『ガス人間』小栗旬の座長力に圧倒される 可能性を拡張する“国民的俳優”としての真価
ガス人間は自身の肉体をガスにして自在に操ることができる特殊能力者である。これに渡り合うことができるのも、小栗だからこそ。まもなく『キングダム 魂の決戦』が封切られるところだが、数々のフィクショナルな作品世界に彼が身を置いてきたことは、やはりこの対峙の構図に説得力を与えている。いくら優れた演技者であっても、メインの表現領域がリアリズム作品ばかりだと、この力強い構図は生まれない。もちろん、乱闘シーンなどにおける小栗の身体能力の高さや、画面を超えて伝わってくる熱量の大きさもこれを支えている。俳優・小栗旬があってこそ、岡本賢治というキャラクターは成立したのだろう。
とはいえ本作の小栗は、座長として力強く突っ走り続けているわけではない。賢治は腕っぷしにも覚えのある刑事だが、完全無欠のヒーローではもちろんない。特殊能力も持ち合わせていない、ただの人間だ。本作では矢継ぎ早に派手なシーンが生み出されるが、先述しているように群像劇が繰り広げられるものでもある。
いくつものドラマが、『ガス人間』では絶えず交差する。それらは豪快なものもあれば、静けさを持ったものもある。シーンによっては小栗も、抑えるところは抑えている。座長である彼が自身のエネルギー量を的確にコントロールすることで、この作品が許容する俳優たちの演技のトーンの幅が広がっている印象を抱いた。
本作は地上波ドラマで主演を張るような俳優が何人も出演しているところも話題だが、良質なインディペンデント映画の誕生に貢献してきた演技者たちが次から次へと登場するのも、映画ファンにとっては胸が熱い。大衆向けの作品と、ミニシアター系の作品だと、俳優たちの演技の質感は違ってくるもの。それらがこうして一堂に会することが実現しているのには、片山監督の演出家としての力量の大きさもさることながら、やはり小栗の主演俳優としての器の大きさを実感する。強い説得力をもって、作品の可能性を拡張してみせる。これこそが真の国民的俳優の姿なのかもしれない。
■配信情報
Netflixシリーズ『ガス人間』
Netflixにて世界独占配信中
出演:小栗旬、蒼井優、広瀬すず、林遣都、UTA、芋生悠、伊島空、こばやし元樹、古館寛治、川瀬陽太、野村周平、中島歩、斉藤柚奈、柊木陽太、三河悠冴、松浦祐也、モーリー・ロバートソン、吉原光夫、三石琴乃、近藤芳正、和田光沙、髙嶋政宏、賀来賢人、森川葵、原日出子、中野英雄、夏川結衣、酒向芳、ピエール瀧、岡部たかし、青木崇高、竹野内豊
監督:片山慎三
脚本:ヨン・サンホ、リュ・ヨンジェ
原作:『ガス人間第一号』(監督:本多猪四郎/脚本:木村武)
エグゼクティブ・プロデューサー:ヨン・サンホ、市川南、大田圭二、臼井央、佐藤善宏(Netflix)
企画・プロデュース:馮年、呉良次
プロデューサー:小野田壮吉、ヤン・ユミン
企画:山内章弘
VFX:白組
VFXスーパーバイザー:髙橋正紀、新堀巧
企画・製作:東宝
共同企画・制作:WOWPOINT
制作プロダクション:TOHOスタジオ
配信:Netflix
作品ページ:https://www.netflix.com/title/81714240