『田鎖ブラザーズ』第5話の“後味の悪さ”は何を意味する? “真実”は未来の“毒”にもなる

「なんか後味悪いんだよ」

 金曜ドラマ『田鎖ブラザーズ』(TBS系)第5話。連続ドラマにおいて第5話というのは、通常前半のクライマックスとも言える回だ。しかし本作は、折り返し地点という落ち着きを全く与えることなく進んでいく。

 父が隠していた拳銃と30年前の発砲事件、そして辛島金属工場を結ぶ線がついに浮かび始めた。一方で、なぜそこに自分たちの親が関わらなければならなかったのかという謎は深まるばかり。

 その真相へ歩みを進めるほど、深い暗がりへ踏み込んでいくような感覚は、もう“この先に進まないほうがいい”と、何かに止められているような気さえする……。だが、そんな“後味の悪さ”こそ、より真実を求める気持ちを加速させるのだ。

母は子を思って罪を犯し、子は母を思って身代わりに

 「一条栄介を殺した」と自首をしてきたのは、神南国立大学を受験したという成田賢心(齋藤潤)。一条はその大学の理事長で、1カ月前に脳卒中で死亡していた。神南国立大学は先駆けて入試採点にAIを導入したことでも話題になった大学だ。しかし、SNSでは「自己採点では合格していたはずなのに」という声がいくつも見られ、賢心もまたそのうちのひとりだった。父が病に伏し、金銭的にも苦労していた賢心とその母親にとってこの受験は、親子で挑んだ社会との戦いでもあった。

 たとえ貧しくとも、合格を掴むことはできる。お金がなくとも、地道に努力した二人三脚での挑戦は決して間違ってはいなかったと証明したかった。しかし、調べていくうちに大学はAIによる採点ミスを隠ぺいし、文部科学省との間に不正な金銭の授受もあったということが判明。許せない思いに駆られた薬剤師だった母は、一条の処方薬に体調を悪化させる薬を混入。その母を守ろうと賢心は自首をした……という筋書きが見えてきたものの、すべて“憶測”だと言い放つ真(岡田将生)。物的証拠がなければ、捜査は打ち切られる。

 「もう犯人を逮捕することはできません」と真の口から放たれると、その言葉が特別な響きを持つ。目の前に罪を犯したとわかった人がいたとしても、誰も裁くことはできないという理不尽さ。しかも、その母親のスマホ画面には『テレシーク』というメッセージの履歴が残らないアプリの通知が届く。

 これが、すべての真相ではない。これで、終わりではない。そのモヤモヤとしたものだけがわかる展開。そして、賢心の入試結果は、AI採点ミスがなかったとしても不合格であったという厳しい現実も突きつけられた。人生を棒に振ってでも息子を思って罪を犯した母親に「隠すなら、死んでも隠し通せ」という真の言葉は、死んでもなお密造した拳銃を遺していった父・朔太郎(和田正人)にも向けられていたようにも思えた。

関連記事