草彅剛「ようやく約束を果たせた」 稲垣吾郎&香取慎吾と歩んできた8年と人生のリンク
稲垣吾郎、草彅剛、香取慎吾による新作映画『バナ穴 BANA_ANA』が、6月27日より全国公開中だ。監督・脚本を手がけたのは、『クソ野郎と美しき世界』の一篇、episode2『慎吾ちゃんと歌喰いの巻』の山内ケンジ。共演には、ファーストサマーウイカ、趣里、古舘寛治、小澤征悦、吹越満ら、個性豊かな顔ぶれがそろった。
物語の中には香取の絵画がモチーフとして登場し、現実とフィクション、絵画と映画の境界が少しずつ曖昧になっていく。新しい地図を広げた3人による映画『クソ野郎と美しき世界』から8年。ようやく果たされた“第2弾”への思い、3人で自分たち自身を演じる照れくささ、そして「僕らの人生があって、この映画が完成している」と語る実感。作品の不思議な浮遊感と、3人が歩んできた時間が重なる本作について、草彅剛にじっくり話を聞いた。
「必要な8年だった」3人とNAKAMAとの約束を果たす幸福感
――思い返せば、新しい地図を広げて最初に3人で取り組まれたのも映画でした。
草彅剛(以下、草彅):第1弾の『クソ野郎と美しき世界』のときは、NAKAMAのみなさんにたくさん来ていただいて、「第2弾すぐにやります」って言ってから8年(笑)。毎年毎年ファンミーティングをしながらも「いつやるのかな」なんて言ってて。もはやそんな話題も出なくなってきたところで、ようやく約束を果たせました。「やるやる」詐欺にならなくてよかった! ようやく完成して、みなさんに届けられるという、うれしい気持ちでいっぱいです。この8年は必要だった作品なのかなと思います。実は、2人はどう思っていたかわからないけれど、僕は結構何気ないシーンでもグッときていたんですよ。ここまでたどり着いたんだなっていう幸福感で満たされた感覚があって。あのときから、今まで必死に歩いてきて。8年かかったけど第2弾ができているっていう幸せを噛み締めていました。
――稲垣さん、香取さんとのお芝居はいかがでしたか?
草彅:やっぱり照れくさかったですね。役があるとそれに集中して割り切れるから、恥ずかしくなくなったりするんですけど、今回は役が自分たち自身だから、僕はすごくドギマギしてね。結構緊張していました。最初の慎吾ちゃんとの会話シーンとか、カメラが遠いところから長く回して撮っていて、自然な状態に持っていかなくちゃいけないのに、「普段、慎吾ちゃんとどんな感じで接していたっけ?」とか変に意識すると、わけわかんなくなってきて。でも、その緊張を超えると、逆に普段の感覚に戻ってきたりとかして……なんか裸にされている感じがあった(笑)。海辺の撮影は風が強くて。ゴロチがイラチしていましたね(笑)。もうみんな僕のことなんてそっちのけで、湿気とか風のことばかり気にしてて。もう吾郎さんの髪の毛あんなにくるくるなんだからさ、これ以上くるくるしてもいいじゃんって僕は思うんだけど!
――撮影は約1年前、熊本県の天草で行われたそうですね。
草彅:そうですね。天草はすごく素敵なところでした。本当に「日本にこんなところあるんだ!?」って思うくらい、空気が澄んでいて。この作品にピッタリでしたね。ただ、空港から車で4時間ぐらいかかって(笑)。撮影ってけっこう移動が長いこと多いんですよ。僕がこれまで経験した一番長い移動が、スペシャルドラマ『99年の愛~JAPANESE AMERICANS~』(2010年/TBS系)だったんだけど、そのときはアメリカだったからね。その作品の次ぐらいの長距離移動でした。車酔いするくらいの山道を通って、そんな自然のなかを進んでいったからこそ、めちゃくちゃいい画が撮れたなとも思っています。
――天草ならではのおいしいものは食べましたか?
