『風、薫る』を通して考えるドラマの“枝葉”問題 100作以上続く“朝ドラ”だからこその難しさ
◯急づくりの看護学校は女学校の裏側にあり、マイノリティである。女学校の生徒が偏見を抱いている。
◯寄せ集めの7人は個性豊か。最初は気が合わない。
◯校長先生(伊勢志摩)は人格者らしくそっと見守っている。担任の先生(玄理)は頼りない。
◯肝心の看護の先生はなかなか現れず、課題を出し、それを7人が力を合わせて解決する。
◯手助けしてくれる人物が幾人も存在する。
◯ふたりの主人公の心がじょじょに近づいていく。
十分に枝葉が存在している。前提としての「看護」の意味も提示し、ナイチンゲールの存在も紹介、原案『明治のナイチンゲール 大関和物語』(田中ひかる著)に書かれた、明治時代の女性の髪型や火屋磨きなどのエピソードも取り入れてある。りんの「間違えた」はおそらく民放のヒット医療ドラマ『ドクターX〜外科医・大門未知子〜』(テレビ朝日系)の「絶対失敗しない」のオマージュであろう。
脚本家の吉澤智子は煩雑な要素をあますところなく取り入れまとめる手際に長けている。第5週まで観ると過去の朝ドラも履修しているように感じる。膨大なアーカイブを持ち、その都度器用に取り出している印象だ。だがそれはともすると、単なる要素の羅列になってしまう。幹にひたすら挿し木しているように見える。前述したように、箇条書きのような印象を受けるのだ。そのため内容はわかるものの、ひとつひとつのエピソードやシーンを心に強く刻みつけるまでの強さが不足しているような気がするのだ。
そんなことを考えたのは、Netflix『地獄に堕ちちるわよ』がきっかけだった。なんで急に違う作品の話?と思われるだろうけれど。実在した著名人・占い師の細木数子の事実を基にした虚構という作品は、主人公の少女時代――戦後を生き抜く描写がある。それが既視感たっぷりで、朝ドラみたいだったのだ。
朝ドラの枠組みのなかで、朝ドラとは違って、生きるために人を騙すという濁りのある、清純ではない主人公を描くというコンセプトのうえで作られていると感じた。つまり、1961年から100作以上続いてきた朝ドラが築き上げたテンプレは良くも悪くも極めて強固であり、それを集める、あるいはテンプレをあえてずらしていけば、ある程度の骨組みを作ることができるということだ。だが私たち視聴者は骨組みから先に期待している。
ちなみに『地獄に堕ちるわよ』は主人公が戸田恵梨香でその母が富田靖子。朝ドラ『スカーレット』(2019年度後期)を思い出すキャスティングであり、父役で北村一輝が出てこないだろうかと思ったが、それはなかった。その代わりというわけでもないが、根岸季衣が孫をかわいがるおばあちゃん役で出てきたり、おりにつけお地蔵さんが出てきたり。テンプレや他作品とのリンクの羅列なのである。最近のドラマはテンプレやリンクに頼り過ぎているのではないか。枝葉は多すぎてもいけない。適度に刈り込んでこそ幹が生きる。
■放送情報
2026年度前期 NHK連続テレビ小説『風、薫る』
NHK総合にて、毎週月曜から金曜8:00~8:15放送/毎週月曜~金曜12:45~13:00再放送
NHK BSプレミアムにて、毎週月曜から金曜7:30~7:45放送/毎週土曜8:15~9:30再放送
NHK BS4Kにて、毎週月曜から金曜7:30~7:45放送/毎週土曜10:15~11:30再放送
出演:見上愛、上坂樹里
脚本:吉澤智子
原案:田中ひかる『明治のナイチンゲール 大関和物語』
制作統括:松園武大
プロデューサー:川口俊介
演出:佐々木善春、橋本万葉ほか
写真提供=NHK