『ピーキー・ブラインダーズ』完結編で強調されたメッセージ 物語を締め括る“不滅”の精神

 「ピーキー・ブラインダーズ」。剃刀をハンチング帽に縫い付けていたことが、その名の由来だという伝説を持つ、イギリスのバーミンガムに実在していたギャングである。1890年代頃に街で大きな影響力を持った彼らをモデルに、その衰退の歴史を、血と抗争、政治的な思惑とともに描いたイギリスのドラマシリーズが、全6シーズンの『ピーキー・ブラインダーズ』だった。

 この度、そんなシリーズに加えられる、さらなる「完結編」としてNetflixからリリースされたのが、映画『ピーキー・ブラインダーズ:不滅の男』なのだ。ここでは、本作の内容を基に、そこに託されたメッセージと、ドラマシリーズを完結させるテーマについて考察してみたい。

 舞台となるのは、最終シーズンで描かれた時代から4年後、1940年のバーミンガムである。『ピーキー・ブラインダーズ』は、第一次世界大戦直後の混乱期を起点に開始されたドラマシリーズだったが、第二次大戦が始まろうとする時代に、この長大な物語は幕を下ろすのだ。

 これまでシーズンを通し、サム・ニール、トミー・フラナガン、トム・ハーディ、エイドリアン・ブロディ、エイダン・ギレン、アニャ・テイラー=ジョイ、サム・クラフリンなどの有名俳優が登場してきたキャストの豪華さは、今回の映画版でも健在。もともとの主演俳優キリアン・マーフィー、続投のスティーヴン・グレアムに加え、新たにレベッカ・ファーガソン、ティム・ロス、バリー・コーガンをキャストに迎えた。

 そして、ドラマシリーズのクリエイターであるスティーヴン・ナイトが脚本、ドラマシリーズの一部を手がけたトム・ハーパーが監督を務めたことで、本作のオフィシャルかつオリジナル性を感じさせる座組が完成している。

 とはいえ、本作はこれまでの全ての物語に終止符を打つ内容であることから、映画単体として力強い内容になっているとは言い難いかもしれない。なぜなら、この完結編で全く新しいテーマを打ち出して、新たな方向性を提示してしまえば、これまでのドラマシリーズは何だったのかということにもなりかねないからだ。ゆえに、この種の映画は難しい舵取りが迫られる。蛇足であってもならないし、語りすぎても反発を生むという制約。ここをどう判断するかは、観客によって異なるだろう。

 本作でまず存在感を示すのは、トミー・シェルビー(キリアン・マーフィー)の息子であるデュークだ。映画版で新たにこの役を、バリー・コーガンが演じている。デュークは、姿を消したトミーに代わってピーキー・ブラインダーズを率いるのだが、その振る舞いは残忍で、街の人々の信頼を失ってゆく。

 そんな危険で破滅的なデュークに目をつけたのが、「イギリス・ファシスト連合」のジョン・ベケットだった。ドラマシリーズの終盤では、このイギリス・ファシスト連合を率いた実在の政治家オズワルド・モズレーを、サム・クラフリンが演じていたが、この党内にいた、こちらも実在の人物ジョン・ベケットを、ティム・ロスが演じている。

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