『ぼくほし』『終点のあの子』でも存在感 南琴奈が『サバ缶、宇宙へ行く』で示す可能性
とある学園を舞台に、若者たちの奮闘記を綴る月9ドラマ『サバ缶、宇宙へ行く』(フジテレビ系)は、これからいよいよ最終章へ。回を重ねるごとに新たな主要キャラクターが登場し、アツい展開を繰り広げてきた。これがクライマックスかと思いきや、次なるエピソードが物語を更新。第9話ではさらに4名の新キャラクターが登場し、いま新たなる青春模様を本作に刻み込もうとしているところだ。その中でも気になるのが水谷結という人物。演じているのは南琴奈である。
本作『サバ缶、宇宙へ行く』(以下、『サバ缶』)は、“宇宙食開発”という若者たちの壮大な夢の物語を描くもの。主人公である高校教師・朝野峻一を主演の北村匠海が演じ、彼とともに“宇宙食サバ缶プロジェクト”に携わる生徒役には、出口夏希や黒崎煌代を筆頭とした若い才能が何人も連なり続けてきた。その5期生のひとりとして登場したのが、藤倉彩花(池端杏慈)、吉瀬乃愛(蒼戸虹子)、桜庭美咲(横田真子)、そして南が演じる水谷結である。
この水谷に関する情報として、“いつも客観的に物事をとらえ、気配りができる人物。中学時代と変わって、無気力な彩花を心配している。クールに見えるが実は思いやりがある。”と、番組公式サイトの相関図ページに記されている。これに対して少しばかり首をかしげる視聴者もいるのではないだろうか。というのも、彼女が物語の中心人物のひとりとなった第9話だけでは、ここまで具体的な人物像を捉えることが難しかったからだ。
特に目立っていたのは、池端が演じる藤倉ばかり。過去の大きな挫折経験から夢を持つことを諦めていた彼女が、“宇宙食サバ缶プロジェクト”と出会い、先輩たちの熱い想いに共鳴するまでを描いたのが第9話だった。これと同時に主人公である朝野先生の葛藤や、先輩たちの苦悩にも光を当てていた。この過程で水谷の人物像まで際立たせようとしていては、作品の印象が散漫なものになりかねない。だから彼女のことがまだよく分からなくても、それはごく自然なことなのだ。
しかし、いくつかのシーンを思い出してみたい。仲良しの4人が何でもない時間を過ごし、言葉を交わし、ときに微笑み合っていた時間を。そこには南が体現する水谷という人間の、静かな温かさと優しさがあった。その視線や声の調子にはたしかに、藤倉への心遣いが感じられたはずだ。これをあからさまに表現していては、4人のバランスは崩れてしまうし、第9話が描こうとしていたもの、ひいては『サバ缶』が描こうとしているものが揺らいでしまうかもしれない。南は控えめながらもこの作品にフィットする表現で、自身の役割に徹していたといえると思う。そして、彼女がそっと立ち上げた水谷という人間の人物像を押さえておけば、これから展開する5期生の物語はより豊かなものに映るはずである。
この5期生を演じる4名の中で、もっとも早く俳優活動をスタートさせたのが南だ。そのキャリアは長くはないものの、とても豊かである。
今作と同じく学園をおもな舞台にした作品でいうと、『僕達はまだその星の校則を知らない』(2025年/カンテレ・フジテレビ系)で生徒会副会長役を好演していたのが記憶に新しいし、2026年に入ってすぐ公開された映画『終点のあの子』でも、10代の少女たちが紡ぐ繊細な物語の一端を担っている。
配信作品の『ナックルガール』(2023年/Prime Video)でもそうだったが、『花まんま』(2025年)でも、『ミーツ・ザ・ワールド』(2025年)でも、さらには2026年公開の『90メートル』でも、出番の多寡に関わらず、作品のキーパーソンとなる役どころを担っているのが南だ。等身大の人物を立ち上げて群像劇にアジャストすることもあれば、個性の際立つキャラクターを演じて作品の顔になることもできる。まだ非常に若い俳優だが、広くこれからを嘱望される演技者だろう。
2026年は初主演映画『夜勤事件 The Convenience Store』も公開され、7月期放送・配信の連続ドラマ『スピナーベイト』(フジテレビ系)への出演も決まっている。クライマックスを迎える『サバ缶』での佇まいと振る舞いに、南琴奈という才能の可能性を私たちは垣間見ることになるはずである。
■放送情報
『サバ缶、宇宙へ行く』
フジテレビ系にて、毎週月曜21:00~21:54放送
出演:北村匠海、出口夏希、黒崎煌代、八嶋智人、三宅弘城、村川絵梨、佐戸井けん太、熊切あさ美、吉本実由、ソニン、迫田孝也、鈴木浩介、荒川良々、神木隆之介、井上芳雄(語り)ほか
原案:『さばの缶づめ、宇宙へいく』(小坂康之、林公代/イースト・プレス)
脚本:徳永友一
音楽:眞鍋昭大
主題歌:Vaundy『イデアが溢れて眠れない』(SDR/Sony Music Entertainment)
演出:鈴木雅之、西岡和宏、髙橋洋人
プロデュース:石井浩二
プロデューサー:野田悠介、中沢晋
制作協力:オフィスクレッシェンド
制作著作:フジテレビジョン
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