多部未華子はなぜ“クセのある役”が似合うのか 『風、薫る』で挑む一味違う歴史的偉人
オールマイティともいえる多部の演技だが、一番似合うのは、一見真面目でノーマルそうなのに、どこか歪でクセのある役ではないだろうか。特に近年の出演作は、その傾向が顕著だ。2019年のNHKドラマ10『これは経費で落ちません!』では、堅物の経理部社員・森若沙名子を演じた。マイペースで融通がきかず、コミュニケーション能力も低い森若が、経費精算を通して社内の謎や悪事を解明してしまうというストーリーで、地味だが数字に強く、曲がったことが許せないヒロインがはまっていた。
多部未華子は“負い目”を感じる主婦たちの救世主だ 元主婦誌編集者が見た『対岸の家事』
多部未華子が専業主婦を、江口のり子がワーキングマザーを演じているドラマ『対岸の家事~これが、私の生きる道!~』(TBS系)。すで…大ヒットとなった、2020年『私の家政婦ナギサさん』(TBS系)では、仕事はできるのに家事が一切できないというバリキャリMR(医薬情報担当者)・相原メイを、ユーモアとリアリティを持って演じた。ここではやはり多部のコメディセンスが光っていた。ゴミ屋敷のごとく散らかった部屋を見事なまでにナギサさん(大森南朋)に片づけられ、ついほくそ笑む表情などには、思わずくすりとさせられた。さらに、2025年『対岸の家事〜これが、私の生きる道!〜』(TBS系)では、独自の正義感を持った専業主婦・村上詩穂を演じた。「絶滅危惧種だ」と言われる専業主婦を、自分で選んだ道だと突き進む姿は、時にたくましく、時に切なく、時に滑稽でもあって、複雑な役柄を繊細かつ大胆に表現していた。
どのドラマでも、潔癖すぎたり、こだわりが強すぎたり、やや偏執的な傾向はありながら、繊細な感性と独自の正義感を持っている役柄だったと言えるだろう。そんな一癖あるキャラクターを、多部は憎めない人物として表現することに卓越している。それは、多部のコメディセンスと、生来の真面目さの相乗効果なのかもしれない。多部が真面目に困って眉間にしわを寄せた表情には、思わず笑ってしまうようなところがある。
今回の役柄は、女性の社会進出を推し進めた偉人だ。ともすれば、偉大さばかりが目立ってしまうかもしれない。けれど、これまでの多部の演技を見れば、そんな心配は杞憂だろう。歴史上の人物を、どんなふうにチャーミングに演じてくれるのか、帰ってきた朝ドラでの演技を早く確かめたい。
※1. https://yae-sakura.jp/aizuhaku/column13
※2. https://realsound.jp/movie/2025/10/post-2199846.html
■放送情報
2026年度前期 NHK連続テレビ小説『風、薫る』
NHK総合にて、毎週月曜から金曜8:00~8:15放送/毎週月曜~金曜12:45~13:00再放送
NHK BSプレミアムにて、毎週月曜から金曜7:30~7:45放送/毎週土曜8:15~9:30再放送
NHK BS4Kにて、毎週月曜から金曜7:30~7:45放送/毎週土曜10:15~11:30再放送
出演:見上愛、上坂樹里
脚本:吉澤智子
原案:田中ひかる『明治のナイチンゲール 大関和物語』
制作統括:松園武大
プロデューサー:川口俊介
演出:佐々木善春、橋本万葉ほか
写真提供=NHK