松下洸平の“腹黒タヌキ”ぶりがクセになる! 『豊臣兄弟!』で描かれる新しい徳川家康像
NHK大河ドラマ『豊臣兄弟!』で松下洸平が演じる徳川家康の予想を超えた腹黒さ、見たこともない新しいタイプのタヌキおやじっぷりがSNSで話題を呼んでいる。
家康の初登場は第3回「決戦前夜」。今川義元の命を受け、大高城への兵糧入れの役目を果たすと「思ったほど敵の手応えがなく、うまくことが運びすぎているように思いましてな」と、妙に落ち着き払ったクールな表情を見せていた。
そして翌週、第4回「桶狭間!」では、今川軍がまさかの敗北。撤退を余儀なくされる緊急事態にもかかわらず、家康はなぜか一人で食事をしていた。石川数正(迫田孝也)に「殿、お急ぎくだされ」「食べるのをおやめくだされ!」と切迫した表情で急かされても、慌てるどころか「我々が必死に守った兵糧じゃ。すべて信長に奪われたのでは癪ではないか」「少しでも減らしてやるのよ」と動じない。あくまでも自分のペースを貫く、豪胆で不敵な態度を貫く家康だった。
爽やかなイメージを覆す、“腹黒タヌキ”な松下家康の誕生
真っ白なシャツが似合う爽やかなイメージが強い松下洸平だからこそ、本作の家康のふてぶてしさ、腹黒さ、二面性がより際立ち、場面を面白くする。
例えば、第5回「嘘から出た実」で藤吉郎(池松壮亮)に初めて話しかけられたシーン。藤吉郎が目をキラキラと輝かせながら「どうすれば松平様のように偉くなれますでしょうか」と問いかけた。すると家康は「大事なのはここじゃ」と胸(ハート)を示し、「熱意が人を動かし、勝敗を決する」と告げた。
その言葉に大感激して、小一郎(仲野太賀)と感動を共有する藤吉郎だったが、後から家康は数正に「すべて逆のことを言うてやったわ」「織田の下侍になんでわしの考えを教えねばならぬ」と笑っていたのである。
このように、藤吉郎が思わず憧れ、理想とするような真っ白な貴公子から腹黒タヌキへのスイッチの入り方が自然で、そのギャップが面白くてクセになる。家康という人はこんなふうに腹の底が見えない人物だったのかも知れない……と思わせる、松下の説得力のある演技も冴え渡っている。
過去の大河ドラマで描かれてきた“気弱な家康”たちとの対比
大河ドラマに登場する家康というと、やはり『どうする家康』(2023年)で主演・松本潤が演じた、悩み多き人間味あふれる家康が記憶に新しい。人質としての暮らしや戦に巻き込まれながらも、気弱なプリンスが信頼できる家臣団に囲まれ成長し、天下人となる器を形成していく物語だった。
松本潤の徳川家康は大河ドラマ史に刻まれた 『どうする家康』すべての思いが繋がる最終回
NHK大河ドラマ『どうする家康』最終回「神の君へ」。豊臣との決戦に踏み切った徳川家康(松本潤)は自ら前線へ立つ。乱世の生き残りを…気弱な家康といえば、『真田丸』(2016年)で内野聖陽が演じた家康も、弱さや迷いをさらけ出し、ときに威厳を見せつつも臆病で慎重すぎる性格が強調されていた。天下などという大きなところは狙わず、慎重に自分の一族の安寧を真剣に考えている情けなさの漂う家康は、SNSでも人気の高さを誇る。
また、『麒麟がくる』(2020年)の風間俊介が演じた家康は、タヌキおやじになる前の若き日の松平元康の頃。人質生活という抑圧された環境の中で、明智光秀(長谷川博己)と出会い、交流していく姿が描かれた。理不尽な運命に耐えながらも未来に希望を感じさせる好青年・元康。生き抜くために感情を抑え、忍耐強さを培ってきた元康の内面の静かな葛藤を、演技派の風間俊介が丁寧に演じていた。
阿部サダヲ、これまでの徳川家康像を覆すインパクト 『おんな城主 直虎』最終回に寄せて
12月17日の放送でNHK大河ドラマ『おんな城主 直虎』が最終回を迎えた。遠江国井伊谷の領主として乱世を生きた女性・井伊直虎を柴…そして、『おんな城主 直虎』(2017年)で13歳の竹千代と呼ばれた少年時代から40歳まで、長きにわたって家康を演じたのが阿部サダヲだ。人質時代には一人で囲碁をしながら考えごとをしていたり、スズメを愛でて話しかける場面などかわいらしく、斬新な家康像を創り上げた。迷い、悩みながら生き延びる道を模索し、家族を愛するがゆえに苦悩する家康という人物の数奇な人生を、阿部サダヲが見事に演じきった。
こうしてここ最近の大河ドラマを振り返ると、家康は威厳たっぷりに描かれているわけではなく、人質時代に苦労していたため我慢強く、気弱な部分が強調されてきた傾向にある。だからこそ、織田の下侍だった小一郎や藤吉郎はもちろん、織田信長さえも小馬鹿にしている不遜な今作の家康には意外性があり、SNSの反響も大きいのだ。