑張れー!」。それは決して特別な言葉ではないが、母に届けたい思いとしては、それで十分だった。

 長太郎の声を聞いたアサは涙を流す。会うことはできなくても、息子の声は確かに届いた。アサはりんの手をしっかりと握り、りんも「気をしっかり持って」と応える。かつて山本の記憶がよみがえり、患者に触れようとする手が震えていたりんだが、この時は、アサの手をためらわずに握ることができた。りんにとっても、もう一度患者に手を差し出せた大きな一歩となったはずだ。

 それから1カ月後、軽症者は退院し、村は少しずつ落ち着きを取り戻す。藤次(中村倫也)も回復し、内務省衛生局の人間であることが判明。今回は、厳しい環境で患者を救った直美たちの働きを評価していた。だが、公式の人物紹介で「後にふたりの大きな壁となる」と書かれているのがどうしても引っかかる。もしそうだとしたらどういう形で2人の前に立ちはだかることになるのかだろうか。

■放送情報
2026年度前期 NHK連続テレビ小説『風、薫る』
NHK総合にて、毎週月曜から金曜8:00~8:15放送/毎週月曜~金曜12:45~13:00再放送
NHK BSプレミアムにて、毎週月曜から金曜7:30~7:45放送/毎週土曜8:15~9:30再放送
NHK BS4Kにて、毎週月曜から金曜7:30~7:45放送/毎週土曜10:15~11:30再放送
出演:見上愛、上坂樹里
脚本:吉澤智子
原案:田中ひかる『明治のナイチンゲール 大関和物語』
制作統括:松園武大
プロデューサー:川口俊介
演出:佐々木善春、橋本万葉ほか
写真提供=NHK

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