ディズニーGMが明かす『ズートピア2』大ヒットの舞台裏 “失敗できない”2026年の展望も
2026年は話題作ラッシュで気の抜けない1年に
――現在の洋画市場をどのように考えていらっしゃいますか?
佐藤:じつは昨年、日本公開された洋画の約半分がディズニー作品でした。ある意味、洋画興行の灯火を守るような立場になっているので、大きな責任を感じています。今の洋画市場は、昔のように興収10億~20億円規模の作品がたくさんあり、それらが市場を支える構造ではありません。昔ならばそれくらいの規模だったはずの作品が、その半分くらいの数字で終わることも珍しくないんです。昨年、サーチライト・ピクチャーズからは『名もなき者/A COMPLETE UNKNOWN』と『リアル・ペイン~心の旅~』を公開しました。興行収入だけで測れない、作家性の高い作品を配給できたことは映画会社としての大きな誇り。洋画興行を支えるうえでも大きな意味があると考えています。
――日本の人気アニメーション映画や、邦画ヒット作との関係をどのように見ていますか?
佐藤:アニメーション作品とは競合しますが、必ずしも脅威とは感じていません。『名探偵コナン』のように、観客がたくさん入っているスクリーンでディズニー作品の予告編を上映できることは、それだけで大きなアピールになります。逆に、我々の話題作で予告編を上映することがプロモーションになることもあるはずです。今年の夏は話題作が多いですが、せっかくの夏休みですから、お互いが盛り上がることが大切。業界の命題は映画人口を増やすことなので、それぞれが自社の作品を最大化しながら、うまく相乗効果が生まれ、映画業界全体がうまく回っていくと一番いいですよね。
――今年のピクサーは、『私がビーバーになる時』というオリジナル作品に続き、原点であるシリーズの最新作『トイ・ストーリー5』が7月3日に日本公開されます。ディズニーのアニメーション作品にとって、今年はどんな1年になりそうですか。
佐藤:今年は『私がビーバーになる時』と『トイ・ストーリー5』のほか、冬にディズニー・アニメーションの新作も控えているので、アニメーションが年間3本あります。『私がビーバーになる時』でホップ、『トイ・ストーリー5』でステップ、冬の新作でジャンプ、というイメージで2027年に繋げていく。新しいIPを育てるという使命も含め、大切な1年になります。『トイ・ストーリー5』は大作なので、前作『トイ・ストーリー4』(2019年)の興行収入100億円に匹敵する成績が目標。夏興行のトップバッターとして責任重大ですが、どの世代、どの国の人でも共感できる普遍的な作品になるのではないかと思いますし、良い形でお届けできるはずです。7年ぶりの続編ですが、『ズートピア』にも10年のギャップがあったので、ブランクはそれほど気にしていません。
――ほかにも、春の『プラダを着た悪魔2』『スター・ウォーズ/マンダロリアン・アンド・グローグー』から、夏の実写版『モアナと伝説の海』、年末の『アベンジャーズ/ドゥームズデイ』と話題作が続きます。1年間のラインナップをどう見ていますか?
佐藤:本当に話題作ラッシュで、気の抜けない1年です。『プラダを着た悪魔』は公開から20年経っても配信やDVDで観られ続けている稀有な作品で、続編には幅広い世代が期待を寄せてくださっています。また、『マンダロリアン・アンド・グローグー』はディズニープラスのドラマシリーズを長編映画へ展開する初の試み。ファンのみなさんはもちろん、新たな観客にも届けたい作品です。『モアナと伝説の海』も強いファンベースを持つ大切なフランチャイズなので、「実写になった!」という体験を大スクリーンで味わっていただきたいと思います。大トリの『アベンジャーズ/ドゥームズデイ』も、公開に向けた空気づくりが世界的に始まっています。キャストの椅子をずらりと並べた映像がSNSでバズりましたし、『アバター:ファイヤー・アンド・アッシュ』の上映時にサプライズで予告編を4パターン出しました。9月には『アベンジャーズ/エンドゲーム』(2019年)を初めて劇場で再上映するので、これもプロモーションの重要なポイントになります。
――今年の話題作ラッシュのなか、劇場映画とディズニープラスの関係はどう変わっていくのでしょうか?
佐藤:ディズニーにとってビジネスの源泉は「映画」です。『ズートピア2』では、興行収入の最大化がディズニープラスの加入者増にはっきりとつながりました。映画のヒットが加入者の注目のきっかけをつくり、ディズニープラスの加入者が増えたり、サービス上でのエンゲージメントが増えたりする。劇場映画とディズニープラスは密接につながっているんです。映画ビジネスは一本一本の作品をきちんと届けることの繰り返しなので、私たちのミッションに大きな変化はありません。ディズニーは劇場公開から配信までの期間を長く取っており、そういう意味でも映画を大切にしていると思います。劇場興行の様子を見ながら配信時期を検討する、劇場では難しかった作品を適切にバトンタッチするなど、配信のチームとは密にコミュニケーションを取りながら方針を決定しています。「劇場と配信は競合するもの」という見方もあるかと思いますが、ディズニーはそうではなく、同じエコシステムのなかでお互いのビジネスを支え合う関係です。配信ビジネスが成長することは、劇場映画にとってもプラスになりますから。