藤原季節は『風、薫る』で最も目が離せない男? “直美”上坂樹里と築く“特別な絆”

 それから寛太は、直美の母親探しをしてくれることになる。それは、恋というより、家族がなく天涯孤独の2人だからこその同情からのように見えた。色っぽい関係ではないが、孤独で寂しい2人が支え合っている姿には切なさを感じる。寛太は時々現れると、直美に母親の情報を持ってくる。母親は女郎だったらしいこと、妊娠して堕胎する女郎も多い中、直美を産んだのだという話をしたりして、直美の慰めにもなっていく。

 直美が看護婦になるために邁進する間、寛太が何をしていたのか不明だが、再び現れたときには、また随分と立派な身なりになっていた。今度は、憲法発布を偽って、またもや金持ちから金を集める詐欺を企てているらしい。直美がりんの家族と一緒に住んでいることを知ると、「家族ごっこか」などと皮肉を言う。

 どう見ても寂しそうな顔で嫉妬していて、この寛太という男は、直美と擬似家族か兄妹のような感覚を持っているのだろうと気づかされる。演じる藤原もインタビューで、「寛太は心の中にどこか、さみしさを抱えているから会いに行く。でも、直美にはりんという心を許せる存在がいるから、複雑な気分でもあります 」と話していて、そんな男の哀愁に視聴者は惹きつけられてしまうのかもしれない。

 実際、寛太は詐欺師であっても、それほど悪い奴には思えない。明治という国のシステムが変わっていく中で、一ノ瀬家のように伝染病や飢餓に苦しんで貧困に陥る人や、直美のような訳ありの孤児も多かったのだろう。一方で、日本橋の舶来品店「瑞穂屋」の主人・清水卯三郎(坂東彌十郎)のように、その才覚で成金となった人たちもいたはずだ。旧来の仕事で稼げなくなった人たちやその歪みの中で落ちていく人たちにとっては、不平等と捉える向きもあっただろう。寛太は、当時の不安定な世の中へのアンチテーゼ的な役割もあるのかもしれない。ネズミ小僧ではないけれど、浮ついた金持ちをターゲットにしている寛太は、ただの犯罪者ではないように思える。

 史実では、直美のモデルである鈴木雅は軍人と結婚したようだ。ということは、病室に見舞いに来ていた福岡出身の軍人が相手だろうか、という憶測はできる。しかし、もしそうなったとき、寛太は果たしてどんな反応を見せるだろうか。今までに見せなかった、また別の顔が見られそうな気がする。変幻自在の藤原の芝居もあって、今後の見どころのひとつになりそうだ。

■放送情報
2026年度前期 NHK連続テレビ小説『風、薫る』
NHK総合にて、毎週月曜から金曜8:00~8:15放送/毎週月曜~金曜12:45~13:00再放送
NHK BSプレミアムにて、毎週月曜から金曜7:30~7:45放送/毎週土曜8:15~9:30再放送
NHK BS4Kにて、毎週月曜から金曜7:30~7:45放送/毎週土曜10:15~11:30再放送
出演:見上愛、上坂樹里
脚本:吉澤智子
原案:田中ひかる『明治のナイチンゲール 大関和物語』
制作統括:松園武大
プロデューサー:川口俊介
演出:佐々木善春、橋本万葉ほか
写真提供=NHK

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