『GIFT』“好き”を力にした山田裕貴の軌跡 主要キャラの死が作品にもたらす影響を考察

 『GIFT』(TBS系)最終話直前の第9話では涼(山田裕貴)が最後の光を放った。

 車いすラグビー日本選手権の組み合わせが決まり、ブレイズブルズは強豪のシャークヘッド、スイフトスネークと別の組になった。意気込むメンバーに、涼は「好きを力に変えようぜ」と呼びかける。支えてくれる人や目標にする存在、身近な誰かのためにメンバーとスタッフは挑み、ブルズはプールBを1位で通過。準決勝でスネークと対戦することになった。

 涼は自身の肥大型心筋症を隠してプレー。病気のことは伍鉄(堤真一)にしか話していなかったが、ヘッドコーチの雅美(吉瀬美智子)と人香(有村架純)に知られてしまう。涼の中で、日本一を目指すこと以上に、ブルズの仲間とプレーしたい気持ちがまさっていた。「好き」が力になっているのが今の涼だ。

 準決勝で対戦したスネークは、巧みな連係プレーでブルズの前にたちはだかる。一進一退の攻防のさなか、圭二郎(本田響矢)が相手選手のタックルで負傷してしまう。チームにとって勝負の分かれ目となる正念場だ。伍鉄や雅美は涼のコンディションを心配するが、涼は出場を直訴。敵の猛攻をしのぎきり、圭二郎がコートに戻ってきたところでそれは起きた。

 遠のく意識の中で、涼は父・達也(菅原大吉)との再会に感極まり、自分が生きていると実感した。「好きを力に変える」ことで道を切り開く生き方は達也が涼に伝えたもので、これまでの苦闘が間違いではなかったことを涼は確信したはずだ。

 試合のほうは、涼が去ったコートで残されたメンバーが底力を見せる。キャサリン(円井わん)がたぐり寄せたチャンスに、“一番星”の背中を追う2人のエース、“BT”拓也(越山敬達)と圭二郎のダイレクトパスがつながり、宙を舞うボールを押し込んだのは、進行性の病気と闘うキャプテンの立川(細田善彦)だった。

 しかし、命がけのチャレンジの代償は大きかった。最後の力を振り絞り、涼という一番星は空の彼方へ消えた。

 放送後に気になってSNSをのぞいてみた。反応はさまざまで、ショックを受けている視聴者もいた。筆者もまだモヤモヤしている。本編のうち、準決勝の競技シーンは約15分。試合後のショットは涼をめぐる一連のやりとりだった。

 涼を死なせる必要はあったのだろうか? 最終話直前でメインキャラクターが急死するドラマはこれまでもあった。ショッキングな描写が劇的な効果を生み、ドラマのメッセージが何倍にもなって伝わる。反対に安直な展開と受け取られて、ご都合主義になってしまうと最悪だ。一気に熱が冷めて、視聴者は現実の世界に引き戻される。使い方次第で劇薬になりかねないのが、主要人物の死である。

 『GIFT』について言えば、涼の死は、ラグ車の故障や車いす職人の高水(田口浩正)の言葉(「無理するとパッキンいくぞ」)に暗示されていた。パラスポーツが、障がいや疾患を抱える選手の身体に負担を与えることは事実である。今作と相対してきた視聴者なら受け止める準備はできていたと思う。

 死がもたらす物語の断絶に対して、キャストはこれ以上ないくらい真剣に演技で向き合っていた。特に山田裕貴は、第9話だけでも宮下涼というキャラクターの一生を詰め込んだような奥行きを感じさせ、単なるエモさではない深い共感を呼ぶ芝居が作品の不完全さを救っていた。今作を通して、進化し続ける山田の新境地に触れることができたと感じている。

 最終話を前にして、中心プレイヤーであり、チームの魂と呼べる存在を失ったブルズ。先を見通すことができない暗黒の夜空で、星々は輝きを取り戻せるだろうか。

■放送情報
日曜劇場『GIFT』
TBS系にて、毎週日曜21:00~21:54放送
出演:堤真一、山田裕貴、有村架純、本田響矢、細田善彦、細田佳央太、円井わん、越山敬達、八村倫太郎、やす(ずん)、水間ロン、冨手麻妙、ノボせもんなべ、杢代和人、宮﨑優、生越千晴、町田悠宇、澤井一希、中山脩悟、田口浩正、西尾まり、真飛聖、麻生祐未、菅原大吉、吉瀬美智子、玉森裕太、安田顕、山口智子
脚本:金沢知樹
企画・演出:平野俊一
演出:加藤尚樹、伊藤弘晃
プロデューサー:宮﨑真佐子、内川祐紀
協力プロデューサー:中澤美波
監修・協力:一般社団法人日本車いすラグビー連盟
製作著作:TBS
©TBS
公式サイト:https://www.tbs.co.jp/GIFT_tbs/
公式X(旧Twitter):@gift_tbs
公式Instagram:gift_tbs
公式TikTok:@gift_tbs

関連記事