『サバ缶、宇宙へ行く』“木島”神木隆之介が提示した時間という壁 副次的な人間ドラマも

 “若水”こと若狭水産高校あらため若狭小浜高校海洋科学科の生徒たちが開発した宇宙サバ缶が、ついに宇宙日本食の候補に選出される。テレビで紹介されたことで町が盛り上がるなか、JAXAから木島(神木隆之介)と皆川(ソニン)が来校。「ここからが本番」という木島からの言葉を受け、認証を得るために粘度と味のバランスについて再考を始める生徒たち。しかし瑠夏(伊東蒼)と竹田(木村舷碁)、川上(石田莉子)と小松崎(平澤宏々路)のあいだに徐々に温度差が生じていく。

 6月1日に放送された『サバ缶、宇宙へ行く』(フジテレビ系)は第8話。前回から“4期生”の物語に突入したわけだが、こころなしかドラマとしての見せ方にも変化があらわれてきたように思える。今回取り組む、サバ缶に粘度をつけるための材料――これはここまでのエピソードで何度も試行錯誤が繰り返されてきた、開発の肝といえる部分――の選択に、その加熱の仕方。さらにはサバの捌きかたやタレの混ぜかた、缶詰の巻き締め工程であったり、封を開けて皿に出されたサバ缶の中身が立体性をもって映しだされたり。

 ずっとサバ缶を作っているドラマであることには違いないが、いかんせん13年におよぶ膨大なエピソードを1クールのドラマにまとめあげる都合上もあってか、こうした“工程”はかなり端折られつづけてきた部分である。あたかも朝野(北村匠海)や菅原(出口夏希)や寺尾(黒崎煌代)たち教師・生徒・OBを中心とした“夢を追う者”たちの人間ドラマのなかに宇宙サバ缶のプロジェクトがあるかのように。しかし今回は逆転。サバ缶のプロジェクトありきで、その周りに人間ドラマが副次的に存在しているかのように描かれていると見える。

 副次的であるからこそ、より端的で、それでいて想像以上にドラマティックにまとまりが良い。「思っていたのとは違うから」という安易な理由で実習を辞めようと考える川上と小松崎が、寺尾や早川(中川翼)、佐々木(ゆめぽて)らOB/OGの想いを直で受け止めることで考えを改める一連であったり、竹田と彼の兄(安藤冶真)の関係。そして海洋科学科と普通科の対立構造。もちろんそこには、教育委員会からの誘いに悩む朝野や、宇宙飛行士になる夢と宇宙食開発でやるべきことをやり遂げることを天秤にかける木島の姿という、最終話まで持ち越されて然るべきものも含まれている。

 また、寺尾たちが早川に会うために訪れる熊川宿のシーンも見逃せない。本作の重要なキーワードのひとつである“鯖街道”の宿場であった熊川宿。こうしたご当地性が強いわかりやすいロケーションはポイントとして大きく、ここにきてようやくこのドラマの本来あるべき姿を見たような気がしてならない。それにしても、前回のエピソードで1期生が勢揃いするシーンはあったが、2期生以降のOB/OGの登場は今回の早川が初めて。今後他の面々の再登場もあるのだろうか。

 いずれにせよ、今回のラストでふたたび木島が小浜へとやってきて、4期生が地元の特産品である熊川の葛粉を使って作りあげた、粘度と味のバランスが取れたサバ缶を試食する。冒頭でスタートラインに立った彼らが一気に“完成”というゴールにたどり着いたのである。ところがここで立ちはだかるのは、保存検査――やはり時間という壁である。このドラマは何度も何度も、たった3年間しかない高校時代という刹那を提示しつづけるのだ。

■放送情報
『サバ缶、宇宙へ行く』
フジテレビ系にて、毎週月曜21:00~21:54放送
出演:北村匠海、出口夏希、黒崎煌代、八嶋智人、三宅弘城、村川絵梨、佐戸井けん太、熊切あさ美、吉本実由、ソニン、迫田孝也、鈴木浩介、荒川良々、神木隆之介、井上芳雄(語り)ほか
原案:『さばの缶づめ、宇宙へいく』(小坂康之、林公代/イースト・プレス)
脚本:徳永友一
音楽:眞鍋昭大
主題歌:Vaundy「イデアが溢れて眠れない」(SDR/Sony Music Entertainment)
演出:鈴木雅之、西岡和宏、髙橋洋人
プロデュース:石井浩二
プロデューサー:野田悠介、中沢晋
制作協力:オフィスクレッシェンド
制作著作:フジテレビジョン
©︎フジテレビ
公式サイト:https://www.fujitv.co.jp/sabauchu
公式X(旧Twitter):https://x.com/sabauchu_fujitv
公式Instagram:https://www.instagram.com/sabauchu_fujitv/
公式TikTok:https://www.tiktok.com/@sabauchu_fujitv

関連記事