『惡の華』ドラマ版で際立つ普遍性 井頭愛海演じる佐伯奈々子が“裏主人公”に
その後も、春日はクラスメイトの女子の下着を盗むといった変態的行為をおこない、仲村と秘密基地に籠って「向こう側」を作り出すための計画を練るのだが、そんな2人を見て、どんどん壊れていくのが佐伯奈々子である。
佐伯は当初、優等生の美少女として登場し、春日にとっては遠い憧れの存在だった。しかし、彼女もまた春日と同じように自分に自信がなく劣等感を抱えた凡庸な存在だったことが、春日と付き合ったことで明らかとなっていく。
佐伯は自分が知らなかった難しい本について嬉しそうに話す春日を好きになる。だが、春日は佐伯の好意を退け、仲村のために「向こう側」を作ることに没頭する。
そんな春日に佐伯は執着するようになり、仲村に対して嫉妬するようになる。
春日と仲村の関係に目が行きがちだが、佐伯の変化は本作の隠れた見どころで、初めから凶悪で個性的な仲村と正反対の、真面目な優等生ゆえにおかしくなってしまうヒロインという哀しい存在へと変わっていく。
そんな佐伯が変貌していく姿を、井頭愛海は見事に演じている。
特に印象深かったのは、彼女がストレスで首筋をかきむしる場面。ひっかき傷の生々しさが映ることで、憧れの美少女だった佐伯も春日と同じ生身の人間であることが際立っていた。
夏祭りのやぐらの上に立って焼身自殺を試みようとする春日と仲村の姿を映したテレビを見つめる佐伯の表情も素晴らしく、彼女もまた「向こう側」を渇望していたことが伝わってくる。
『惡の華』の世界観そのものを体現している仲村佐和に対し、佐伯は裏主人公といえる存在だが、春日や仲村よりも、真面目な優等生ゆえに自分に自信がない佐伯のほうが、「向こう側」に行けない思春期に苛まれる全ての少年少女、つまり本作が届けたい視聴者の分身のように感じる。
そんな彼女が女として覚醒することで、春日を現実につなぎ留めようとする姿は哀れで痛々しいのだが、同時に、自らの殻を壊して変貌していく姿は痛快だった。
その意味で物語中盤は、佐伯奈々子の物語だったといえる。
その後、夏祭りで「向こう側」に行けなかった春日は、仲村と離れ離れになり、別の町で高校生として鬱屈した日常を過ごしていた。
そんな春日の前に第3のヒロイン・常磐文(中西アルノ)が現れる。第8話後半で満を持して登場した常磐を演じるのは、今回が地上波ドラマ初出演となる乃木坂46の中西アルノ。
第8話での登場は少しだったが、凛とした表情で圧倒的な存在感を見せた。仲村や佐伯とは異なる強さを持ったヒロインとして、常磐が春日とどのように対峙するのか、今後の展開が楽しみである。
■放送情報
『惡の華』
テレ東系にて、毎週木曜24:00~24:30放送
BSテレ東にて、毎週水曜24:00~24:30放送
ディズニープラスにて、各話放送後からアジア見放題独占配信
TVer、ネットもテレ東、Leminoにて見逃し配信
出演:鈴木福、あの、井頭愛海、中西アルノ(乃木坂46)、須藤千尋、長谷川朝晴、中越典子、紺野まひる、堀部圭亮、雛形あきこほか
原作:押見修造『惡の華』(講談社『別冊少年マガジン』所載)
脚本:目黒啓太、たかせしゅうほう
監督:ヤングポール、井口昇
プロデューサー:漆間宏一(テレ東)、涌田秀幸(C&Iエンタテインメント)
主題歌:ano「愛晩餐」(トイズファクトリー)
エンディング:majiko「クライクライ」(UNIERA / Bandai Namco Music Live Inc.)
音楽:たかはしほのか(リーガルリリー)
制作:テレビ東京、C&Iエンタテインメント
製作著作:「惡の華」製作委員会2026
©「惡の華」製作委員会2026 ©押見修造/講談社
公式サイト:https://www.tv-tokyo.co.jp/akunohana/
公式X(旧Twitter):https://x.com/tx_akunohana
公式Instagram:https://www.instagram.com/tx_akunohana