『素晴らしき新世界』完結に“ロス”の声続出 ホ・ナムジュンが生んだ“中毒性”の正体
オープニングも、第1話・第2話ではソリとセゲだけが映るが、過去の因縁が動き出す第3話から、大君からセゲへとバトンタッチするように変化する。前世から現代へ、大君からセゲへと愛の継承を語る静かな仕掛けも、300年の時を経て無償の愛を貫いたふたりの姿が重なり、胸にグッと迫るものがある。
ホ・ナムジュンが本作でチャ・セゲとイ・ヒョンを、鋭さと静けさ、熱さと高貴さを演じ分けたからこそ、本作の輝きが幾倍にも膨れ上がったのは誰もが認めることだろう。彼の持つ元からの低音ボイスは、劇中のセゲ曰く「中毒性のある声」だ。まさにその通りで、彼の声を聴くたびに、どんどんと沼の奥深くに入り込んでしまう。
セゲは、「Time is Gold(時は金なり)」が口癖で、「愛は毒薬だ」と信じ、自らを「資本主義の怪物」と呼んで憚らない。「愛にはオキシトシン効果がある」と恋愛を勧められても、一顧だにしない前半の彼が纏う空気は、冷気そのもので吐く息が白く見えそうなほどだ。触るもの全てを凍らせてしまう氷の皇帝感。それが大君イ・ヒョンになるとガラリと変わる。低音ボイスに聡明さと気品が加わり、彼の生まれた境遇からの抑圧も込めた声色は、ホ・ナムジュンという役者の演技力のポテンシャルがどこまで広く深いのかと、驚かされる。
コミカルな場面での爆発力も凄まじい。ソリに恋し、感情をかき乱されたセゲの嫉妬のコミカルさは圧巻だった。怒りと独占欲に駆られるセゲの目と、蝋燭の炎を重ね合わせる演出には笑わせられた。さらに『社内お見合い』などの名作OSTのオマージュ演出に乗せて、彼の恋心を祝福するような遊び心溢れる演出が、彼の陥落をより魅力的に仕立てている。
本作は、圧倒的なキュートさを見せたイム・ジヨンと圧巻の魅力を爆発させたホ・ナムジュンの素晴らしいケミと、演出、周りを囲む役者陣の名演技も見事だった。財閥あるあるの秘書(ユン・ビョンヒ)にも笑わせられた。
ケミの良さはアドリブにも表れていた。ソリが人魚の像の鼻を撫でるシーンで、ホ・ナムジュンがイム・ジヨンのかわいらしさに思わず「チャ・セゲならこうするだろう」と「あー!」と叫び、イム・ジヨンがすかさず「静かにしろ」と返す。ソリの写真を見つめながら、セゲが思わず「お美しい」と呟くアドリブもあった。キャラクターと俳優の境界が完全に溶け、「ここまで性格まで合うなんて、もう終わりだと思った」というホ・ナムジュンの言葉が、このドラマに流れる空気の核心を言い表している。
最終話のキスシーンで見せた、素の表情が溢れ出るようなナチュラルさ。セゲと秘書による軽快なブロマンスコメディも含め、俳優がキャラクターそのものになる瞬間を、この作品は何度も見せてくれた。イム・ジヨンがソリというキャラクターを生き生きと画面いっぱいに演じて魅了し、ホ・ナムジュンがセゲという中毒性の高いキャラクターを生み出した。
惜しむらくは、話数が長ければ描けたであろう部分を見ることが叶わなかったこと。だが、それもセゲとソリの溢れる笑顔と多幸感溢れるキスシーン、俳優陣からの直筆メッセージで大団円と感じた。観終えた今、早速2周目を始めている。これからも何度も観返す作品がまた一つ生まれたことに感謝したい。
■配信情報
『素晴らしき新世界』
Netflixにて配信中
出演:イム・ジヨン、ホ・ナムジュン、チャン・スンジョ
制作: ハン・テソプ、キム・ヒョヌ、カン・ヒョンジュ