『田鎖ブラザーズ』第5話の“後味の悪さ”は何を意味する? “真実”は未来の“毒”にもなる

繰り返し問われる「知らないほうがいいこともあるよ」

 小さな営みを続けている家族が、大きな力に一矢報いようとする姿。そして、親は子を、子は親を思うあまりに「取り返しのつかない過ち」を犯すこともできるという心情。事件が起こるたびに、心がざわつくのは、それぞれの事件を紐解いていくことで、田鎖兄弟が追っている両親殺害事件の真相への道しるべになっているように思うからだ。

 そんななか、質屋を営む晴子(井川遥)の店に持ち込まれた1本のペン。それは、あの津田(飯尾和樹)の遺品だった。津田が持ち歩いていた鍵は「霧宿館」という建物のもので、津田は死の直前にそこで寝泊まりをしていたという。病院に運ばれる前に、借金の取り立てのようなグループに暴行を受け、さらに部屋もひどく荒らされていたという情報も舞い込んできた。

 津田が探っていたのは、やはり朔太郎が勤めていた辛島金属工場だった。そして、工場の帳簿からは「SNCM」という金属の記録だけが不自然に消されていた。「繋がったかもな」――集めてきた証拠が真と稔(染谷将太)を確信へと近づけていく。

 30年前に起きた発砲事件には、五十嵐組と呼ばれる組織が関わっていた。おそらく、辛島金属工場はSNCMで拳銃を密造し、五十嵐組に流していたのだろう。その疑惑に気づいた津田が、辛島金属工場を探り、何らかのトラブルに巻き込まれた。「親父と母ちゃんを殺したのは、五十嵐組かもしれない」と。

 工場はもうない。津田もこの世を去り、何があったのかを知っても両親は戻ってくるわけでもない。もはや兄弟が事件の真相を明らかにするメリットはないのかもしれない。「知らないほうがいいこともあるよ」「その家族にとって知らないほうがいいこともあるし」と、晴子が何度も言うのは、もしかしたら知っていても話せない何かがあるからではないか。それこそ、「死んでも隠し通せ」と自らに課すような秘密を知っているのではと、つい勘ぐってしまう。

 また晴子はこうも言っていた、「私には正論が少しまぶしすぎたみたい」と。正しいことだけが、人を守れる術ではない。だからこそ、裏稼業のような形で晴子は兄弟の力になり続けているようにも見える。しかし、本作が描こうとしている真相は、単なる事実だけではく“誰かを守るために隠された真実”。そして、その知りたくない真相のなかには、未来を変える可能性のある“毒”になりうる、ということではないだろうか。

 終盤、「先生、本当にこれでよかったのでしょうか」とテレシークでメッセージを打つ、成田の母親が映し出された。その手の動きが、夫の貞夫(長江英和)に「大丈夫よ。あなたは何も心配しなくていいから」と声をかけながら手を重ねていた辛島ふみ(仙道敦子)を思い出す。もし、この「先生」と呼ばれている人が、ふみだったとしたら……。そう考えた瞬間、第5話の“後味の悪さ”が、より不穏な影となって覆いかぶさる。

■放送情報
金曜ドラマ『田鎖ブラザーズ』
TBS系にて、毎週金曜22:00~22:54放送
出演:岡田将生、染谷将太、中条あやみ、宮近海斗、和田正人、飯尾和樹(ずん)、長江英和、山中崇、仙道敦子、井川遥、岸谷五朗
脚本:渡辺啓
音楽:富貴晴美
主題歌:森山直太朗「愛々」(ユニバーサル ミュージック)
演出:山本剛義、坂上卓哉、川口結
プロデュース:新井順子
撮影監督:宗賢次郎
編成:高柳健人、吉藤芽衣
製作:TBSスパークル、TBS
©TBSスパークル/TBS
公式サイト:https://www.tbs.co.jp/TAGUSARI_bros/
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