『名探偵コナン』毛利小五郎はなぜ最高の“父親キャラ”? 蘭との名場面から紐解く

『名探偵コナン 瞳の中の暗殺者』

『名探偵コナン 瞳の中の暗殺者』©︎2000 青山剛昌/小学館・読売テレビ・ユニバーサル ミュージック・小学館プロダクション・東宝・TMS

 また普段はぶっきらぼうな小五郎が、蘭に対するやさしさを発揮したのが、第4作『名探偵コナン 瞳の中の暗殺者』。同作では警察官を標的とした連続殺人事件が勃発し、強い精神的ショックを受けた蘭が記憶喪失に陥るという展開が描かれている。

 そのなかでも印象的なのが、病院から蘭を連れて帰ってくるシーン。車を降りる直前で蘭が何かに怯えだし、パニック状態になるのだが、小五郎はその原因を冷静に推理。「水たまりが嫌なんだろう……。佐藤刑事が撃たれた時も水がたまっていたからな」と言い当て、車の運転手に水たまりを避けるよう頼むのだった。

 いつもはへっぽこ推理を披露してばかりいる小五郎が、突如覚醒し、鋭い洞察力を見せつけるという名場面。探偵としては頼りないが、父親の顔をしている時は頼りになるという小五郎の人物像が、これ以上ないほどわかりやすく表現されている。

 さらに作品後半では、小五郎史上屈指の名ゼリフが描かれていた。蘭がトロピカルランドに訪れている最中、周辺にナイフを持った男が出現。少年探偵団の活躍によって、無事その人物を取り押さえることに成功する。

 そこで蘭は感謝を伝えるため、「お父さん」と呼びかけようとするが、まだ記憶が戻っていないためか口ごもってしまう。するとその様子を見た小五郎は、「いいんだよ……。すべてを思い出した時に、そう呼んでくれ」と声をかける。その声色はやさしく、思いやりに満ちていて、ぶっきらぼうな態度でお馴染みの小五郎と本当に同一人物なのか疑わしくなるほどだった。おそらくその胸中にあったのは、記憶を失って不安に苛まれる蘭を支えたいという親心だったのだろう。

 その一方で、私生活ではむしろ蘭が小五郎を支えているという側面が強い。小五郎が酒とカップ麺に浸るだらしない生活を送らないよう、日々叱りつけながら、食事の支度や家事を担っている。また、母親・妃英理との関係を修復させようとする健気な姿も描かれてきた。

『名探偵コナン ゼロの執行人』

『名探偵コナン ゼロの執行人』©︎2018 青山剛昌/名探偵コナン製作委員会

 劇場版で印象的な作品といえば、たとえば第22作『名探偵コナン ゼロの執行人』が挙げられるだろう。同作は公安警察の工作により、小五郎が爆破事件の容疑者にされてしまうという話。蘭は突然の出来事に激しく動揺しつつ、父の無罪を証明するために奔走する。

 小五郎が普段使っているパソコンから事件の証拠が見つかると、「嘘です、父はそんな資料をパソコンに保存なんかできません」「すごいパソコン音痴なんです!」と熱弁。またすぐさま新一に電話をかけ、「新一助けて! お父さんが逮捕されちゃう!」と懇願したり、小五郎を弁護してもらうため英理のもとを訪れたりと、自分にできる最善を尽くそうとするのだった。

『名探偵コナン 隻眼の残像』

『名探偵コナン 隻眼の残像(フラッシュバック)』©2025 青山剛昌/名探偵コナン製作委員会

 親子の絆が垣間見える作品といえば、2025年に公開された第28作『名探偵コナン 隻眼の残像』も忘れがたい。小五郎は昔なじみの刑事を目の前で殺害され、捜査のために長野へと向かう。その際にコナンと蘭を巻き込まないよう、別人のように厳しい剣幕で「付いてくんな! 遊びじゃねえんだ……」と言い放つと、2人を置いていく。

 その一方で蘭は、小五郎の身を案じて、コナンと共にこっそり長野へと向かう。いつもならコナンの行動をたしなめることが多い立ち位置だが、このときはむしろ積極的に事件と関わろうとしていた。

 ときには喧嘩をしながらも、心の奥底では深く通じ合っている小五郎と蘭。劇場版だけでなく、TVアニメのほうでも親子関係の機微を描くシーンは多く出てくるので、今後も2人の行く末を見守っていきたい。

■公開情報
『名探偵コナン ハイウェイの堕天使』
全国公開中
キャスト:高山みなみ(江戸川コナン役)、山崎和佳奈(毛利蘭役)、小山力也(毛利小五郎役)、沢城みゆき(萩原千速役)、三木眞一郎(萩原研二役)、神奈延年(松田陣平役)
スペシャルゲスト:横浜流星、畑芽育
原作:青山剛昌
監督:蓮井隆弘
脚本:大倉崇裕
音楽:菅野祐悟
主題歌:MISIA「ラストダンスあなたと」(Sony Music Labels Inc.)
アニメーション制作:トムス・エンタテインメント
製作:小学館/読売テレビ/日本テレビ/ShoPro/東宝/トムス・エンタテインメント
配給:東宝
©2026 青山剛昌/名探偵コナン製作委員会

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