『素晴らしき新世界』完結に“ロス”の声続出 ホ・ナムジュンが生んだ“中毒性”の正体
「俺様系」財閥キャラクターのチャ・セゲを演じたホ・ナムジュンが爆発的人気をさらったNetflixシリーズ『素晴らしき新世界』。全14話、300年を股にかけた「無償の愛」を描いた本作の終幕後、SNSでは「終わってしまった」「チャ・セゲロス」「なぜ14話しかないのか」という言葉で溢れた。視聴者が傷のように書き続けたその言葉が、『素晴らしき新世界』という作品の総括として、どんな批評よりも正直だと思う。
筆者を含む視聴者が熱烈に愛した本作は、「タイムスリップ王朝もの」という定番の構図であり、「日食」というお決まりのモチーフを取り入れながらも、圧倒的なカッコよさで観る者を虜にした。中心にいたのはチャ・セゲだ。イム・ジヨン演じるソリとの圧倒的な相性の良さ、ケミストリーが生み出した愛の軌跡は、世界84カ国以上の地域でNetflixのTOP10入りを果たし、グローバル週間ランキング1位を獲得。日本ランキングでも常にトップを維持し、韓国国内では驚異的な高視聴率を叩き出した。
※以下、『素晴らしき新世界』のネタバレを含みます
本作がこれまでの時空越えファンタジーと一線を画していたのは、緻密な「言葉の美学」が物語の世界へと誘う強い力を放っていた点だ。 その最たるものが、原題である『멋진 신세계(モッチン シンセゲ)』というタイトルだ。「신(シン)」はヒロインのシン・ソリを指し、「세계(セゲ)」はチャ・セゲを指す。タイトルは、最初から「2人の世界」そのものを指し示す、美しくロマンティックな暗号として掲げられていた。
さらに、物語の冒頭、ひょうが激しく降る中でソリが最初に登場するシーンも、見事な演出だ。「ソリ」は韓国語で「霜」を意味する。 突然空から降ってきた冷たく硬い粒、足元からすべてを白く凍らせる霜。それは、誰にも心を開かず、トゲだらけで泥臭く生きるしかなかった彼女の人生そのものの比喩だ。観る者の心を掴む演出にさらに触れたい。
第1話に流れるラジオの音声を覚えているだろうか。虎のもとへ嫁いだ狐を愛した雲の涙が、天気雨の由来になったという昔話。虎は王を、狐は側室となったダンシムを、雲はダンシムを愛した大君(イ・ヒョン)を指し、これらは現代のチャ・セゲの前世にほかならない。現代のセゲの姿を映した画面の上に、静かに重なる昔話。前世の痛みが現在へと滲む演出は、これから始まるソリとセゲ、王との因縁を雄弁に暗示していた。
本作は、現代と300年前を行き来し、それぞれの恋愛模様と因縁を紡ぐ。イム・ジヨンとホ・ナムジュンの芝居の上手さ、強烈な魅力を放つ俳優を画面に置いた時、彼らの強さと鋭さに「花」を巧みに重ね合わせた演出が光る。強い俳優と可憐な花という対比が、画面全体の印象を調和させる見事な効果を生んでいた。登場人物たちの心情を映し出す鏡として配置された赤い牡丹。「情熱」という花言葉を持つ赤い牡丹は、大君とダンシム、セゲとソリの場面を繋ぐ重要な役割を果たす。時空を越えた愛の連続性を牡丹の花が主張する。
きわめて示唆に富む形で組み込まれているのは、第14話の「タンポポ」だ。「踏みつぶされるタンポポ」と「風に揺れるが踏みつぶされないタンポポ」の対比は、クライマックスで喪失と動揺を映し出す。可憐なタンポポは、高貴な生まれでありながら、気品と繊細さゆえに宮廷で咲き誇ることのできない大君の、まるで「野の花」として置かれている過酷な境遇を比喩しているかのようだ。
しかし、ソリが大君を救いに駆けつけた場面では、タンポポは揺れるが踏みつぶされない。ソリの心がすでに現代のセゲにあることを知りながらも(この場面のホ・ナムジュンの繊細な表情演技が圧巻!)、大君の命は救われる。「揺れるが、潰れない」は大君を体現している。