草彅:吾郎さんがね、ウイカちゃんとスタッフさんたちで何度も何度もお寿司を食べに行ってて。僕も行きたかったのに、全然誘いがなくて。1人寂しくお刺身を食べていました(笑)。やっぱり海に囲まれている場所なので、新鮮な魚介が美味しくて。エネルギーを蓄えたから、撮影がスムーズにいったんじゃないかな。そうそう、僕と慎吾ちゃんと吾郎さんの3人でご飯に行くタイミングもありました。僕が、すごく美味しいモツ鍋屋さんを見つけたんですよ。天草がモツ鍋がおいしいのかは知らないけど、お刺身ばっかり食べてたんで、“モツ鍋もいいじゃん!”って。そこからハマって、毎日のように通って、もうそのお店のプロフェッショナルになってたから、慎吾ちゃんと吾郎さんをおもてなししたんですよ。「このサラダがうまいよ」とか「このキムチもおすすめ」って。ふたりも「うまいうまい」って喜んでくれたからうれしくて。でも、モツ鍋のシメで僕が雑炊を作ったんだけど、それだけがちょっと心残り。緊張からか、ちょっとビシャビシャになっちゃったの。ふたりは「おいしいよ」って言ってくれたんだけど、そのときのリアクションが正直微妙で。気を使ってくれたことが余計ショックだった! それから家に帰って雑炊の練習を何回かしたくらいには引きずったよ(笑)。どうやらふたりは固めの雑炊が好きだったみたい。僕が作ったのは卵が半熟の水分多めのタイプだったから、口に合わなかったのかもね。すごいよね、これだけ長くやってるのに、ふたりに雑炊を出すときには緊張して。いつもの僕のポテンシャル出せなかったっていう! この関係性、本当に不思議だよね。
アクセルとブレーキを同時に踏むように、浮遊する映画
――映画の内容、とてもおもしろかったです。作品にもモチーフとして香取さんの絵画がたくさん登場しますが、この映画自体もアート的だなと感じました。パッと見てコミカルで面白いと思ったり、深い意味を考えたり、観る人によって受け取るものが変わるな、と。
草彅:ありがとう! もう、そのとおり! 今の感想、僕のコメントにしてくれる(笑)? あの穴とウイカちゃんの絵は、慎吾ちゃんが描いたんだよ。いろんなところでつながってる穴。戦争が起きていたり、兵隊さんが追いかけてきたり、スカイツリーがあんなところにあったり……って、なんなんだろう。なんなんでしょうね。すぐにはわからないっていう人も多いと思うし、何にも考えないで観るのもありだし、でもなんか深いメッセージが込められてるのかなっていうふうに感じていただいてもいいし。僕自身もそうだったんだけど、その日その日でコロコロコロコロ自分自身の気持ちも変わって、観たときに感じることも変わって。なんか、それでいいのかなと思ったりとかして。とにかく、みんなに観てもらって、好きなカフェとか居酒屋とか、どこでもいいので話のつまみにしてもらえたらうれしいですね。
――ストーリーも、そして観ている私たちも、絵画と現実の境界線が曖昧になっていく感覚がとても興味深かったです。
草彅:そう! マジでそれが言いたかった。曖昧になっていくんだ。それは、今回僕が演じているときにも感じていて。自分っていう役だし、目の前にはずっと一緒にやってきた吾郎さんや慎吾ちゃんがいて。カットがかかっても、自分のままだし。「あれ、今これ撮影してるよね?」みたいな(笑)。天草のちょっと異国感というか、もはや「ここはどこ?」って宇宙に漂ってるくらいの感じ。その浮遊感のなかで、なんか思いっきりアクセルを踏みながら、思いっきりブレーキをかけてるみたいな感じだった。あれ、いいね! 今のいいフレーズが出たね。山内監督って、そんな感じだった。この違和感、初めて言葉にできた。そう、いっぱいいろいろあたふたして、「あの人は誰なの?」「あそこで会ったでしょ?」「今日の昼間いた子じゃないの?」「え、いつ?」って散々やって、最後は暗闇に隠れて……もしかしたら物語が始まってすらいなかったりしてっていうお話。だから、進んでるのか止まってるのかわからない、そんな映画なんだよね。