ヒロインを導く両親の役割とは? 『風、薫る』りんの原点を形作った北村一輝&水野美紀

 物語から退場したといっても、その存在が消え去ることはない。結太郎との交流と彼の教えは、その後ののぶの生きる指針となった。それは今作『風、薫る』においても同じだ。激動の時代において信右衛門は、りんたちに「自分で考えること」を教えてきた。りんはまだ若いが、とても強い女性である。

 第7話では母・美津の回想シーンの中で、愛する父をひとりで見送ったりんが、孤独に耐えていたことが分かった。彼女は泣かなかった。父との関係を描く短い展開の中で、りんがどのような人間なのかまで描き出す脚本の妙にうなる。りんを演じる見上が信右衛門の教えをどう体現していくのかが、このドラマの主軸のひとつになっていくのだろう。

 さて、信右衛門への言及ばかりになってしまったが、これから注目なのはやはり母・美津の存在だ。北村の演技は信右衛門の穏やかさを示し続けたが、水野の演技はずっと美津のたくましさを表現している。りんはいま新しい人生を歩んでいこうとしているところだが、これを促したのは美津である。おっとりした性格のりんとは対照的な彼女の存在が、作品におけるアイデンティティがまだ安定していない段階のヒロインの、精神的な支えになっていくはず。演じる水野が登場するたびに、私たち視聴者は安心することになっていくのではないだろうか。

 多くの朝ドラがそうであるように、母親というのはヒロインにとって何にも代え難い特別な存在だ。『ばけばけ』のフミ(池脇千鶴)も、『あんぱん』の羽多子も、『おむすび』(2024年度後期)の愛子(麻生久美子)も、『虎に翼』(2024年度前期)のはる(石田ゆり子)もそうだった。誰よりも頼れる存在であり、ヒロインが人生経験を積んでゆく中で、ときには友人のようにもなる。『風、薫る』の“美津=水野美紀”もまた、そんな作品の支柱的な存在になっていくのだろう。

■放送情報
2026年度前期 NHK連続テレビ小説『風、薫る』
NHK総合にて、毎週月曜から金曜8:00~8:15放送/毎週月曜~金曜12:45~13:00再放送
NHK BSプレミアムにて、毎週月曜から金曜7:30~7:45放送/毎週土曜8:15~9:30再放送
NHK BS4Kにて、毎週月曜から金曜7:30~7:45放送/毎週土曜10:15~11:30再放送
出演:見上愛、上坂樹里
脚本:吉澤智子
原案:田中ひかる『明治のナイチンゲール 大関和物語』
制作統括:松園武大
プロデューサー:川口俊介
演出:佐々木善春、橋本万葉ほか
写真提供=NHK

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