朝ドラはなぜ“芸人”と相性がいい? 『風、薫る』原田泰造、シソンヌじろうらがアクセントに

ずん 飯尾和樹

『風、薫る』写真提供=NHK

 そしてりんや直美が看護婦見習いとして働いている帝都医科大学附属病院の用務員・柴田万作を演じているのが、お笑いコンビ・ずんの飯尾和樹だ。飯尾といえば、まず浮かぶのは大ヒットドラマ『アンナチュラル』(TBS系)で演じたムーミン大好きな臨床検査技師の坂本。シリアスな世界観の中、井浦新演じる「クソ!」が口癖の法医解剖医・中堂に坂本が怯えつつも、静かに抵抗するシーンは貴重な笑いどころとなっていた。飯尾の魅力はなんといっても、近所のおじさんのような親近感だろう。特に人の生死を扱う作品においては、飯尾の姿を見るだけでホッと心が休まるのだ。『風、薫る』でも、うまく患者とコミュニケーションが取れず、落ち込んでいたりんに柴田が泣き場所を教えるシーンがあったが、そのさりげなさは絶妙で、まさに「職場にこんな人がいたらいいのに」と思うようなキャラクターを体現している。

 だが、現在放送中のドラマ『田鎖ブラザーズ』(TBS系)で見る飯尾はまるで別人。演じるのは、岡田将生と染谷将太扮する田鎖兄弟の両親が殺害された事件の鍵を握るノンフィクション作家で、飯尾は安心感とは真逆の不穏なオーラを纏っている。また2022年には映画『沈黙のパレード』で娘を殺された父親のやり場のない悲しみと怒りを表現し、第65回ブルーリボン賞・助演男優賞を受賞するなど、近年は笑いを封印した役どころにも果敢に挑んでおり、これからの俳優業での活躍がますます楽しみだ。

今後の朝ドラで活躍しそうな芸人も

『箱の中の羊』©2026フジテレビジョン・ギャガ・東宝・AOI Pro.

 最後に、今後の朝ドラで活躍しそうな芸人を数名挙げたい。一人は、第79回カンヌ国際映画祭のコンペティション部門にも出品された是枝裕和監督の最新作『箱の中の羊』への出演で話題となっている千鳥の大悟だ。綾瀬はるか扮する音々の夫で、家族として迎え入れることになった亡き息子と同じ姿をしているヒューマノイドに戸惑いつつも情を抱いていく健介を演じている。大悟といえば、Netflixシリーズ『トークサバイバー!〜トークが面白いと生き残れるドラマ〜』の中でも演技を披露し、相方のノブに度々「演技が下手」とつっこまれていたように、技術的な演技の上手さを持っているだけではない。しかし、その無骨さがむしろ独特の味を引き出しており、是枝監督には「背中にビートたけしを感じた」と絶賛されていた。そんな大悟は『おちょやん』(2020年度前期)でトータス松本が演じたような、ダメダメだけど、どこか憎めなさを残した父親役がハマるのではないだろうか。

ドンデコルテ渡辺銀次 、“M-1”LEDおじさん降臨!再現シーンが強烈すぎる マクドナルド新CM「オトナはサイコー!」篇

 もう一人は、漫才頂上決戦『M-1グランプリ2025』で準優勝したドンデコルテの渡辺銀次だ。マクドナルドのWeb CMで怒髪天の楽曲「オトナノススメ~還暦上等!~」をしゃがれ声でソウルフルに歌い上げる姿が話題となるなど、絶賛ブレイク中の渡辺。彼にもまた独特の渋みと色気があり、女性たちの心を掴んでやまない。思わず期待してしまうのは、今秋からスタートする朝ドラ『ブラッサム』への出演。ヒロイン・葉野珠(石橋静河)のモデルとなる小説家の宇野千代は数多くの作家や芸術家と浮き名を流した恋多き女性として知られており、その相手役の一人にどうか渡辺銀次を! と個人的に推薦しておきたい。

『九条の大罪』Netflixにて世界独占配信中

 他にも、漫才での演技が高く評価されているたくろうの赤木裕、アンニュイな雰囲気が魅力的なヒコロヒー、大河ドラマ『べらぼう〜蔦重栄華乃夢噺〜』や『もしもこの世が舞台なら、楽屋はどこにあるのだろう』(フジテレビ系)などに出演し、俳優業で頭角を現しているひょうろく、Netflixシリーズ『九条の大罪』での悪役でインパクトを残したビスケットブラザーズの原田泰雅などが挙げられる。次はどの芸人が朝ドラデビューを飾るのか、今後の出演情報にも注目していきたい。

■放送情報
2026年度前期 NHK連続テレビ小説『風、薫る』
NHK総合にて、毎週月曜から金曜8:00~8:15放送/毎週月曜~金曜12:45~13:00再放送
NHK BSプレミアムにて、毎週月曜から金曜7:30~7:45放送/毎週土曜8:15~9:30再放送
NHK BS4Kにて、毎週月曜から金曜7:30~7:45放送/毎週土曜10:15~11:30再放送
出演:見上愛、上坂樹里
脚本:吉澤智子
原案:田中ひかる『明治のナイチンゲール 大関和物語』
制作統括:松園武大
プロデューサー:川口俊介
演出:佐々木善春、橋本万葉ほか
写真提供=NHK

関連記事