『SAKAMOTO DAYS』実写版の次回作はありえる? 原作からの“映像化”をアニメ版と比較
映画『SAKAMOTO DAYS』が絶好調だ。理由は明快、2025年放送のTVアニメで漫画がそのまま動いているようだと評判になった鈴木祐斗の作品を、実写として完璧なキャスティングとプラスアルファの面白さで再現して、作品が持つ魅力を高濃度で見せつけようとしているからだ。
『SAKAMOTO DYAS』の漫画を読むなりTVアニメを観るなりしていた人が、映画を観ると、その段取りの速さに「おっ」と思うかもしれない。最強の殺し屋として恐れられながら結婚を機に引退し、すっかり太った姿で個人商店「坂本商店」のカウンターに座る坂本太郎(目黒蓮)を、かつての殺し屋仲間の浅倉シン(高橋文哉)が訪ねていく冒頭のシーンで、陸少糖(ルー・シャオタン/横田真悠)という少女がすでに店員として働いているからだ。
漫画では、「DAYS4 チャイナの襲来」から続くエピソード、TVアニメでは「DAYS.2 VSソンヒ・バチョウ」に登場するキャラクターで、マフィアのボスだった父親を母親ともども殺害されて追われていたところを坂本に助けられ、坂本商店で店員として働くようになる。映画版では、そのエピソードがまるまる省略されていた。TVアニメでも削られたナカセ巡査も登場しないまま、シンの登場から漫画ではもう少し後に描かれるランドセル争奪戦を挟んで、シュガーパークでの激闘へと一気に向かう。
キャスティングのおもしろさ
浮かぶのは、坂本の一見平穏に感じられる日々の苛烈さであり、その中で見せる坂本のとてつもない強さだ。一方で、漫画なりTVアニメで『SAKAMOTO DYAS』に初めて触れた人たちが抱いた、かつて最強と呼ばれながら今はすっかり太ってしまった坂本が、何事もない日常の中でつい強さを見せてしまうことで起こるドタバタぶりのおかしさはグッと削られている。
太めの男がとてつもなく強いというギャップの面白さについては、『SAKAMOTO DYAS』という作品の掴みでもあるため、映画も漫画やTVアニメと同様に、冒頭でシンと坂本との激闘を描くことでしっかりと印象づけている。古いカンフー映画の『燃えよデブゴン』が、精悍なブルース・リーとも若々しいジャッキー・チェンとも違った太めのサモ・ハン・キンポーの活躍ぶりに魅せられたのと同じ面白さがそこにある。
なおかつ『SAKAMOTO DAYS』は、サモ・ハン・キンポーにはなかった“変身”によって坂本の魅力を倍加している。原作では単行本の第2巻に収録の「DAY11 坂本VSボイル」、TVアニメでは第5話「強さの理由(わけ)」で描かれる、殺し屋のボイルを相手にした戦いの中で坂本は、カロリーを消費して昔のままのスリムになり、そこそこ強かったボイルを圧倒する。
いざというときは本気を見せて本性も明かすこの“変身ぶり”が、坂本のカッコよさを何倍にも高めていっそうの憧れを誘う。さらに映画は、Snow Manの目黒蓮を坂本に配役することで、あの目黒がまずは特殊メイクで太った坂本を演じアクションもこなし、そして“本体”の目黒が痩せた坂本として凄まじいアクションを演じて、超絶カッコいいところを見せつけてくるのだから最高だ。
その場面までのスピーディーな展開が、目黒というキャスティングを得られたことで、彼の太った姿での活躍ぶりから“本体”を見せての暴れっぷりを一気に見せて、ファンにより喜んでもらおうとしたものなのかは分からない。ただ、目黒のファンでなくても坂本というキャラとそれを演じる役者の凄さに集中させる効果はあった。
主人公に分かりやすい特徴があって、分かりやすい活躍があれば観客も映画をよく分かる。観客が絶えないのもそこに理由があるのかもしれない。
自在に描ける漫画やTVアニメでのアクションを、極限まで実写で再現しようとしたところも、作品のファンだけでなくエンターテインメントとしてのダイナミックなアクションを観たい人を喜ばせている。たとえば坂本商店。既設のコンビニをロケに使うのではなく、大きめの店をスタジオ内に作り上げた。パッケージまで作り込まれた商品が並ぶ店内で人が飛び商品が飛ぶような激しいアクションが可能になった。
遊園地のシーンはロケも行いつつ、ボイルとのバトルが決着する観覧車の箱のシーンはセットを組み、ドンと見開きで迫力を出した漫画のシーンそのままの雰囲気を、窓からの風景もしっかりと見える実写ならではのリアルさもプラスアルファして描いてのけた。まさかここまでやるとは。そんな感嘆を続く「LABO(ラボ)」から列車へと展開される鹿島との戦いでも途切れさせることなく抱かせ、ラストまで一気に連れていく。これに喜ばない原作やTVアニメのファンはいない。初見の人も圧倒されるしかない。
坂本以外のキャスティングが絶妙だったところも好成績の背景にありそうだ。シンを演じた高橋文哉やルーを演じた横田真悠は、それほど突飛な造形ではないため、キャラに寄せやすかっただろう。その上で2人とも、殺し屋だったり太極拳の使い手だったりといった属性を超えるアクションを見せた。
殺連(日本殺し屋連盟)でも凄腕が集まる「ORDER」に所属する殺し屋の神々廻は、長い金髪と関西弁というキャラに八木勇征がなりきり、同じ「ORDER」の大佛は、生見愛瑠が茫洋としたキャラをゴシックファッションも含めてしっかり演じていた。
トナカイのかぶりものを脱いだ鹿島のサイボーグ的な振る舞いも、塩野瑛久がカクカクとした動きをまじえてアニメ以上にそれらしいものにアップデートさせていた。神々廻も大佛も鹿島も、5月に最新の第27巻が出てなおも続く『週刊少年ジャンプ』での原作の連載に、引き続き登場しているキャラたちだ。この1本で終わりとならず、続編、続々編と作り続けられ登場し続けてほしいと願わずにはいられない。